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F/A フリーダム/アドベンチャー  作者: 流都
第二話  DIVING TO THE ADVENTURE
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8th ACTION 『キメちゃって下さい!』

 まばゆい光の中から、CAを身に付けてロックは現れた。

 彼の装着しているアーマーは、白を基調に濃淡の違う青紫色のラインが入った物で、背中には翼の様な二基一対のユニットが付いており、ユニットにはそれぞれ三枚ずつ、それぞれが様々な方向に可動する羽根型のスラスターを装備している。

 専用の武器はついていない、スマートなデザインのアーマーである。

 見た事のない物を手に入れた事にロック自身が軽く混乱をしていたが、アーマーを装備した事で自分の身体が楽になった事に気がつくと、ロックは粒子波動刀を構えてカニの群れの中に飛び込んでいった。

 走ろうとした時、身体に浮遊感を感じたかと思うと次の瞬間、いきなり滑るように身体が急前進していった。

 足の裏とスラスター羽根、他の各所に装備されていた(パーティクル)(ライド)(スライダー)システム(粒子搭乗式滑走機構)が粒子を反応させて身体を浮かせると、反応させた粒子を推進力としてロックの身体を押し出した。


「わああ!ちょちょちょまっ、にゃあーー!!」


 初めて装着したアーマーを扱いきれないロックは、自分の意志とは裏腹に猛スピードでカニの群れの中に突撃していく。

 手にした刀を振るう間もなく突っ込んだロックは、ボウリングのピンの様に子ガニ達を次々と吹き飛ばしていく。

 ガンガンと派手な金属音を立てながら吹っ飛んでいく子ガニは周りにいる別の子ガニを巻き込んでいき、彼の通って行った後は一本の広い道が出来上がる。

 何とかして止まろうと体をあちこちひねり、最後に止まれと声を出した時、拍子抜けするほどあっさりと止まったためロックは着地に失敗、前のめりにすっこけていった。


「ロ、ロック。大丈夫かい?」

「だい、じょーぶ!」


 コーラルの目の前で停止したロックは、彼に一言答えるとその場で跳ね上がるように起きた。

 足の裏のユニットの効果で身体は浮いたまま、相変わらずロックは足のおぼつかない浮遊感を感じていたが、なぜかロックは先程よりも自然に振る舞える感じがした。

 その時ふとある事に気がついたロックは、自分の考えが合っているかを確かめようとした。

 左腕に意識を集中すると、自分が元から装備していたAPRを思い浮かべる。

 すると彼のアーマーの左腕の一部が変化して、ロックのAPRと融合した様な砲口が腕の上部に現れた。

 自分の考えた通りにアーマーが可動する事を知ると、ロックは今までの出来事を理解する事が出来た。

 装着者の思考を受け取って行動のサポートを行うイメージ・ダイレクトサポート・システム。

 このアーマーにはその機能が搭載されているようだ。

 ロックが現場に駆け付けようとした時にギミックが発動して、暴走するように前進してしまったのはこのシステムのためだった。

 アーマーについていくらか分かると、ロックはすぐいつもの調子に戻った。

 元々SボードなどのRUの扱いを得意としているので、多少操縦の規格が違っていてもRU。

 使い方を知った事で彼は自分の得意な戦い方を行える事に、先程までの落ち込んだ気分を全て拭い去っていた。

 左腕のAPRを構えると機銃モードに設定してから、自分達とジャナン達の間にたむろっている子ガニ達に向かって撃ち出した。

 発射された弾丸は、いつも使用している威力設定以上の破壊力を持っており、高速で撃ちだされる弾丸は子ガニの群れを文字通り粉砕していった。


「うわ!すごい攻撃力!?」

「ニャんだコレ!出力の増幅でもしてるんか!これじゃまるで機関砲だな」


 子ガニを粉砕したAPRの威力にコーラルとロックはそれぞれ感じた事を声に出す。

 そして間を隔てていた子ガニがいなくなった事で、ジャナンとミリーもロック達と合流する事が出来た。


「二人とも、大丈夫でしたか?」

「若、どうも申し訳ございませんでした!若をお守りする役目を受けながらこの始末、誠にもって……」

「ジャナ、話が長い。……っ、若、後ろ!」


 ミリーの声に全員が振り向くと、背後から大ガニがハサミを振り上げ全員を叩きつぶそうと構えていた。しかしその動きに反応していたロックとリカルは、それぞれ左腕を構えると、同時に大ガニのハサミと腕のつけ根を狙って攻撃した。

 大ガニ本体に比べて比較的強度の弱い関節を集中的に狙われたためその部分が破損、ハサミが大ガニの身体から離れて大きな音と共に床に落ちた。

 APRで攻撃をしながらロッドを取りだしたロックは、右手にそれを持つとそのまま早口で始動呪文を紡いでいき、カニのハサミを落としたのとほぼ同時に呪文を完成させるとロッドを高く掲げ、魔力増幅のパワーワードと起動呪文を唱えた。


「真なる力の解放を!P-UPポテンシャルアップ!」


 ロッドの先から薄い膜の様なものが出てきてロック達を包み込むと、全員身体に軽い電流が走った様なピリッとするものを感じ、それが収まった時身体のそこから力がわき上がってくるのを感じていた。


「全員の傷の治療や回復はオレの力じゃ時間がかかるから、代わりに身体能力を向上させといた。これで一気に決めてください」


 全員の能力を引き上げたロックは大きく飛び跳ねるとコーラル達の頭上を飛び越えて先頭に着地、粒子波動刀の発振機から刃を発生させるとそのままPRSで加速して大ガニの下に駆けていき、すれ違いざまに一閃。

 カニのボディに斜めの深い切り傷をつけるとそのまま後ろにいる子ガニを倒しに群れの中に飛び込んでいった。

 ジャナンとミリーは後ろの子ガニを抑えるために壁となり、コーラルとリカルは同時に大ガニに攻撃を始めた。

 ロックのかけた魔法は五人の身体の潜在能力を存分に引き出し、連戦でたまっていた疲労感などはほとんどなくなり、身体の動きもいつも以上に軽く、まるで身体に羽根が生えた様な気分を感じた。

 長引く事でまたカニに形勢を変えられる事を考えてか、リカルはコーラルと共に積極的に大ガニを攻め込み、ロックも子ガニを倒しながらもAPRで援護の攻撃を行った。

 ロックが斬りつけた側面に回り込んだリカルは、むき出しになった内部電装系めがけて電磁砲の弾を叩きこむ。

 身体の内側を抉り取られ、カニはその身を身悶えさせる。

 それに合わせてコーラルが反撃のスキを与えない様にスタッフでカニを打ちすえる。

 カニは残ったハサミをぶんぶんと大きく振り回しながら酸性の泡を目の間から吹き出し、必死の抵抗を見せていた。

 コーラルはカニから一度離れ、リカルはカニの頭を越えるほどに高くジャンプをすると電磁砲を構え、目の間の泡の吹き出し口を狙って引き金を引く。

 ところが電磁砲から弾丸射出用の電気が発生しただけで肝心の弾が出てこない。先程からの戦闘で砲弾を全て使い切っていた。


「うわ、しまったー弾切れだ!ロック、何とかならない?」

「ふざけた事言ってんじゃねえよ全く、少し離れてろ!」


 インカムでリカルからのSOS通信を受けたロックは、あきれた声と怒鳴り声の混じった返事をしながらも彼女をその場から遠ざけると、自分の周りにいる子ガニを粒子刀で切り刻んでからロッドを手にする。

 そして力を頭にイメージしながらロッドを大きく頭上に構え、勢いをつけて一気に振り下ろした。


「落ちろ!サンダークラッシュ・ボム!」


 ロックの放った魔法の雷は、始動呪文を省いて発動させたため先程使った時よりは威力は弱かったが、カニの泡の吹き出し口を破壊して傷ついたカニにダメージを与えるには充分だった。

 大ダメージのため動きのぎこちなくなったカニを視線に捉えながら、リカルは機能を変更させた電磁砲を構えながら始動呪文を唱える。

 砲口に魔力が集まり魔法が完成すると、カニをターゲットにしたまま砲口を下に向けた。


「水晶の最強魔法、味わってみな!クリスタル・フォルテシモ!!」


 彼女が発動させた魔法の光は大ガニめがけて一直線に床の上を走っていく。

 その魔法が大ガニに届いたその瞬間、圧縮されていた魔法が解放され水晶の杭がカニを突き貫いた。

 更に杭が砕けた時、その魔力がカニを包んで、水晶の柱の中にカニの巨体を閉じ込めてしまった。


「よっしゃ、コーラル兄さん!最後キメちゃって下さい!」

「さんざん苦労したんだから、これで終わりにしちゃってよ!」


 ロックとリカルの二人の言葉に押され、杖を構えたコーラルはSスケートで床を大きく蹴ると大ガニめがけて走りだした。

 オーラの力を充分に込められ青い輝きを放っている杖を頭上に振り上げると大きく飛び跳ね、クリスタルに包まれた大ガニの目と目の間の部分めがけて思いきり振りかざした。

 杖に打ちつけられたクリスタルはその場所からひびが入っていき、それはどんどんと拡がっていく。

 そしてクリスタル全体にひびが入ると、クリスタルはその身の中に閉じ込めていた大ガニと一緒に粉々に砕け散った。

 砕けたカニとクリスタルが空中に舞い、ロック達のライトの光に当てられキラキラと星くずの様に部屋の中で輝いていた。

 大ガニを倒すと残っていた子ガニ達は動きを止めたが、再び動き出したかと思うと列を作りだし、そしてそのまま何列かに別れると列をなして部屋から出ていった。

 その光景を全員が何とも言えない不思議な物を見る様な目で見ていた。


『実践テスト終了。登録希望者の実力判定完了。資格を受けるに値すると判断、希望者にユーザー登録を

行う。希望者は両手を上に上げる様に』


 子ガニ達が全て部屋から出ていった瞬間、初めに聞こえた声がまた聞こえてきた。

 コーラルは声に従い両手を開いてそのまま頭上に手を持っていく。

 するとどこからか青白い色のレーザー光線が、コーラルの両手に向かって照射された。レーザーがコーラルの両手をなぞっていくのを、彼とそのお供の二人は固唾を飲みながら見守り、ロックは珍しい物を見れた事に喜びの表情を浮かべてそれに見入り、こっちの方に元々興味の無かったリカルは一人周囲に異常が無いかを見回っていた。コーラルの手を隅々まで走った後、何の前触れもなくレーザーが消える。

 終わった事を確認したコーラルはゆっくりと両手を下ろすと自分の手をまじまじと見つめた。


『ユーザー登録完了、施設の使用を許可する。本施設は重要物品の保管庫となっている。今後は品物の保管、引き出しをユーザーが自由に行える』


 声が話終わると同時に、入ってきた扉が開かれる。

 その瞬間全員が試練の終了を感じ、皆から一様な安堵感が発せられた。

 リカルがロックに歩み寄ると、彼も彼女に気付いて振り向き、それぞれ互いに手を頭の上にかざすとそのまま相手の手のひらにハイタッチをした。


「大変だったけど、何はともあれプレートが手に入るわね」

「ああ、オレも個人的に恩を返せたし良い終わり方だな。それにしても……」


 試練を達成したコーラルに祝いの言葉をかける二人とそれを受けて謙遜しているコーラル達三人を見ながら呟いたロックの言葉に、どうしたのとリカルが問いただしてくる。

 ロックは両手を頭の後ろで組んで背筋を伸ばすと、目元を少しつり上げた。


「結局オレ達、とっつぁんに良い様に使われたわけだからな。そこがどうしても面白くねえや」


 そう言ってからロックは、喜びムードの漂う三人の所に向かってそのままの体勢で歩き出した。

 リカルが彼の後ろ姿を見ると、ゆっくりとだが大きくシッポが振られており、彼がチャンジャに対して今感じている感情を表していた。


「ま、わかるけどね」


 そう一言呟いてから、リカルも出口に向かって歩き出す。

 途中ですれ違う四人に早くプレートを手にしようと声をかけると、彼女は一番に扉をくぐる。それを見た残りの四人も急いでその扉をくぐっていった。


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