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F/A フリーダム/アドベンチャー  作者: 流都
第四話 頂点者達
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1st ACTION 宇宙を駆ける冒険者達[そらをかけるこどもたち](開戦)

「副長、パペットの戦闘用調整終了しました。武装のセットアップをお願いいたします」

『ロック、宇宙空間での機体運動データの再インストールは出来た。テスト無しだからなるべく無茶はするなよ』

「それはこれからバトる相手に言ってくれ。武装は迎撃用の3型武装で頼む」


 ロック達のいる格納庫は、今まさに戦場の真っただ中と表現してもおかしく無いほどの動きを見せていた。

 大型機体、それもRWの扱いに慣れていない者たちが行う修理は時間がかかる。出撃が出来るようになっただけでもがんばった方だが、そこからすぐに戦いが始まるとなるとその作業量は混乱しそうなほどになる。

 それでも全員がリタイヤする事無く作業をする事が出来たのは、戦いに生き残ろうとする本能と、先程のリカルとロックの声のおかげであった。


「3型武装、サブマシンガン、エネルギーソード、誘導性マイクロミサイル、装備完了しました」

『サイバーリンク完了、機体とパイロットの神経接続レベルは5で固定する』

「こちら格納庫。カタパルト使用準備完了しました。発進オペレートをブリッジに依頼します」

『こちらブリッジ了解。各RUはカタパルトへついて下さい』


 案内に従いロックはランページを歩かせ、カタパルトの上に機体を乗せた。

 シャインウェーブ号には船体左右に水平式のカタパルトがあるが、その他に打ち上げ式のカタパルトがある。今日はこれが使用できるかチェックを行うため実際にランページを打ち上げるテストを予定していたが、今回このテストも兼ねるとの事でカタパルトでの打ち上げをロックが指示していた。

 発進シーケンスが進んでいき、ロックもブリッジの指示に従ってランページのコンピュータでカタパルトへの遠隔操作を行っていく。カタパルトと格納庫への隔壁を閉めると、ブリッジからロックに声が届く。


『発進準備完了、5番カタパルト発進させます』

「AllRight!エクストリーマー・ロック!エントリーRU、バトリングパペット、ランページキャット!ライド・オン!」


 空気が抜けカタパルト内が真空状態になると、上部のハッチが次々と開いて行き足元のリフトが勢いよく上昇を始める。リフトの上に立つランページはロックのイメージに合わせて衝撃に備える体勢を取っている。

 歯を食いしばって身体にかかる衝撃に耐えるロック。ほんの短い、しかし長く感じたカタパルト射出を終了すると、ロックは息を吸い込んでハッキリとした声を放つ。


「Running To The Chaser.Wind And ShootingStar!!」


 カタパルトから撃ち出されて宇宙空間に飛び出したランページ。機体の安全装置解除暗号を音声入力したロックは操縦桿に付いているショートカットを操作して右手にエネルギーソードを取る。

 刃を引き抜くと同時に鳴り響く警報。驚いて前を見ると、カタパルトがあると思っていなかった戦闘機が高速でロックめがけて飛んでくる。

 思わず驚愕の叫び声を上げると、ロックはランページの右手を動かし手にした剣で戦闘機の胴体と翼の境目辺りを斜めになぎ払った。


 切られた戦闘機は切断部分から左右に分かれ、ランページの横を抜けて飛んでいった。

 行動不能になった機体からはパイロットがRSを使って脱出を行い、その直後にロックに攻撃された戦闘機は爆発、宇宙の星の一つになってすぐ消えて行った。


「とっさにやっちまったけど生きてっかな、あの機体のパイロット」

『脱出は確認出来たから大丈夫みたいだ』

「そりゃよかった。流石に不可抗力で殺したら後味悪すぎるからな」


 短い会話を交わしながらもロックは次の行動をイメージしながら操縦桿を動かす。機械と人の意識を繋げるサイバーリンクシステムがロックのイメージした動き方を読みこむと、背中のメインブースターとラウンドバーニアを吹かせて実行、独特の機動を取りながら前進し一番近くの戦闘機めがけて飛びかかっていく。


 船の制圧のため至近距離でミサイルを撃とうとしていた戦闘機がロックの存在に気付くと、彼はすばやく方向を変えて船から離れて行った。

 目の前で突然目標に逃げられたロックは、レーダーで相手の位置を確認するとリープに追うと指示を出し、操縦桿の横にある引き出し型コンソールのキーを二、三弾いてから操縦桿を引きフットペダルを踏み込む。


 その瞬間ランページの腕や脚の装甲板の一部がフレーム内に収納され、内蔵されていた反射板(リフレクター)が現れる。リフレクターからは淡い黄緑色の粒子の膜が噴出され、一瞬で機体を包み込む。

 その粒子を身に纏いながら、ロックは大きく前転する様な感じに勢いをつけてランページを頭から前に突っ込んで機体の向きを変えた。

 無重力空間で半回転以上してから目標の機体を正面に捉えると操縦桿のスロットを開きエンジンの出力を上げる。すると粒子の膜が機体にかかる負荷を全て中和させ、慣性の無くなったランページは普通の機械ではありえない勢いで方向転換を行った。


 この粒子は粒子搭乗機構、通称PRSと言われるLost以前の先史文明が生み出した、既存の航空技術を変える画期的なシステムである。

 空間中の素粒子を取り込み加速圧縮をかけて特殊なエネルギーを帯びさせ、マシンの放出口やリフレクターからそれを外部に噴射させると空間の粒子と反応を起こし粒子の上に乗る事が出来る。

 それはまるでサーフィンの様で、熟練者がこれを扱うと粒子の波の上を縦横無尽に駆け巡る事が出来る。この空間を自在に動ける能力は開発された後の乗り物全てのあり方を変えて行き、文明が無くなった今の時代でも持たざる力の一つとして活用されている。


 クイックターンしたランページはすぐに戦闘機を追いかける。

 戦闘機はパペット以上の推進力を持っているため加速と最大速度はパペットを上回るが、通常の推進機構の他にPRSを装備しているランページは戦闘機に匹敵するほどの速度を出す事が出来る。

 そう言う訳でアドバンテージの無くなった戦闘機はロックにとってただの的となり下がってしまい、少しの攻撃を避けた後エンジン部にマシンガンの弾がヒット、火を吹き始めた機体を海賊が捨てて脱出すると、その戦闘機も火の玉になって虚空に呑みこまれる。


「こいつで二機目。他の奴はどこ行った?」

『一機船の真下に潜り込んでるみたいだ。ここからじゃ距離があるぞ』


 リープの声を聞いて船の方に機体を向けると、ちょうど斜め上から船を見下ろす形となった。そしてリープが言っていたように船の下側の方では、互いに撃ちあう光条とそれによって巻き起こる小さな爆発による光がきらめいていた。


『どうする、すぐに戻っても時間がかかるぞ』

「リンクレベルアップ。レーダー、センサーを前方に集中して情報を集めろ」


 リープの言葉に淀む事無く即座に命令を下すと、リープは少し間をおいてから了解と言い指示を実行した。

 リンクのレベルを上げるとマシンが取得した情報がパイロットに伝わる速度や量が大きくなる。情報を直接感覚として取り入れる事が出来ればパイロットの反応速度は飛躍的に向上するが、そうやって得た情報を人間の脳が処理するには、その情報量はあまりにも多すぎる。

 マシンの情報をダイレクトに頭の中に全て入れた事で脳細胞や神経に甚大な負荷が掛ったため、そのまま命を落としてしまったパイロットもたくさん存在する。


 そのためロックがこのシステムをジャンクオーシャンから発見した時、情報処理を分担して行う事で負担を減らす事を考えて高性能のコンピュータを見つけるために躍起になっていた時期があった。

 そのコンピュータは今、自分のコックピットシートに座っている少年に強い負担がかからない様に調節しながらリンクレベルを上げて行く。


 リンクレベルを上げるとリープは次にレーダーを初めとしたセンサーの探査波を絞って前方、シャインウェーブ号に向けて放射する。

 各種センサーが船と周囲の状況を確認すると、それらの情報はロックの五感を通じてイメージが頭の中に入り、今自分がその相手を見てきたかのように敵機の動きを把握していた。

 船の真下、砲門が向かず、機銃も少ない守りの弱い所、そこに潜り込んだ戦闘機が一機、シャインウェーブ号の船体下部を攻撃している。


「みーっけ。好きにやってくれちゃって、あの野郎。目に物見せてやる」


 そう言うとロックは正面のモニター越しの相手を見やり、意識を集中させる。

 ランページの各部に装備されている十六基のラウンドバーニア、良く見ればそのうちの何基かがランページから外れていて外見のバランスが悪く見える。これは部品を装備し忘れた訳ではなく、戦闘中にロックが機体から切り離して船の周りに浮かべたためである。

 ロックの意識を受けると、切り離していた四基のバーニアに火が入り機敏に動きだす。動きながら敵戦闘機の姿を補足すると四基はそれぞれ陣形を組み出し、次の瞬間その小さな身体から高出力のレーザーを戦闘機めがけて発射した。


 突然の青い線条に機体を灼かれ、戦闘機は機体の数か所に穴が開いた。それでも機関部への直撃を免れたため爆発はしなかったが、続けての攻撃を受けたため敵はシャインウェーブ号から離脱を開始した。


 戦闘機を撃ち抜いたこれがロックが駆るランページキャットの最大の特徴、機体の機動を補佐するラウンドバーニアと、パイロットが行う遠隔操作によって離れた場所や相手の死角から攻撃を行う事が出来るスフィアビットの機能を併せ持った自律武装(サテライト)、バーニア・ビットである。


 ビットの攻撃に追いたてられてシャインウェーブ号から離れる戦闘機。それを待っていたかのように上からすさまじい速度で迫りくる二発のミサイル。PRSの波と機体の推力で一気に接近してきたロックによって撃ち出されたものであった。

 勝ち目が無いと判断したのか一目散に逃げる戦闘機とそれを追うミサイル。十秒の後何かが爆発した様な光がレーダーに映り、それから三十秒ほど待ってみたが、逃げた戦闘機が再び戻ってくる事は無かった。


「三機目、これで後一機」

『なんだけどレーダーにまるで反応なし。どこ行ったんだ?』


 攻撃をしてきた機影は四機。しかしロック達が戦っていたのは三機で、残りの一機は戦っている最中もその姿を見せる事はしなかった。

 ロックがこの状況に嫌な予感を感じていた時、シャインウェーブ号から通信が入る。

 内容は敵機の解析が出来たというものだった。残りの一機についてロックが質問をすると通信をしてきたブリッジクルーは対艦攻撃機だと答えてきた。


『索敵範囲を広げろ、すぐにだ。エネルギーの増大反応をキャッチしろ!』


 それを聞いた瞬間、ブリッジにいたリカルと通信を聞いていたロックは同時に命令を下していた。

 ブリッジクルーはすぐにレーダーの索敵レンジを広げ、ロックはPRSを展開してすぐに動けるように構えを取った。

 ややあってレーダーがエネルギーの反応をキャッチすると、クルーが報告を開始した。


「天頂方向距離250、エネルギー質量大の物体が高速で接近してきます!」

「エネルギーパターン解析完了!対艦用、テラクラスウェポン……!」

「プラズマストームでしょ!PRSの粒子膜を天頂に散布、同時にマニュアル回避運動、直撃だけ避ければいいから!」

『上だってよロック!』

「何とか出来るか!?」


 敵の動きに気付いたシャインウェーブ号が行動を開始する。しかしすでに準備の出来ていた敵戦闘機は彼らに向かって無慈悲な嵐の一撃を撃ち出すべく、トリガーに指をかけていた。

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