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F/A フリーダム/アドベンチャー  作者: 流都
第三話 ここから飛び出そう!!
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1st ACTION 結成!L・D・C! (朝の一幕)

 惑星トラメイ。


 ここは一つの大陸が、惑星が誕生した時から今日まで、大陸プレートの隆起や大規模な地殻変動が発生することが無いまま一つの大地が分断される事無く存在している変わった惑星である。


 この星の自然の陸地全体の二割を占めるこの大陸の他は、海抜の上昇で海の底に沈んでしまった建造物などを繋ぎ合わせた無数の小さな島と、大陸から離れた所にある人工の空中都市群しか陸地と呼べるものは存在しなかった。

 

 大陸には様々な遺跡があり、大小様々な大きさの町や村があった。

 その中でも一番大きな町が、宇宙船の打ち上げ用の施設を持ち、大陸のほぼ中央に位置しているため流通にも適している大陸の中枢とも言える街、ステップと言う交易都市である。


 この交易都市を目指して、一隻の宇宙船が海の上をゆっくりとしたスピードで飛んでいた。


 夜明けと共に海上に停泊させていた船を離陸させると、ブリッジの操舵パネル前に立っていた黒髪のシャチ族の青年は、航路をコンピュータに登録してからブリッジを後にした。


 ブリッジを出た彼が船のやや後ろ寄りにある居住区内の食堂に入った時には、何人かのクルーがそれぞれに集まって小さな組を作りながら席についている光景が目に入った。

 朝食をトレイに乗せてからどこに座ろうかと辺りを見回した時、青年はある二人組の所で目を止めた。


 他のクルー達は青年の様なシャチ族やアシカ族といった海洋種族に対して、その二人は頭から飛び出た大きな耳と細くしなやかなシッポに少しつり上がった目元、髪の色は一人は透き通るような金でもう一方は暗めの黄色、髪に対して少しくすんだ金色と、オレンジが少し溶けだした、ヒマワリの様な黄色の毛並み。遠目に見れば似ているが、ネコ族の少年と獅子族の少女、違う種族の二人組である。


「お早うございます、オーナー、チーフ」

「お早うございますコーラル兄さん」

「お早うコーラルさん」


 何かの本を読んでいる少年とコーヒーを飲んでいる少女。

 隣同士に座っている二人に挨拶をすると、コーラルと呼ばれた青年は彼らの向かいの席に腰を下ろした。


 少年の名はロックと言い、少女の名はリーンカーラ、彼女は名前の長い自分の事をリンと呼ぶよう周りに言っているが、ロックだけは彼女の事をリカルと呼んでいる。

 この二人は冒険者であり、特に少女はこの船の所有者でもある。


 この二人は先日までコーラルの住んでいた島に滞在していたが、彼らと一緒に遺跡の中に入ったコーラルは、自分よりも年下でありながら確固たる信念を持っている二人に感化されて修行の旅に出る事を決意した。


 そして島を出る時、彼と一緒に旅をしたいと何人かが名乗りを上げ、それが大人数になったためどの様に活動しようか考えていた時、彼の祖父がその少年達と一緒にいけばいいと言ってきたので、コーラル初めその仲間達がこの船のクルーとなったのだった。


「今日は随分と早く出てきてますね。いつ頃お目ざめになられました?」


 コーラルが話をしてきたのは、席について食事を始めてから少ししての事だった。

 ネコ科の種族はドライな性格が多いため、聞かれた事に対して答える位で用事が無ければ自分から話をすることはあまりないが、目の前の二人はなぜか人懐っこい性格をしているため誰とでも色々な事を話す。

 特にリカルは話がしたい時は話題があろうが無かろうが関係なしに言葉を並べてくる。

 だから二人揃って黙っている事が珍しかったので、今日はコーラルの方から話を始めた。


「僕は昨日からずっと寝ていません」

「アタシも昨日はずっと起きてたわ」


 そのコーラルの質問に、二人はほぼ同じタイミングで同じニュアンスの返事をしてきた。

 大して大きな声でもなかったが意外と食堂中に声が響き、中にいた他のクルー達は思わず視線を三人に向けていた。


 話を振ったコーラルも、すこし考えた後何かに思い当った様で、そうですかと小さく呟き視線を外すと食事を再開した。

 彼の顔を見ながら質問に答えたリカルは、急に周りがよそよそしくなったのを感じ、自分の周りを見渡してからああと思うと周りに聞こえるよう意識しながらコーラルに話しを返した。


「アタシ、この間から作っていた物を次の町に着くまでに完成させておきたかったから、それで徹夜してたのよ。ロックは何してたの?」


 話を振ろうとリカルがロックに声をかけるが、彼は相変わらず本に目を通したままこちらの話を聞いておらず、リカルが肘で彼をつついた事でやっと顔を上げた。

 そして彼女はさっきと同じ事をもう一回彼に尋ねてきた。


「昨日?この間、いきなりCAになったペンダントを調べるのに工作室にこもっていたけど?」


 答える事を言ってから、ロックはまた本を読み始める。

 その直後、リカルがもう一度食堂の中を、今度はさっきよりゆっくりとしっかりと見渡していく。

 そして目が合うクルー達の表情を見てからとりあえず満足すると、彼女はテーブルに置いてあるポットから新しいコーヒーをカップに注いでいった。


「でも、この話さっきお前にしたばっかだろ。なんでもう一度話す必要あるんだ?」

「え?ちょっとそれ本気で言ってんの」


 本を読みながらロックは、今リカルと交わした会話に疑問の声を上げる。

 それを聞くと彼女はまるで信じられないと言った顔でロックを見た。

 しかし当のロックは自分の読んでいる本の中に自分の世界を作りだし、時々何かを呟きながら両目を細めて紙に書かれた文章を読みふけっていた。


「ロック……。アンタ人の話聞く時はもうちょっとその人の顔見なさいよ」


 ずっと本を読み続けているロックに呆れた声で注意をしてからカップの中身を飲み干すと、リカルは自分の座っていた席を片づけてから立ちあがる。席から離れる前にコーラルにあとどの位で目的地に着くかを聞き、三時間ほどで到着するとの答えを聞くと、分かったと声を上げ二人の方を見た。


「じゃアタシこれから寝るから、ステップについたら起こしてね」


 そう言い残すと、彼女は片手をひらひらと振りながら食堂を後にしていった。

 残されたコーラルは目で彼女を見送った後、自分の向かいに座っているロックに目を移した。

 特に親しいと言う訳では無いが、結構面識のある少年は、とりあえず何でも一通り行ってみて、自分の趣味に合うものはとことんと、それこそ周りの状況に関係無く行動する事を、今のやり取りの間中黙々と本を読んでいる姿を見て思い出していた。


「徹夜明けで今から寝て、ちゃんと起きてこれるんかよ。でも分かんねえな、リカルの奴、何でさっき話した事もう一度聞いてきたんだ?」


 そうロックが声を出したのを、コーラルは聞きとった。

 独り言として呟いた言葉だろうが、先程から彼を見ていたコーラルはちゃんとその声を認識することが出来た。


「オーナーの言うとおり、チーフは人と話す時はその人との話に集中するべきですよ」


 リカルと同じ事をコーラルもロックに話し、その後コーラルは自分達の周りに人がいない事を確認してからテーブルより身を乗り出してロックに近づくと、声のボリュームを落として少年に囁きかけた。


「おんなじタイミングでおんなじ事、お二人して言うものだから周りが勘違いしてしまったのですよ。お二人が昨日の夜ずっと一緒にいたって」


 コーラルの話し声に頭の耳をピクリと動かすと、ようやくロックは本を閉じるとコーラルの方に顔を向けた。

 もっとも向けられた顔は先程から本を読んでいた時の、自分の考えに浸っている能面の様な無表情だったため、今の話をきいてどう思ったのかその顔から読み取ることが出来なかったが。


「そんな事してない。周りがどう考えてるか知らないけど、事実じゃないのだからすぐ消える話題でしょ」

「そう思い通りにならないと思いますよ。お二人の仲の良さは全員知っていますし」

「仲が良いんじゃ無くて、アイツがべったりくっついてくるだけですよ」

「そう言う所が、周りから見れば仲が良い要因になるのですよ」

「それで昨日の夜一緒に過ごしたと思われてると?冗談じゃありませんよ。どうして出会って日の浅い奴と一緒にいなきゃ……」


 そこまで言葉を出すと、ロックはふと自分の言った事に引っ掛かるものがある事を感じた。

 一瞬のうちに考えを巡らせるとある部分に気がつきあっとした表情になり、我に返ったロックが前を見ると、コーラルがやっと気がついたのかと言いたげな顔でロックを見ていた。

 それを見たロックは、失敗したと言いたげな苦い表情を顔に浮かべてから、周りにも聞こえるよう少し大きな声でゆっくりと再び話し始めた。


「ち・が・う・か・ら!仮にそうだったとしても、好きでもなんでもない奴とじゃ何も起きませんよ!」


 それだけ言うとロックは立ち上がり、そのまま食堂から出ていった。

 当然この一部始終はそれを見ていた他のクルー達の話題になり、中には小さく笑う者もいたが、コーラルが鋭い目で睨みつけると、そのクルーは笑うのをやめて彼から目を離した。


「全く、何と言うか初々しいよな、うちらの船長さん達は」


 隣から聞こえてきた声にコーラルが視線を動かすと、クルーの一人が料理のトレイを持って自分の隣の席に座る所だった。

 席に着いてからパンにかじりつくクルーを見ながら、コーラルは彼に言葉を返した。


「まあ、あの位の年頃ならあんな反応じゃないの。あれで恋愛感情とか持っていたらまたすごい反応しそうだけど」

「ま、変に慣れている様な奴よりはマシか。それに自分達にだってあんな時があったわけだし、バカにはできないよな」


 隣に座っているクルーと会話をしながら、コーラルは手を止めていた食事を再開させる。

 こうしてそれぞれの朝の時間を過ごしながらも、船は確実に目的地へと進んでいく。

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