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F/A フリーダム/アドベンチャー  作者: 流都
第二話  DIVING TO THE ADVENTURE
16/123

4th ACTION 第一の試練

 扉が重い音を上げながら、真ん中を境にゆっくりと左右に開いていく。

 扉の先には薄暗い空間がぽっかりと口を開けている。生体認証システムに置いていた手を離したコーラルは後ろで見ていた人達を見て力強く頷いた。


「これが入り口。あなた達の探しているプレートは一番奥の祭器の保管庫にあるはずです」

「何だか簡単に開いたわねー。これだったらやっぱりアタシ達だけでも充分じゃなかったの」

「だから人の土地の物を壊すような事しちゃダメだっての」

「それにそんなに簡単には行かないですわよ。この遺跡の中の扉は全部この扉と同じ仕掛けで、コーラル

様達特定の人達で無ければ自由に開ける事は出来ないのですから」


 無理やり開けていたら時間がかかると、リカルを一瞥しながらミリーは言葉をまとめた。

 扉が完全に開いた事を確認してから、一行はコーラルを先頭にして遺跡の中に入って行った。

 土や岩で作られていた人工島の外見と違い、遺跡の中の通路は一面金属で覆われていた。

 遺跡によくつかわれているこの金属は、腐食しにくく使用耐久も高いという事が、冒険者達が持ち帰った物を研究されて判明したが、どの様な物質を精製する事でこれが作られるのかは今も研究中である。

 真っ暗な通路を、コーラル達三人は肩に付けた小型のライトで、ロックとリカルはインカムメットに取り付けてある更に小さいライトを使って先を照らしながら進んでいく。

 先頭を歩くコーラルは正面を見据えてわき目も振らずにただ真っ直ぐと歩いていく。

 緊張している事がその後ろ姿から漂っていて、明らかに力みすぎている事がよくわかる。

 そのすぐ後ろを歩いているロックは、あっちこっちとせわしなく遺跡の中を見て回っており、コーラルとはまるで対照的な態度だった。

 頭に装備しているインカムにライトがついているため、ロックが顔を向けると光もせわしなく遺跡の中を駆け回り、ロック以外の人達の目にその光景がいやでも入ってくる。


「ちょっとロック、やたらといろんな所に光が当たってうっとおしい。前だけ見ていてくれない!?」

「あー、ゴメン。それ無理」


 ロックの行動が邪魔に感じてきたリカルが、ロックに対して一言いうが、ロックは短く答えると取り合おうともせずに周りを見続けている。


「子供じゃないんだから、もうちょっとどっしり構えて落ち着きなさいよ!」

「そこまで大人じゃないし、こんなすごい物落ち着いて見るなんて出来ねぇよ!」


 今度は少し声のトーンを落として話してみたが、ロックはその言葉をかわして自分のやりたいようにしている。


「ホント、馬鹿なんだから」

「なに言ってんだ。冒険者ってそういう生き物だろ?」

「ん?ちょっと今のは聞き捨てならないわよ」


 ロックの奔放ぶりを見たリカルは、つい小さく本音を漏らすが、それを耳ざとく聞いていたロックは、笑いながら彼女に返事をした。

 しかしその言葉を聞いたリカルは、ムッと表情を曇らせるとロックの襟首を掴んで自分のそばに引き寄せた。ロックは何がどうなっているか分からないといった様に彼女の顔を覗き込んだ。


「ぐぇ!ニャンだよ、オレ何か変な事言ったか」

「あのね、冒険者が全部アンタが言ったみたいな連中ばっかだったら、職業として成り立たないでしょ!大体そんなのばっかりじゃ真面目に仕事している他の冒険者が救われないわよ!」

「いや、そんなこと言っても冒険なんて元々商売でやるもんじゃないだろ。好きにする事が出来なくちゃ面白くないじゃん」


(……遺跡の中でよくあんな喧嘩が出来るな。しかも話が飛躍してやがる。ホント冒険者って訳がわかんね)


 ムキになりながら言葉を浴びせてくるリカルと、その言葉をのらりくらりと受け流すロックのかけあいを、ジャナンは内心あきれながらも、無表情でみていた。

 他の二人も前を見ながらだが聞こえてくる会話を耳にしては、コーラルはこんな所でよく喧嘩が出来るなと変な感心をしており、ミリーはそのやり取りを聞いて思わず笑いそうになっている所を我慢していた。

 それぞれ言い合っていた二人だが、不意に耳をピンと立てると、一瞬で体をひるがえし通路の先の方にじっと目を凝らした。

 二人の突然の変わりように戸惑う三人。彼らを無視して話をする二人。


「いるわねこの先、かなりの数のガーディアン」

「仕掛けの解除とか、知恵試しみたいなもんかと思ってたけど、いきなり戦闘から入りますか」


 この二人の会話を聞いていた三人のうち、一番早く我に返ったコーラルは一人小さく声を上げた。


「この先が第一の試練の大部屋です。ここは何とか超える事は出来たのですが……」

「大部屋か。道理でガーディアンの足音がたくさん聞こえてくるわけだ」

「十か二十か、それ以上?とにかく簡単にはいかないって事だけは確かね」


 全員が示し合わせたように頷きあうと、彼らは通路を一直線に走りだし、大部屋の手前の角の所までやって来た。

 コーラル達三人は角の壁から、ロックとリカルは大部屋に入る道を越えてコーラル達と反対側の壁から大部屋の中の様子を伺った。

 部屋の中には銃と剣を持ったガーディアンが複数歩いており、さらに闇の深い所には、暗くてよく見えないが別の装備をしたガーディアンが歩いているのが見えた。

 部屋の中を伺ったジャナンは、戦闘組である自分達より先にガーディアンの存在に気づき、更にその先の状況の推論も行った二人を見ると、いまいち頼り無い年下という、自分の持っていたイメージを変えざるをえない事を思い知らされた。


「結構いるわね。ねえ、ここはどうすればいいの」


 ロックの頭の上に顎をのせながら、リカルは道を挟んだ隣のコーラルに試練の内容を聞く。

 ロックも話を聞こうと自分の耳を立てるが、耳にかかるリカルの吐息を意識してしまい、なかなか集中することが出来ない。


「ここでは鍵を見つけて扉を開ければ攻略です。一度攻略すればこの部屋のガーディアンは、この遺跡を出るまで機能を停止します」


 コーラルからの説明を聞いたリカルは、ふうんと小さく唸るとまた部屋の中を見る事に集中した。

 その時、頭にぴったりとくっついて動かないリカルに我慢の限界を感じたロックは、思い切ってリカルに声をかけた。


「ちょっとリカル、頭が重いからどいてくれないか。耳元で喋られるのもうるさいし」

「ん?別にそんな大声で話しているつもりはないけど」

「そうくっつかれると気になってしょうがねぇんだよ。とにかくどいてくれ!」

「ふーん。そんな風に言われると、素直にどいてあげたく無くなるなー」


 そう言うとリカルは、ロックの頭にのしかかるように体重をかけると、彼の耳に息を吹きかけた。

 突然の不意打ちを受けたロックは小さく身震いをして、思わず声が出そうになった口に手を当てて声を上げるのを防いだ。


「何しやがる!見つかったらどうするつもりだ!」


 小声でロックはリカルに怒鳴りつけたが、彼女は全く意にも介さずにいる。


「おいお前ら、ふざけてんじゃねえぞ」

「全く、ついてくるなら少しは働いてほしいものね」


 その二人のやり取りに、流石にカチンときたジャナンとミリーは口々に文句を言ってくる。

 元からあまり手伝わない事を伝えていたロックは特に気にも留めなかったが、リカルはその言葉を聞くと少しの間考え込む。

 と、何かを考えたついたリカルは、ロックの耳元で彼の名前を小さく囁くように呼ぶ。

 くすぐったい声で呼ばれた彼がなにと少しいらついた声で聞き返すと、リカルはロックの耳の根元に顔を近づけ、彼の耳たぶを甘がみして、さらに舌で舐め上げた。


「ふひゃああ!」


 今まで耳に感じた事のない刺激を受けて、ロックは思わずシッポの毛を大きく逆立てながら悲鳴を上げてしまう。その声に反応して、大部屋の中のガーディアンが一斉にロック達の方を見てきた。


「いきなりなんて事しやがるんだ、このバカ女!!」

「そんな事より来るよガーディアンが!」

「あらら、こうなった責任はとらないとね?ロック」


 リカルの言葉を聞いたロックは、彼女の思い通りにしてやられた事に気がつくと、畜生と小さく呟いてから、腰の後ろにくくりつけていた杖を取り出すと、手で引き延ばして両手で構えた。


「ガーディアンは全部引き受けてやるから、コーラル兄さんは扉をお願いします。リカル、お前も手伝え!」


 ロックの声に了解と答えたリカルは、右手に魔力を付加したコンバットナイフを持ち、左手には圧縮した空気の弾を打ち出す空弾銃を装備して、すでに戦闘態勢を取っていた。

 それを見たロックは軽く頷くと、彼女と共に隠れていた壁から飛び出し、ガーディアンの群れに飛び込んで行った。

 大部屋から通路に向かって多数のガーディアンが移動してきて道をふさいでいる。

 それらの群れにリカルは空弾銃を撃ち込んで一体一体倒していき、ロックは杖をしっかりと握りしめると早口で魔法の呪文を紡いでいく。

 リカルが銃弾を撃ち尽くしたところでロックが前に出ると、杖を目の前に突き出しその力を解放する。


「なぎ払え!プロントサンダー!!」


 構えた杖の先から何本もの稲妻がはしりガーディアンに向かっていく。

 それがガーディアンに突き刺さると、彼らの金属の体は粉々に砕け爆発。

 さらに後ろに控えていた他のガーディアン達をその爆風が通路から吹き飛ばし、大部屋の中に押し戻した。

 倒れたガーディアンにとどめを与えながら、二人は部屋の中に飛び込んでいく。

 すると同時に壁の影から剣を構えたガーディアンが数体、二人に向かって飛び込んでくる。

 大ぶりに剣を振りかざして、その切っ先を二人に叩きつける。

 しかしその動きに気づいていた二人は剣が振り下ろされる前に上に飛び上がり彼らの攻撃をかわした。

 攻撃をかわされ、地面に空振りをした彼らが体勢を立て直す前に、リカルは空弾銃で、ロックは左腕に付けている手甲型の携行型電磁弾砲、APRアームドプラズマランチャーで彼らを打ち抜いた。頭上から銃弾を浴びせられ完全に機能を停止した彼らの上に着地した二人は、すぐに体勢を整えるとそれぞれ別のガーディアンの群れの中に飛び込んで行った。

 襲いかかるガーディアン達を、リカルは相手の間合いより早く懐に飛び込んで、ナイフと銃を使って一体一体確実に倒していく。

 一方ロックはAPRと魔法を使い距離を取りながら戦い、近づいてきたガーディアンは杖と体術で動きを止めてからAPRで倒していった。

 その二人に少し遅れて部屋の中に入ったコーラル達は、その光景を見てただ驚いていた。


「すげえ!あの数に一人ずつであたってもどっちも引けをとっていない。やはり冒険者ってのは伊達じゃ無い様だな!」

「何にしろ今のうちです。コーラル様、早く鍵を探しに行きましょう」


 ジャナンとミリーに促されたコーラルが走りだそうとした時、別の場所から三体のガーディアンが走り込んできた。

 それに気がついたジャナンはコーラルの前に、ミリーはその隣に立った。

 近づいてくるガーディアンに正面から近づいたジャナンは、右手に持っている電磁アックスを力任せに横なぎにしてガーディアンの一体を粉砕。

 ミリーは大型のレーザーソードで頭から真っ二つに切り裂き、コーラルは打撃戦用に作られた、ロックの物とは違う種類の杖を両手に持った。

 杖に力を込めると杖の先に薄青の光が集まりだす。

 そして杖の先が光で包まれたのを確認してから杖を構えると、彼は下から杖を振り上げてガーディアンの体を下からすくいあげ、そのまま高く上へと打ち上げ飛ばした。


「よし、これ以上あの二人に負担を掛けたくない。早く探しに行こう!」


 そう言うとコーラル達は壁際の坂道から上に登り、鍵を目指して走り出した。

 その光景を目の端に捉えたロック達も、足止めに専念するために気合を入れ直してガーディアンの群れを睨みつける。

 その時天井付近から、ガンと甲高い音が響いた。一瞬の事だがその音を聞き取った二人が上を見上げると、何かの塊が空から降ってきて、地面にガシャンと叩きつけられた。


「な、何だぁ」


 いきなりの闖入者に驚いたロックがそれに目をやる。

 それは先程コーラルが天高く打ち上げ、その時に壊れたガーディアンの残骸だった。

 目の前のガーディアン達と戦っていたロックはそんな事を知る訳がなく、どうしてこんなものが空から降って来たのか訳が分からなかった。


「ロック!」


 リカルが発した鋭い一声に我に返り前を見ると、自分の一瞬の隙を見抜いたガーディアン達が大挙してロックに襲いかかって来た。

 慌てて構え直すロックの耳に、ヒュルルルと何かが高いところから落ちてくるような風を切る音が聞こえてきた。

 前に気を配りながらすぐ上を見たロックは、次の瞬間顔を青くしてすぐにリカルにそこから離れる様に怒鳴り、自分もその場から後ろに下がった。


 ガッシャーン!!!!


 一瞬の間を置いてから、天井から降って来たものは、ガーディアン達の真上に落下。

 彼らの大半はよける事も出来ずに直撃を受け、見るも無残に壊された。

「ちょ、今度は何よ!?……って、うそでしょ?」

 上から降って来たものを見たリカルは、それを見て唖然とした。それは部屋の上空に渡されていた橋の部分の通路だった。

 高く打ち上げられたガーディアンがぶつかった時、当たり所が悪かったようで、通路の一部が崩れて落下してきた。

 ロックの気づくのがもう少し遅かったら、二人があのガレキの下敷きになっていただろう。

 その光景を上から見ていたコーラル達は、下で固まっている二人を見ながら走っていた。


「あれはやっぱりさっきのアレのせいかな」

「アレ以外何があるってんですか!若がガーディアンを打ち上げたりなんかしなきゃこんなことにもならなかったでしょうに!」

「いやだって、あのときはあの方法が倒しやすかったからさ」

「とにかく!これ以上厄介なことになる前にこの試練を攻略しましょう!」


 会話をしながらも道を阻むガーディアン達を倒しながら進む三人。

 コーラルは心の中で二人に謝りながら先陣を切って走り、後の二人もそれに続いて道を駆け、そうして一行は、部屋の一番上の方までたどり着いた。


 吹き抜けになっているフロアーには、たくさんの通路が網の目状に走っておりクモの巣を連想させる。


 そしてその通路にはいくつかの箱が置いてある。

 鍵はその箱のどれかに入っている。

 三人はそれぞれの通路に散らばると、そのまま一気に箱を開けていった。

 一方、数が減ったとはいえいまだ健在のガーディアン達と睨みあいをしているロック達。

 ガレキの山を乗り越えてきた所を攻撃するため二人はそれぞれ銃を構えて集中している。

 ところがガレキの上に立ったガーディアンは、急にその場で立ち止まると上を向いて何かを探す様に頭を動かし始める。

 そしてその行動は他のガーディアン達にも伝わり、あっという間に全てのガーディアン達がその場に立って上を見上げ出した。

 不審に思った二人も一緒に上を見ると、一番上の通路を駆け抜けるコーラル達の影が見えた。

 箱を開けて回るコーラル。

 いくつかの箱を開けていくと、小さな小箱の入っている箱があった。

 小箱を取り出したコーラルがその蓋を開けると、小さな金属のカードキーが入っていた。

 これこそが探していた鍵である。小箱の中のそれを慎重に取り出すと、コーラルは右手でギュッと握りしめる。

 それが合図になったかのように、下にいたガーディアン達は腕を天井に突き上げると、腕部に装備されている銃でコーラルに向かって一斉に攻撃を開始した。

 無数の銃弾が下から飛びかかり、天井と通路に傷をつけていく。

 下からの突然の攻撃に慌てふためきながら、それでもコーラルは何とか正気を保つと、弾に当たらないように体を屈めながら走りだし、何とかこの部屋から出ようとした。

 ミリーとジャナンもその状況に気づいたが、下にいるガーディアンからも一人でいるコーラルからも遠い位置にいる二人は、すぐに救援の行動をとることが出来なかった。


「こいつらー!」


 そのガーディアン達を止めるためにロック達も攻撃をするが、そのロック達を止めるためにガーディアンの群れの一部が彼らに襲いかかって来る。

 数こそは大したことは無いが、二人の周囲を取り囲み、さらに波状攻撃で二人に息つく暇を与えない。


 そのため勢いに押しこまれた形のロック達は、互いに背中合わせになりながら多数のガーディアンを相手にする体勢を取らされてしまった。


「これってちょっとヤバいんじゃない?」

「そうだよな。どうしよう?」


 リカルの言葉に口では同意しているが声がそうではないロックに気がついたリカルが、前に構えたままそっと後ろを向いて彼の横顔を見ると、彼の口の端は笑みでつりあがり、鋭く見ひかれている目には怪しい光が光っていた。

 それはリカルがロックとプレートをめぐって戦った時見せた、危険を前にしてなおその状況を楽しんでいる表情だった。

 いつ見てもやはりいい感じのしない表情だが、今はそんな事を言っている場合ではないと気を引き締め直して、リカルは前に向き直った。


「リカル、お前はそのまま前の相手を叩いて囲みに食い込んでくれ。オレも後から手を貸す」


 そう言うと同時にロックはAPRの弾丸を榴弾モードに変えてから、正面のガーディアンに攻撃を行う。

 圧縮したプラズマの榴弾がガーディアンに当たると、解放されたエネルギーが周りの連中を巻き込んで爆発する。

 リカルもロックに合わせて自分の正面のガーディアンに突撃する。

 今度は格闘戦用に両手にナイフを持ち、多少ガーディアンからの攻撃を喰らうのを覚悟で囲みの中に入り込んでいく。

 縦に横にとガーディアンを切り伏せながらガーディアン達の中に入り込んでいくが、彼らもそれに対し仲間を集めてリカルの道をふさいでいく。

 それでも包囲網を抜け出そうと頑張るリカルだが、一人ではやはり無理があり、徐々に前進するスピードが落ちていく。

 状況が変わったのは、ガーディアンの群れに阻まれてリカルが足を止めてからだった。

 三体のガーディアンに行く手を阻まれ進めなくなった時、後ろから伏せろとロックの声が聞こえたのですぐに言われたとおりにすると、彼女の頭の上を光が横一閃に走る。

 すると目の前のガーディアン達は胴体の上と下を真っ二つに切られてその場に崩れ落ちた。

 すかさず立ちあがったリカルがその残骸を弾き飛ばすと間髪を入れずにロックが前に飛び込み、手にしている粒子波動刃で更にガーディアンを斬っていき、リカルもロックの後に続いていく。


「もう切り札出したの?随分とあっけないわね」

「この状況じゃ仕方ないだろ、とにかく早く抜け出さねえと!」


 ロックに追いつき、彼の隣でリカルはまた構え直すと、二人はさらに勢いをつけてガーディアン達の包囲を突きぬけ、銃撃を行っているガーディアンたちに攻撃を仕掛け始めた。

 そうやって下でロック達が戦っていたため、コーラルに対しての攻撃は先程より弱くなっている。

 この機を逃さないよう三人は次の部屋への扉に向かって、上層部のフロアーを全力疾走している。

 そしてフロアーの端まで来たところで、三人は床を大きく蹴りつけるとそのまま飛び出し、三十メートルほど下にある扉めがけて飛び降りていった。

 落ちていく時も多数の銃撃にさらされたが、ガーディアンの包囲網から抜け出したロック達が文字通りガーディアン達をなぎ払い、彼らへの攻撃を妨害していたため初めの時ほどの勢いは無くなっていた。

 同時に二人は前に駆け抜けてその三人との合流を果たそうとする。

 残ったガーディアン達は執拗に彼ら五人に対して射撃を行い、地面を走っているロックとリカルはそれに対して応戦しながら扉へと急ぐ。

 ダンッ、と大きな音と共に地面に着地する三人。

 装備しているCAのおかげで高所から落ちてもケガは無かったが、着地時の衝撃で三人とも足がしびれて動く事が出来なかった。

 それでも狙い通り、扉の前のカードスリットの前に着地したコーラルは、足のしびれに耐えながら先程手に入れたカードを手にすると、機械にカードを通してから手のひらをスリットの隣の認証機に押し当てた。

 するとピーと高い音と共に鍵が解除され、扉が左右にスライドして開いた。

 扉の中に入ろうとしびれる足を引きずる三人。その三人の腕をロックとリカルがそれぞれ掴むと、五人は倒れ込むように扉の中に飛び込んだ。

 扉が閉まると同時に銃弾が扉に当たる音が聞こえたが、それもほんの少しの事でその後は静寂が辺りを支配した。

 五人とも、息をひそめてその場から動く事は無かったが、扉に変化が無い事が確認されると、誰かが小さく安堵のため息をついた。


「どうにか、切り抜ける事が出来ましたね!」


 コーラルが声を発すると同時に、それぞれが緊張させていた神経を緩めてその場に座り込んだ。


「あー驚いた。まさかあんなにたくさんのガーディアンが襲ってくるなんて思わなかった。凄かったねロック」


 そう言ってリカルはロックの方を向いたが、ロックはそのリカルに腕を伸ばすとむんずと彼女の胸倉を掴み、顔を真っ赤にしながら彼女を大きく揺さぶった。


「一番驚いたのはオレだ!いきなりあんな、へ、変な事しやがって!おかげで無茶苦茶苦労したじゃねえかよ!よりによって正面からぶつけやがって!」


 逆立ったシッポをそのままに牙をむき出しにしながらロックはさらにリカルに言いより、リカルはその目を見ない様にそっぽを向いて笑っている。

 コーラルがロックをなだめ、ジャナンがその手を外そうとしていたが、不意にジャナンがリカルにこっそり耳打ちを始めた。


「しかしよくやるよな。手伝わないって言っている奴を当事者に仕立てて無理やり大変な方を割り当てさせるなんて、おめえも悪い奴だぜ」

「ま、嫌がる相手を働かせるにはそうせざるを得ない状況を作ればいいだけだからね。アイツには悪いけど動いてもらわなきゃ大変だったから」


 そう言うとリカルはジャナンに向けて片目を軽くつぶって得意げなウインクをする。

 ジャナンもそれを見て軽く笑い、感情が高ぶっていたロックはただ一人、そこまで洞察することが出来ずに支離滅裂な言葉と共にリカルに掴みかかっていただけだった。

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