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F/A フリーダム/アドベンチャー  作者: 流都
第三話 ここから飛び出そう!!
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10th ACTION  『Running To The Chaser Wind And ShootingStar!!』

「あん時のガキ、何を言い出すかと思ったらまさか決闘の申し込みだとは。相当ルーフォにやられた事が腹に来ている様だな」

「冗談じゃありませんよ、先にちょっかい出してきたのはあっちだってのに、完全に逆恨みですよ」


 ガレージで放送内容を聞いていたレインは真面目な顔でリュウの宣戦布告を受け取り、ロックは顔に手を当て疲れたといった態度をとって頭を数回横にふった。


「で、どうするんだ?お前の事だから決まっているとは思うけど」


 そう言うとレインは隣に立っているロックの顔を見ながら、彼が取る行動を訊ねてみた。

 最もこういう時のロックの行動は十中八九決まっている事をレインは知っているため、すぐに答えを出さずに悩んでいる素振りを見せているロックの様子のおかしさにもすぐに気付いた。


「何だ、らしくねえな?いつもだったら売られたケンカはのしを付けて叩き返してやるって言って、相手のケンカは何でも買ってくのに」

「別にケンカ買うのはいいんですよ。そもそもの原因はあっちにあるから、僕が断る理由は無いし。それにきっちり決着付けておけば因縁つけられる事も無いでしょうから。ただ、今はこれから宇宙に上がるから、無駄なトラブルは避けてそっちに集中したいんですよ。僕とリカル、それとリープの三人だけならどうにかなるかも知れませんが、コーラルさん達までトラブルに巻き込みたく無いし」


「ところが、そう簡単に事が運ばない様になってるんだな。すぐ見つかって良かった」


 二人の話の場に現れた突然の乱入者に振り返ると、そこには茶色の毛並みを持った、垂れ耳のイヌ族が舌を出しながらハアハアと息を切らしながら立っていた。

 腕に付けている認識章から、彼がステップの自警団の人間だという事はすぐに分かった。

 話に入って来た彼は、挨拶もそこそこにするとすぐにロックの目の前までやって来た。


「ウチの団長からの伝言だな。すぐに外に出てアイツの要求通りにしてほしいそうなんだな」

「え、何でオレの事に自警団が関わってくるの?」

「実は……」

「何!RW・パペットが合計4機、町の500シーク手前の荒野で仁王立ちしてるだって!?」


 自警団の団員が理由を説明しようとしたその時、彼とほぼ同時に入って来た通信を聞いたレインが、その理由を代弁していた。


『はいっス、ロックの坊主を差し出さなきゃ町も攻撃しかねないとか、とにかくすごい剣幕っス。ギルドは自警団からの依頼でそいつらの襲撃に備える事になったから、レインさんもこっちに来てほしいっス』


 インカムからの声に小さく舌打ちを打つと、レインは部下の傭兵に持たせていた装備一式を受け取り、急いでそれらを身体に付け始めた。

 大変な事に自分が巻き込まれている事を認識すると、ロックは頭を抱えて唸りだした。


「今のが団長の伝言の理由なんだな」

「あー、まさかRW持っていたとはな。でそれを使って町を脅すなんて、何考えてんだろ?これから宇宙(そら)に上がるって大事な時に、これじゃ出るに出れねえじゃん」

「どの道無理なんだな。パペットが出てきた事で町が非常警戒態勢に入って、宇宙港も含めた全ての施設が使用禁止になっているんだな」


 自警団員の言葉を聞いたロックは驚いてシッポを鋭く立てていた。

 確かに町が襲われるかも知れない状況の中で、のんきに宇宙船の発着をする事が出来る訳無い事は分かっているが、初めて宇宙に上がるという一大イベントを控えていたロックにとって、それは寝耳に水のアクシデントであった。

 そしてそのショックが、今の状況の原因を作った者に対しての怒りに変わっていくのは、ほんの一瞬の出来事であった。


「ふざけやがってあのウサギ!とことん人に迷惑かけるつもりなら、こっちもマジでやってやろうじゃねえの!じっちゃん、オレの相棒はもう動かせるのか!?」

「あん?誰に向かって言ってやがる。昨日あれから突貫で作業して整備は完全、すぐにでもバトルすることが出来るわい」


 そう言いながら店主が視線でガレージの奥を指し示す。その方向にはパペット用のハンガーがあり、その中の一つには、整備や装甲板の張り替えが完了してピカピカになっているパペットが一機固定されていた。


 高さ10メートルほどの、小型機に分類させるこのパペットは、複数の濃さのグリーン系の色と、装甲のあちこちに引かれている白色のラインで塗装されていた。

 頭部のパーツは、持ち主のロックと同じネコ族をモチーフにされていて、頭頂部にはネコミミの様な小さな一対のセンサーユニットが付いており、顔にはヒゲ型のアンテナが左右二本ずつ、計四本生えている。

 全体的に丸みを帯びているボディは、大気内での空気抵抗と物理攻撃に対する防御力の最も良い効率を計算されての作りだ。


 ハンガーに止まっているパペットを見ると、ロックは乗って来た自分のチェイサーに駆けより、起動キーを回してエンジンをかけた。

 浮かびだしたチェイサーでパペットの近くまで乗り付けると、ロックはチェイサーに付いているタッチパネルでコマンドを打ち込み、チェイサーを空中に浮かびあげた。

 ロックが空に浮かぶと同時に、パペットのコックピット部分のハッチが開く。空中でチェイサーの向きを変えると、ロックはチェイサーごとコックピットの中に入っていった。


「ユニットモードチェンジ、アーマー」


 コックピット内にチェイサーを格納すると、ロックはチェイサーの操縦グリップについているスイッチを操作し始める。

 プログラムを受け取ると、レギオンメタルで構成されているチェイサーはそのボディを変化させていき、ロックの身体をすっぽりと包む黒色のCAになった。

 このアーマーモードは、ロック自身普段あまり使う事も無いものだが、確実に勝っておきたいここ一番の状況で自分の身を守るために装備しておく、いわば彼の本気の表れでもあった。

 シャープなボディラインのチェイサーから変形したアーマーも、ロックと対比すると大きいが、すっきりとまとまった、突起や大きなパーツなどは一切ない物だった。

 しかし頭には何もついてなく、むき出しのロックの顔にインカム・メットというこの姿には少々釣り合いのとれない様になっているのは、単にロックがきゅうくつなのは嫌だという理由で頭部の装備を外しているためである。


「おい、リープ、起きてるか?起きてたら返事しろ!」


 コックピットのイスに座ってインカムの周波数をリープ用の通信周波数に変えると、ロックはその場でリープに呼びかけを行った。

 何回か呼びかけた所で、目の覚めきっていない間の抜けた声と共にリープが通信に応えてきた。


『うう、ん。ロックか。全くなんだよ、人が気持ちよく寝てたってのに』

「よーし、起きたな。お前のデッカイ方の身体を動かすから、この通信波経由してこっち来てくれ」

『なに、朝っぱらから戦闘かよ?俺お前の組み手の後にリンの機体の整備に付き合ってて全然寝てないんだけどよ』

「いいから早く来い!砲弾の雨が降ってきたら、そんな事言ってられねえぞ!」


 寝ぼけている彼女に一方的に用件を伝えると、ロックはコックピット内に収納されている操縦席やコンソールパネルやコンピュータディスプレイを引き出し、シッポを大きく振りまわしながら電子機器を操作して機体の操縦プログラムを立ちあげる準備を始めていく。

 不意にインカムからノイズが聞こえてきたかと思うと、目の前の計器類に光が付きはじめてきた。

 会話に使っていた電波を使って、リープがパペットのコンピュータに入ってきた時に起きる現象である。


『来たぞー。早い方が良いんだろ?動かす準備、一緒に手伝えよ』

「OK。一分で動かすぞ」


 その後二人は、ものすごいスピードで機体の起動準備を行っていき、完了したときにはロックの言っていた一分の三秒前だった。

 そしてその頃、ロックがパペットに乗り込んでからガレージの職人やその場にいた冒険者達が行っていた、パペットの出撃準備も出来あがった。

 ハンガーの固定ユニットが機体から外され、ガレージの屋根が開くと、パペットの乗っている地面がせり上がっていき屋根の上に出ていった。


『ハードウェア、ソフトウェア異常なし。パイロット生体認証完了。PRS展開、バーニア角度調整、稼働準備完了』

「OK。続いて戦闘準備を行う。サイバーリンクシステム起動」

『アイサー。サイバーリンク、搭乗者と機体の神経シナプス接続開始』


 ロックの指示を受けリープが作業を受領する。すると同時に何十本ものレーザー光線がロックの身体を包み込み、彼の全身をくまなく走っていく。

 自分の感覚をマシンにつなげる時に起きる、ピリピリとした独特の痺れを感じながら、ロックは自分の感覚とパペットの操作がリンクしていくのを確認していた。


 自分の感覚を搭乗しているマシンにつなぐこのシステムは、元々は初心者向けのRB操縦補助が目的だった。

 しかし使用者の思考に対するマシンの追従性や取り扱いの良さなどが着目されると、その技術はRWにも転用された。

 様々なタイプの中には、直接機体に神経をつないで完全にヒトとマシンを一つにする様な物もあるそうだが、ロックが使っているのはレーザーで読み取った神経情報を操縦桿経由で機体に伝え、機体からの情報をその逆のプロセスでロックに伝える間接的なリンクスタイルである。


『リンク接続完了、武器の安全装置解除、レーザーショットライフル、シールドブレード、肩部キャノン砲異常無し。最終安全装置解除コード入力頼む』


 リープの言葉に、ロックは自分の手を動かす感じで操縦桿を動かす。 するとパペットの右手は、彼が考えた通りの動きを自然に行った。

 リンクが正常に行われた事を確認したロックは、一呼吸置いてからコードの音声入力を行った。


Running(ランニング) To(トゥ) The() Chaser(チェイサー) Wind(ウインド) And(アンド) ShootingStar(シューティングスター)!!」

『コード確認、認証。武器使用可能、全機能解放完了。いつでも行けるぜ、ロック!』

「打ち上げの準備は出来た、いつでも出ていいぞ!」

「AllRight!じっちゃん、金は後でギルドに送っておくから受け取っておいてくれ!エクストリーマー・ロック!エントリーRU、バトリングパペット・ランページキャット!ライド・オン!」


 掛け声と同時にロックが操縦桿を倒すと、パペット、ランページキャットは脚を動かして一歩前に進み、機体の脚と腰の部分に装備されているPRSから反応粒子を噴射させた。

 粒子の力で機体が浮いた所で更に操作を行うと、背面と肩の横についている球状のラウンドバーニアに火が付き、一瞬のうちにそれらから推進用の火が点火されると、次の瞬間ロック達はステップの町の上空に飛び出していた。


『待たせると相手に悪いから、最速で行くぜ』

「おう!ちゃっちゃと片づけて、早く宇宙に昇るぜ!」


 軽い会話のやり取りの後、機体の飛行速度を上げると、二人はあっという間にステップの町から外に飛び出していた。

 移動速度が安定してきた時インカムに通信が入ってきたため、ロックは回線を開いて通話モードを取った。通信を送ってきたのは今別れたばかりのレインだった。


『ふう、何とか繋がった。ルーフォ、いい話が出てきたぞ。自警団とギルドで不審者とそのパペットに正式に賞金を付けた。一人と一体にそれぞれ一千だ。現在お前しか出ていないから、上手くやりゃぼろ儲けだぞ』

「そりゃすごいな、全機撃墜すれば最低でもマシン分で四千もらえるのか。気を使ってくれてんのかな?」

『さあな。でも金はいくらあっても困るものじゃねえし、とにかく叩けば出すって言ってんだから気にしないでやる事やってこい。お駄賃だと思ってよ……っと。何だあ』


 横から誰かに呼ばれたレインが通信をつないだままフェードアウトして十数秒、話に戻ってきた彼の声は、先程と打って変わってとても歯切れの悪いものになっていた。

 異常を感じたロックがレインに問いただしてみると、彼は観念したかのようにロックに説明をし始めた。


『今入ってきた話なんだが、お前の相棒の嫁さん?あの娘がRWの戦闘機(ファイター)に乗って宇宙港から飛び出していったそうだ』

「何だそりゃ!?レインさん、詳しい事は分かりますか?」

『何でも宇宙港が使用停止になった事について、原因が無くなれば営業再開出来るじゃないとか言って、自分の機体引っ張り出して管制の指示も無視して出て行ったって。宇宙港の中が少し混乱したってさ』


「……いい根性してるぜ、さすがだな」

『ネコ科の種族ってマジで行動力だけはハンパねえよな、お前といいリンちゃんといい。良いコンビになれるよ、二人』


 リープの言葉に苦笑いを浮かべると、人の尻拭いはごめんだなと言いながら、ロックは身体を前に屈めるとパペットの速度を更に上げて、リカルも向かったという現場に急行していった。


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