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F/A フリーダム/アドベンチャー  作者: 流都
第三話 ここから飛び出そう!!
33/123

4th ACTION リープ (彼のマシン 彼女のマシン)

「ごめん下さーい。この前機体の修理を頼んでいったものですけどー」


 ギルドオフィスから出てすぐ隣にある店舗にリカルとロックはやって来た。

 この店は大きさや種類を問わず様々な乗り物の修理を行う工房だ。

 この工房では自動車やバイク、RSにRB、果てはRWまで修理を頼むことが出来、その敷地だけでもトラメイのあらゆる工房を差し置いて一番、と言えるだけのものを持っている。

 隣の冒険者ギルドの五倍以上の面積を持つこの工房では、毎日あらゆるマシンを修理している。

 そのためここがトラメイの作業機械を支えている、と言ってる人たちもいる位だ。

 目的の店に着くとリカルは店内に入って声をかけてみる。

 しばらくすると机が並んでいる事務所らしきところから人が立ちあがり、パタパタと駆け足でリカル達のいる所にやってくる。


「はーい、お待たせいたしました。修理ご依頼された機体の引き取りですね?お預け時に発行したチケットを拝見させてください」


 リカルはジャケットのポケットに手を入れると、事務員に言われたチケットを取り出してそれを手渡した。


「B-5番ですね。只今出しますのでこちらでお待ち下さい。次の方、ってロックじゃない。十日ぶりね」

「久しぶり。引き取りに来たんだけど、じっちゃん居る?」


 白い毛並みのイヌ族の事務の女性にロックが訊ねると、彼女は工房の奥の方を振り返ってみた。

 ロックもその方向を見てみると、工房の奥では大声を張り上げながら作業員たちに指示を出して回っているイヌ族の老人が歩いていた。

 一台の車を手に持っているスパナで軽く叩いた後、作業員を呼んで二言三言指示を出すとそこから離れて今度は戦闘機を同じように叩いて回る。

 少し薄くなってきているこげ茶色の体毛と、大きくて垂れた耳を上下に忙しなく動かしながら働いている姿は、高齢ながらもそれを感じさせないハツラツとした元気さを見せつけていた。

 呼んでおくねと言い残して女性が奥に歩いて行ったので、ロックはリカルが座っている席の隣に腰を下ろした。


「知り合いのお店だったの?」

「ああ。ここの主人のじっちゃんな、腕はいいしオレと気があうからよく自分のマシンのメンテを頼んでるんだ。前はオレが直接してたんだけど、忙しくなってきてからはここのじっちゃんにまかせっきりになっちまった」

「おかげで忙しいったらありゃしねえ。常連客が増えるのはうれしい事だがこいつが持ってくる物はとにかく手間がかかっていけねえ」


 話をしていた二人と別の所から聞こえてきた声に二人は同時に振り向くと、先程まで店の奥で機械を相手に動きまわっていた店主の老人が、スパナを肩に当てながら二人の後ろに立っていた。

 犬歯をむき出しにしながら笑っている店主を上目づかいに見ながら、ロックも牙をむき出しにして笑い返す。


「しかししばらく見ないと思っていたら、まさか女づれでやってくるたあ、お前もやるようになったじゃねえか!」

「からかわないでよ、ただでさえいろんな人からあれこれ言われて困ってるんだから。それよりオレのマシンは?」

「ああそれなんだがな、お前のでっけえ方の相棒、急ぎの仕事が重なってたから修理の完了は明日になっちまう」


 わりいなと謝ってくる店主に、ロックは席から立ち上がると片手を振ってそれを制した。


「こっちも明日まで動けないから別にいいよ。それよりオレらの船の調整に人回してくれてありがとう、忙しいんだろうにわざわざこっちの面倒まで見てくれて」

「ふん、常連客が旅に出るってのに何の餞別も無しじゃ薄情者に思われるからな。さてと、それじゃ超特急で仕上げてやろうかね」


 挨拶が終わって店主が店の奥に戻ってくると、入れ違いに先程の女性事務員がやって来た。

 手には数枚の書類をもっており、ロックとリカルの前までやってくるとそれぞれに持っていた書類を手渡す。


「ではこれが預けた機体の修理箇所と修理内容、それと修理金額です。目を通してからサインして下さい」


 差し出された書類を受け取ると、二人はそれぞれその内容に目を通した。

 自分の希望通りに修理が完了している事を確認したリカルは書類にサインをしようとして、ふとロックの方を見ると、彼は自分の倍以上の内容が書かれている書類を、書かれている事を見落とさない様に指で文字をなぞりながら時間をかけて読んでいた。

 それを見ながらリカルは大変だなと思いながらペンで所定の場所に自分のサインを入れると、書類を事務員に手渡した。


「ありがとうございます。それでは機体を引き渡しますのでこちらへどうぞ」

「ちょっと待て、オレも行く」


 事務員に連れられて移動しようとしたリカルを呼びとめると、ロックは書類にサインを記入して事務員にそれを渡す。


「物は分からないけど、どんなマシン使っているか興味あるからな」


 リカルの隣に並んだロックを見てから、事務員は二人を案内するため先に歩き出す。

 しばらく歩くとガレージの隅から何かの機体を牽引してこちらに向かってくる小型のトレーラーがやって来た。

 事務員が取りだした手旗でトレーラーの運転手に合図を送ると、運転手は三人の隣に車を止めた。

 動きが完全に止まった事を確認してから、女性事務員は機体の確認をお願いしますとリカルを機体に近づけ、ロックも後ろからそれを見た。


 それは戦闘機だった。

 機体全体に黒色のカラーリングが施されており、主翼に引かれている識別用のラインには明るい青紫のカラーリングが引かれている。

 大型でややゴツイ、ぱっと見た感じは攻撃能力に特化した、ある意味彼女向きのタイプの機体であった。


「はー、結構使いこんだ良い機体だな。これがリカルのマシンか。今までこれで旅をしていたの?」

「うん。この機体で居住用のキャビンを引っ張って旅して来てたの。まあ、この前船を手に入れたから、長年使っていたキャビンは引き取ってもらったけど」


 ロックと話をしながら、リカルは戦闘機の外側をざっと見て回る。

 更に機体によじ登って風防キャノピーを開けると上半身を折り曲げ、シッポを振りながらコックピット周りを丹念にチェック、しばらくしてから頭を上げると地面に向かって飛び降りた。


「中々いい仕事してるじゃない、気に行ったわ。それじゃすいません、これの搬入作業もお願いしますね」


 そう言いながらリカルは事務員に代金と、追加で注文した機体の運搬代を支払う。

 お金を受け取った事務員は早速彼女の戦闘機を運搬する手配を取った。

 リカルに運ぶ場所を聞いてからトレーラーの運転手にそれを伝え、一通りの手配を取ってから、事務員の女性はロックを呼び止めた。


「あ、ロック。おじいちゃんからだけど、ロックが他に預けていったものはチェック済んでいるって。いつでも持ちだして良いそうよ」


 伝言を聞いたロックは分かったと言うと、ある一角を目指して歩き出す。

 チェックの完了している小型のマシンは全て一か所に保管されており、その中にはロックが修理を依頼していたバイク型のRBが、コンディションを万全にしたきれいな身体で主との対面を心待ちにしているかのように静かな光沢を放っていた。

 ロックのバイクは俗に言うチェイサータイプであり、PRSシステムによる高い旋回能力と最高速度を重視している、追跡者(チェイサー)の名にふさわしいマシンである。

 大型のシャープなボディに跨ると、ロックはメーターパネルの下側についている起動キーをゆっくりと回す。

 わずかに動き出した後、全身に伝わる振動が段々と強く大きくなっていくと、それは獣の発する咆哮の様な荒々しいものへと変わっていく。

 チェイサーの振動を全身に感じると、ロックはチェイサーのエネルギータンクの部分を手でゆっくりと撫でる。

 エンジンからボディに伝わる振動と、エネルギータンクのひんやりとした落ち着きを取り戻させてくれそうな冷たさが、手の平の肉球を通してロックに伝わり、その仕上がりに満足したのか彼は喉を鳴らして目を細めた。


「いいエンジン音ね。しっかりと使い込まれていて、それでいてパーツの疲れを感じさせないどっしりとした響き。よっぽど大切に使っているのね」


 いつの間にやって来たのか、後ろから聞こえてきたリカルの声に、ロックは耳だけ動かしながら身体はチェイサーの方に向けたまま、彼女の声に声で答えた。


「そりゃね、ジャンクオーシャンで朽ち果てたボディフレームを見つけてから、自分でパーツを探して一から組み上げたんだ。ここに預けてあるマシンは全部オレが組み上げた物なんだぜ」

「なるほどね、それなら大事にする気持ちも良く分かるわ。自分が作った物は思い入れも強いしね」


「思い入れが強いのは結構、大事にしてくれるのもいいんだけど、もっと丁寧に扱ってほしいよな。いつも乱暴に乗り回すんだからこっちもいい迷惑だぜ」


 聞こえてきた言葉に何となくロックがそうしている姿が想像できたため、リカルはクスリと軽く微笑んだ。そしてすぐに声のした方を振り向くと、そこに立っていた女性に向かって一言。


「ところでアンタ誰?」

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