2nd ACTION 新たなる旅の大地(空洞惑星の街)
飛行を続ける事数時間、ようやく目的地とした街を見つけた一行は、町の郊外である荒野に船を着陸させた。
船のハッチが開くと同時に、真っ先に船から大地に降り立ったのは言うまでも無くロックである。
その後ろを何人かの乗組員がゆっくりと降りてくる。その中にはリカルと、彼女に背中を押されてタラップを降りてくるリープの姿もあった。
リカルは船が着陸する寸前までは気落ちしていたが、何もしなければ結局何もできないと考えてとりあえず身体だけでも動かそうとして、着陸した直後にはとにかく明るく振る舞いだした。
一方リープの方はと言うと、全く立ち直り気配も無く、あれからもずっとランページの前でへたり込んでいた。
初めは気にしていた作業員たちは、途中辺りから気にする事も無くなったいたが、さすがに到着間際までずっと同じ姿には驚いていたので、相談を受けたリカルが様子を見に行き、そのまま半ば強引に外に連れ出した。ともかくこうして彼らは久しぶりに惑星の上の人達となった。
今外に出てきたのは、仕事を探すためにギルドを訪れようしたロックとリカル、そして資材や食糧の買い出しに出る乗組員が数名と、その荷物持ちとして同行するリープである。
コーラルは今回は船で留守番をしている。その彼にリカルは紫の硬貨を一枚持たせていた。
これは前にリカル達がコーラルの祖父からもらった硬貨の次に高い物で、リカルが停泊している船について苦情が出た時コーラルに説得をするよう頼んだ際に相手にこれを握らせて、停泊料で納得してもらうための物である。
もっとも所有者のいるかどうか分からない様な荒野に泊めた為、相手にこれを渡すのはあくまで最後の手段としてだと言う事もきちんと言い含めた上で置いていったものだが。
とにかく外に出てきた数名は、町から距離のある場所に船を泊めた事もあるのでそれぞれRBで行動する事になった。
買い出しを行うメンバーはバンタイプのビーグルに乗り込み、ロックは自分のチェイサーバイクにリカルを乗せ、それぞれ町にむかって行った。
町の入り口でみんなと別れたロック達は、町の案内所でこの町の地図を確認して、ギルドオフィスにむかって移動を開始した。
キリカシティと呼ぶこの町は先史文明時代の高層ビルを町の中心の市庁舎としてその一帯を高所得者用の町、そこから外に広がるごとに中所得者、低所得者の住宅地域となっているドーナツ状の町だった。地図によるとオフィスは低所得者と中所得者の地域の間あたりにあるとの事だった。
移動を始めて数分、大通りに面した所にあったため思ったよりも簡単に見つかったオフィスにたどり着くと、二人はそろって中に入っていった。
それなりの照明で明るさが保たれている建物の中だったが、少し狭い部屋の大きさと部屋の中の調度品のさびれ具合を見ると、どうしても暗い店というイメージがまず頭の中をよぎってしまう。
「何だか寂れてて、流行って無いわねこのオフィス。まあ、流行っていてもそれがどうしたって話なんだけど」
入り口をくぐって部屋をぐるりと見渡したリカルの、これが初めの言葉だった。その言葉に苦笑しながら、ロックはカウンターに座っている職員に挨拶をすると、早速仕事を探していると用件を切り出した。
「今紹介できるのはこの仕事だけだね」
そういってオフィスの職員が紹介してきた仕事を見て、ロックはとても驚いた。
紹介された仕事は三つ、しかもどれも成功報酬が少なく、船の修理どころか物資の買い付けも出来ない様な金額だった。
「ちょっとちょっと、ホントにこれだけしか仕事ないの?ここのギルドに依頼を持ちこむ人は誰もいないってのかよ」
さすがに納得の出来ないロックは職員にくってかかるが、のらりくらりとこちらの会話をかわしてきて話にならない。
ロックが熱くなってきた所で、それまで二人から離れていたリカルが依頼書の一枚を持ってカウンターの所にやって来た。
「これ、予約済みになっているけど、ひょっとして他の依頼も全部こんな感じで表に回ってこないの?」
「地元の冒険者たちへの依頼の取り置きしてるのかよ!」
冒険者の大半はロック達の様に様々な土地や惑星を渡り歩いているフリーのチームが多いが、傭兵達の様に住んでいる町のオフィスに所属して仕事を請け負っている冒険者達も存在する。
しかしどの様な立場の冒険者でも仕事は平等に回ってくるものであるので、ここの職員がしている事は明らかに不正である。
冒険者二人に睨みつけられ、ごまかしがきかなくなった事を悟った職員は、二人を手招きして自分の近くに招くと声を落として話を始めた。
それによると、この町での依頼数はロックが指摘してきたように確かに多くなく、しかもその報酬なども少ない。中には現物支給といった、ギルドの規定ギリギリな報酬で頼まれる仕事もあるらしい。
この町に所属している一番大きな冒険者チームは、そういう見方によってはボランティアに毛の生えた様な仕事を引き受けるので、それらの仕事は彼ら用に取っているのだという。
「それじゃ、ここに出してもらった分が一番いい仕事だって言うのか?」
職員に出された仕事の依頼書を手に取り、ピラピラと軽く振りながらロックが訊ねると、オフィスの職員はまた首をすくめて言葉を続ける。
「いや、確かに割りのいい金になる仕事はここに出した分だけど、一番稼ぎの大きな仕事も抜いているんだ。チームを運営するためにはまとまった金も必要だからね」
「こっちも船の修理のためにまとまった金が必要だから、そういう仕事を探しているのよ。何とか回してもらえないかしら?」
カウンターに手をついて、身を乗り出しながらリカルが職人に問いかける。
職員は少し何かを考える素振りを見せる。その行動にロックとリカルはお互いの顔を見せあうが、その時おもむろに口を開いた。
「そこまで言うなら仕方が無い。彼らに直接話をしてみて事だね。彼らの了解を持ってくれば仕事を紹介するよ」
「ホントかそれ!」
「やったー!何でも頼み続けてみるものね。それでそのチームの名前は何て言うの?」
喜びの声を上げながら興奮している二人を落ち着かせようとなだめながら、オフィス職員はリカルの質問に答えるために口を開くと一言、ゆっくりとそのチームの名前を発音した。