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F/A フリーダム/アドベンチャー  作者: 流都
第三話 ここから飛び出そう!!
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2nd ACTION 交易都市 『騒がしすぎるのもうんざりする』

 ステップ航空局の管制官との話を終わらせた後、管制官の指示で船をドッグに停泊させると、乗組員の面々はそれぞれ船から降りていく。

 その人の波に乗って表に現れる、ロックとリカル、そしてコーラルの三人。


「うーん、ステップに来るのも久しぶりですね。最後に来たのは半年くらい前でしたかね」

「アタシはこの前来た時からあまり時間経ってないわね。この星一番の町だから、情報収集のために長めに留まっていたし」


 ゆっくりとタラップを降りてきたコーラルが、背ビレを両手で挟みながら身体を大きく伸ばして一言口に出すと、後ろから続いて降りてきたリカルが軽やかなステップで止まっている彼を追い越してから、両手を広げて大きく胸を反らして深呼吸をした。


「仕事の関係でちょくちょく来ていたけど、やっぱりここは良いな。ある意味宇宙に一番近い場所だから、心なしか吹く風や空の色が爽やかに感じる」


 一番最後に降りてきたロックは、タラップの段差を一段飛ばしで降りながら、最後三段を残すところで踏切を付けると一気に飛び出し、先に降りていた二人のちょうど真後ろに着地した。

 三人が揃ったところでドックポートから出ようとすると、入れ違いに手に大小様々な工具を持った一団がやって来た。


「お?じっちゃん配下のメカニック集団のお出ましか。滑走路内の船の整備は専門の整備工がいるだろ、町の修理屋がどうしてこっち来たのさ?」

「お前の顔もしばらく見納めになるから、うちの親方がこっちの親方に無理言ってお前の船の整備を引き受けたんだよ。感謝しろよ!」


「へえ、そりゃ後で礼を言っておかないとな。ついでに値引きしてくれると嬉しいんだけどニャ」

「ガキのくせして図々しい事言いすぎ。すぐにでも宇宙に行けるように超特急で仕上げてやるから、そいつで我慢しときな」


 いくつか言葉を交わしてから、メカニックの一団は三人の側を通り過ぎてシャインウェーブ号に歩いて行く。

 ロックは彼らの背中に軽く手を振って見送ると、リカル達と町に向かって歩いて行った。

 宇宙港の入り口から一歩外に出ると、賑やかな町が目の前に現れた。

 交易都市と言われるだけあり、メインストリートには大小さまざまな店が軒を連ね、行きかう人々もネコ族を初め、イヌ族やウサギ族、トリ族やシャチ族など他にも色々な種族がたくさん歩いていた。

 ロック達三人はロックを先頭に冒険者の組合ギルドのオフィスがある、メインストリートから少し外れた区画へ向かって歩き出した。


「元々この町は冒険者達が、自分の見つけた発掘品やお宝を他の冒険者や商人と売買するために作った交換所だったんだ。人がたくさん集まりだすと、その人達を相手に商売しようと冒険者以外の人達もやってきた。人が増えると遠くの方から行商するよりもここに住んだ方が楽だって考えをする人も出てきた。まず家が出来て、次に店が出来て、無秩序に増えていくそれらをまとめるために、冒険者や商人の中から有志の人達が代表となって町を作った。更に規模が大きくなると、ここから直接他の惑星にアクセス出来るようにしようと大きな宇宙港が作られ、そして今のこのステップが出来上がったんだ」


 歩きながら町の成り立ちを説明するロックの話を、リカルは黙って頷きながらしっかりと聞き、コーラルはロックに感心しながらそれを聞いていた。


「詳しいものだね。私も海に関しては結構詳しいけど、ものの成り立ちを知っている物まではあまりないしね」

「別に珍しくも無いわね。宝や秘境を探すためにその土地の事を調べるのは、ハンターならやって当然の事だし。それに地元の事なら説明ぐらい出来なきゃダメでしょ」


 厳しいねと、リカルの言葉を聞いた後にロックはおどける様な声を出し、コーラルは顔に苦笑いを浮かべながら道の端を歩いて行く。

 地面がむき出しの、それでも舗装がされている道路には、様々なタイプのRBが、人や荷物を乗せてひっきりなしに走っている。

 大きな荷物を荷台に乗せているビーグル・トラックのすぐ横を、腕に巻いている時計の時間を気にしている運転手を乗せたビーグル・バイクが走り去っていく。

 更にトラックの後ろから、背負っているリュックから中身がはみ出ているほどの荷物を持った配達員がRS・ボードに乗ってトラックを一気に追い越していった。


「やっぱりにぎやかな街ね。でもあんまり騒がしすぎるのもうんざりする」

「まあこればっかりはしょうがないけど。でも人が多いと変な奴も集まってくるから、それだけはどうにかしてほしいよな」


 通りを走っているRBやRSを見ながらやや不満げな態度を取るリカルに、ロックも相槌を打つ。

 その時歩いている三人の正面から、ウサギ族の少年が一人歩いてきた。

 彼は一般人から見れば普通の歩き方をしていたが、それは周囲の人間に自分の気配を感じさせない独特なものだった。

 少年は三人をじっと見据えながら歩いてくると、隙間なく三人の身体を見て回っていた。

 ロックがリカルと話をするために顔を彼女の方に向けた時、少年はロックの服の端が少し開いたのを目ざとく見つけた。

 すると少年は、まるで煙のようにその場から消えたかと思うと一瞬のうちに三人との距離を詰め、自分の体をロックの体にわざとぶつけてきた。


「おっと、ごめんよ」

「わわっと」


 ぶつかって来た相手は軽く謝るとそのまま走り去っていった。

 何だよと呟くと、ロックは少年がぶつかって来た右肩を左手でさすりながら、右手をジャケットのポケットに入れて中身を探りだした。


「ポケットの中身、取られていたでしょ」


 ポケットの中に入れていた財布が無くなっていたのに気付いたのと、リカルの声が聞こえたのはほぼ同時だった。

 ロックはうんと小さく返事をすると、歩みを止める事無く顔だけ少し横に向けて、声をかけてきたリカルの方を向いた。


「結構見事にな、気付いてたんだ」

「そりゃね、アイツのやり方がベタだったもの」

「ちょっと、そんなに落ち着いていて良いの?早く彼を捕まえて財布を取り返さないと!?」


 財布を盗られた本人よりも慌ててコーラルが提案をしてきたが、当事者のロックはむしろ落ち着いた面持ちをしており、気にしなくていいといってコーラルを落ち着かせていた。


「あれは保険用。元々盗られてもいい様に赤や黄色の小銭しか入れてない奴ですから、無理に取り返す必要はないです」

「なるほど、だから落ち着いているわけだ。しかしこんな昼間からスリがいるなんて、やっぱり大きい街は嫌だわ」

「しかも掏られた方は何もしないのでは、スリを増長させるだけでは無いのですかね」

「いやいや、追いかけて捕まえるよりも、もっと効果のある事をしてやったからね」


 そう言うとロックはポケットに入れていた手を外に出して、その手に握っていた物を他の二人に見せてみた。

 二人は覗き込む様にして開かれた手の中を見ると、そこには濃さの違う緑色の種類の硬貨(プレート)が十枚ほど握られていた。

 それを見てから二人は顔を上にあげると、ロックは口元を歪めてキバをむき出しにして、子供の様な無邪気な笑顔をしていた。


「そんなお金どこに持っていたの?どこかから出したようにも見えなかったけど」

「あ!まさかアンタ、さっきの奴に掏られた時に!」

「財布の中身だけをこう、すいって感じでな」


 笑ったままロックは手振りを交えながら今しがた自分のした事を簡単に二人に話す。

 コーラルは心配と嫌悪感の入り混じった表情でロックを見たが、リカルは自分も気付かなかったほどの彼の技量に驚きと好奇心の表情を浮かべ、一体どうやったのと声に出して聞いてきた。


「全く、仕返しだとしてもイケナイ技を使うなんて。君どこでそれを覚えたの?」


 コーラルの言葉を聞いて、興奮しながら手を取って詰め寄ってくるリカルを抑えながらロックはコーラルの問いに答え出す。


「この町のギルドの傭兵隊の元締めの人、昔からの知り合いでその人から教えてもらいましたね」

「それってこの前アンタの村で会ったレインって人の事?」


 横から口を出したリカルの声に首を縦に頷くと、ロックは彼女の手を上手く解いてからまた前に歩き出した。


「オレの親父と知り合いだってのは聞いただろ。そういうのもあって結構いろいろ教えてくれたんだよな、さっきの人の持ち物をこっそりいただく方法の他にも剣の扱いや身体の鍛えかたとかの基本的な戦い方や、酒の飲み方や煙草の吸い方、まあ煙草は身体に合わなかったけどな。『悪い事教えるのも大人の務めだ』って言って良い事も悪い事も、まあ悪い事教えてくれた時はいつも知ることが大事だから教えるんだとは言ってたけど」


「ふうん、そういう事あえて教えてくれる大人ってあまりいないし、何か格好いいわね。随分可愛がられていたんだ」

「て言うか、オレが親父によく似ていたってのもあるんだろうな」


 その一言でロックはこの話を終わらせたが、彼の言葉の意味が今いち分からなかった二人は、口をそろえてどういう事?と訊いてきた。


「うちの親父とレインさん、年が七歳離れてたの。それ位離れてると遊び仲間っていうよりかは兄貴と子分みたいなものらしくてな、よく親父の後ろをついてきていたらしいんだ。レインさんは親父から色々教えてもらっていた。年が経って、自分の兄貴分の人とそっくりのチビがなついてきたから、昔を思い出して今度は自分が兄貴分になろうとしたんじゃないかな」


「重ね合わせですか」

「特に親父がいなくなってからはその意味も強くなったかも知れないな。ま、こっちにしても冒険者になるための修行がしたかったから、レインさんから教えてもらった事はありがたかったよ」


 ロックの話の最後の下りの部分が寂しさを含まれていたので、彼が両親を失っている事を知っていた二人はそれ以上その話を聞くのを止める事にした。

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