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F/A フリーダム/アドベンチャー  作者: 流都
第三話 ここから飛び出そう!!
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14th ACTION PLANET ESCAPE (勇気ある逃避行)

『ヒヤヒヤさせてくれちゃって、でもそれがロックらしい所よね。コーラルさん、あなたの作戦で行きましょう。アタシの船はまかせますからね!』


 ロック達との通信を遮断すると、シャインウェーブ号のブリッジで二人の事を待っていたコーラルは、自分の所定位置である操舵シートのコンソールパネルを操作して、船内全体に放送を流した。


「ブリッジより各乗組員へ、こちらは操舵長のコーラルです。只今より本船は宇宙へ上がるため、宇宙港の打ち上げカタパルトを使用しての緊急離陸を行います。各員は所定の個所にて離陸の最終確認を行い、待機をお願いいたします」


 コーラルがリカル達と打ち合わせていたのはこの事だった。

 リュウ達が船を狙って宇宙港を攻撃するなら、攻撃対象のシャインウェーブ号を港の外に出してしまおうという、一見すると無謀すぎる提案だった。

 伝達内容を終えるとコーラルは艦内マイクをオフにしてシートに戻す。そのタイミングを待ってブリッジクルーの一人がコーラルに質問のため声をかけてきた。


「若、いえ操舵長。いくらオーナー達から許可を得たからと言っても本当に実行するのですか?」

「この宇宙港がどうして襲われていると思う?表の騒ぎと関わりがあるとすればこの船、つまり私たちがここにいるから襲われている事になる。危険だが私たちがここから外に出れば少なくとも町が襲われる理由が無くなる。この町の自警団や冒険者達も動いているはずだから、外から攻撃してくる連中に一瞬でも隙を作れれば、彼らの手助けになるかもしれない。状況を変えられればオーナー達の選択肢も増やす事が出来る」


「でも上手く逃げれたとして相手が町への攻撃を結局止めなかった時はどうするんですか。オーナー達がますます不利になってしまいます」

「そうなる可能性はオーナー達も知っている。知っているうえで私の提案に乗ってくれた。最悪は二人に任せる、これは二人と打ち合わせて納得もしてもらっている、と言うよりもお二人は初めからそうするつもりだったよ」


 クルーが更に問いつめようと口を開きかけたが、コーラルはそのクルーに一瞥をくれるとすぐに他のクルー達に指示をし始めた。

 その時の目に絶対指示を変えないと言った、ゆるぎないある種の意思表示を見てとったクルーは、コンパネに向き直ると、他のクルー達と一緒に出航の準備を始めた。

 あらかたのクルーに指示を出し終えると、コーラルは外部との通信回線を開いて宇宙港の管制室を呼び出した。

 緊急事態に備えて通常の管制室は封鎖されているが、自警団の詰め所を併設している緊急用の特殊管制室はしっかりと機能しており、コーラルの回線はそちらの方に繋がった。

 そこの通信に出た管制官にコーラルは強制出航の許可を取りだした。


『出航させろって、そんな事無理に決まっているじゃないですか!』

「先程もお話しましたが、狙われているのは私たちの船です。ここにいるのは危険と判断しましたから被害が広がる前に町から脱出しようとしたのですが」

『打ち上げ準備に入れば当然攻撃が来る。ここの打ち上げカタパルトのバリアはあの攻撃全てに耐えられる訳じゃないし、カタパルトから射出された瞬間を狙われたら君達が危ない。リスクがありすぎますよ!』

「それは承知していますよ。でも外でこんなバカげた事をやらかした連中と戦っている仲間のためにも、私たちはここに留まっている訳にはいかないのです。お願いします、発進許可を!」


 しぶる管制官に対して何とか説得をしようと食い下がるコーラル。その様子を管制室の後ろからみていた、この町の自警団長であるトカゲの男がコーラルと談判している管制官を呼び止めると、マイクを取り上げ管制官に変わってコーラルと会話を始めた。


「おう、聞いておきたい事があるが、お前達が出て行った後も町が攻撃される様な事があった時は一体どうする」

「外で戦っているオーナーとチーフが町の防衛をすると言っています」

「それじゃ二人を捨ててその船だけで宇宙に出るのか」

「私はオーナーからこの船の事を任されました。つまりオーナー達二人は自分達が孤立する事もすでに覚悟して行動しています。私はそれに従います」


 自警団長の質問に、コーラルは全て正面から答える。モニター越しに二人がそれぞれ相手の顔を睨んでいると、口の端を緩めて笑みをこぼし、先に折れたのは自警団長だった。


「全く、君も大変な奴らの下に付いたもんだよな。町の事は自警団に任せて自分達はとっとと逃げるって選択肢もあったのに」

「それが彼らなんですよ」


 団長より更に笑顔を作りながら、「もちろん私もそうですよ」とコーラルが言葉を返すと、団長はゆっくり頷くと部屋にいた管制官達に指示を下した。


「あいつらの船を出してやれ。こっちも荷物が減るなら歓迎だ」


 団長の指示を管制官が復唱すると、オペレータールームの作業員はシャインウェーブ号をドックから発進させる準備を始めた。それに合わせてコーラル達も出航の最終確認を初め出した。

 ドックの停泊ポートの床が動き出すと、そこに留められていたシャインウェーブ号は打ち上げ用のカタパルトに向かって行く。

 船体がカタパルトのレーンに完全に固定された事が確認されると、管制室からの操作で船体を固定していたドッキングアームが解除されていく。

 こうして機体の凍結が解除された事が確認されると、宇宙港の作業員からシャインウェーブのブリッジに連絡が入る。


「シャインウェーブ、カタパルトへの接続完了しました」

「機関部より連絡。主・副・補助機関、全ての調整完了」

『作業員の撤収完了。乗組員全員の部署配置を確認。最終安全確認、全項目オールグリーンです』


 ブリッジに入る各部署からの報告と、今朝から乗組員の一員として船内コンピュータにインストールされたデジタリアンのアミからの報告を聞くと、コーラルはブリッジ全体に聞こえる程の声で指示を下した。


「メインエンジンを始動しフライホイールに接続」

「了解。メインエンジン始動、フライホイール接続」


 コーラルの指示を復唱したブリッジクルーが目の前のコンパネを操作すると、機関部の大型粒子波動エンジンがゆっくりと始動を始める。

 そのエンジンに向かってエンジンと諸機関をつなぐフライホイールが無事接続されると、クルーはエンジンの出力を更に上昇させた。


「機関接続完了。各機関始動率70パーセント、80、90、95、各機関の始動を確認」

「よろしい。大気圏離脱モードに移行する。主翼展開、メインバーニア、サブバーニアに点火。推力を臨界まで上昇させろ」


 コーラルの指示に了解と答えると、それぞれの担当をしているクルー達は作業内容を復唱しながら自分の仕事を行っていく。

 船体後部に配置されている推進用バーニアに次々と火が入ると、明るい青緑色をした粒子エネルギーの炎が噴き上がる。

 それと同時に大気圏内での飛行に使用する大きな主翼が、収納されていた船体の側面からせり出してくる。


「主翼展開完了しました!」

「船体推力臨界点!いつでも出せます!」

「よし!管制室、出航準備出来ました。合図をお願いいたします!」


 コーラルからの出航申請を受け、ステップ管制官は部屋の後ろに座っている自警団長に目を移すと、自分を見ている事に気付いた団長は机の下に垂らしていたシッポをブン、と高く振り上げると同時に手の平も振って彼に合図を送る。それを見た管制官は小さく一つ頷くと、マイクに向かって話し始めた。


『了解!シャインウェーブ号に出航許可を与えます。外からの妨害に気をつけて下さい』


 管制官からの出航許可を受け、彼の肩越しに後ろに座っている団長が親指を立てて笑うのを見ると、コーラルはモニターを見ている全員に敬礼を行い、操舵シートのコンパネから航行プログラムを開くとハッキリとした声でブリッジに号令を発した。


「シャインウェーブ号、発進!!」

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