12th ACTION ランページ・キャット (リカルの大ピンチ)
追いかけて来ていたミサイルを全て破壊したリカルは、次のターゲットをCフレームに定めるとスロットルバーのボタンを操作しながらコンピュータに次の命令を伝えていた。
「地上の赤い機体を叩くよ。対地用炸裂ミサイルセット!」
『マスター、側面から高速で接近してくる物体あり。直撃するよ!』
その声を聞いたリカルがレーダーを見るのと同時に機体に大きな衝撃が走った。
衝撃でコックピットの中で激しく揺さぶられるリカルの代わりに機体の状態をチェックするデジタリアン。コックピットの中は警告を示す警報が鳴り響いている。
「警報切って、今のダメージ情報をちょうだい!」
『モニターに出します。大丈夫なの?』
「あの程度ならまだまだやられないわよ。それでどうなったの」
『圧縮された狙撃用の高出力ビームで機体後部を撃ち抜かれちゃった。飛行は出来るけど戦闘機動が35%落ちたよ』
デジタリアンからの報告を聞くと、リカルは小さく舌打ちをする。
頭を押さえていた手をすぐにスロットルバーに戻すと慣れた手つきでボタンを操作して、損傷個所にバイパスを通して配線を復旧させ、機能が停止した部分は操作系から外していき、機体の応急修理を行った。
「よしやった、さすがだぜ!」
一方リュウの方は、リカルの機体から煙が上がっているのを見ると右手で拳を握って小さくガッツポーズを出していた。
後ろからのビームを見たクリムゾンはリュウの他にもう一つ通信用の回線を開くと、今この近くにいるであろう相手に話しかけていた。
「伏兵を仕掛けておくなんて、さすが頭だ抜け目がねえな。クリアも相変わらず良い腕しているぜ」
『仕事なら当然だ。それより早くターゲットを押さえろ』
クリアの声に頷くと、リュウは操縦桿を動かしてツヴァイを空中に浮かせると、背中のリフターバーニアを吹かせてリカルに近づき、パペットの手で戦闘機を掴み取ろうとした。
しかしリカルも黙って捕まるつもりは無く、リュウが後ろから寄ってきた所を狙って最大出力で全てのバーニアを吹かせると、そのバックファイアでリュウの機体を吹き飛ばしてから逃げ出した。
「うお!やってくれたな!でもそんなベタな手でやられるもんかよ。食らえや!」
高熱と衝撃にされされたツヴァイは大きく吹き飛ばされたが、致命傷とはならなかった。
リュウはすぐに体勢を立て直すと、銃を構えてレーザーを連射した。
回避機動を取りながら逃走を続けているリカルも、先程受けたダメージの影響で動きがぎこちなくなっている。
そしてついに、ツヴァイが撃ったレーザーがコメットランナーの底部を擦る様に浅く貫いて行った。
機体に衝撃が走り、一瞬操縦が出来なくなる。その一瞬を逃す事無くリュウはリカルに照準を固定した。
『マスター。ロックオンされちゃった、逃げ切れないよ!』
敵からのロックオンを示す警報が鳴り響く中、リカルは小さく舌打ちをすると、いつでも機体を捨てて脱出する事が出来る様に準備をした。
リュウは照準の最終確認を行った後、コメットランナーの主翼を狙って突撃銃のトリガーを引いた。
迫りくるレーザーがコメットランナーの翼を貫こうとしたその刹那、遠方の別の角度から飛んできたレーザーがぶつかり、エネルギー干渉を起こした二条のレーザーはその場で対消滅を起こして消えてしまった。
一瞬何が起きたのかこの場にいた者たちは理解が出来なかった。
それがどうして起きたのか、それが分かったのは更に一瞬後、空からやって来たパペットが、リカルとリュウ達の間に割って入ってきてからの事だった。