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F/A フリーダム/アドベンチャー  作者: 流都
第二話  DIVING TO THE ADVENTURE
15/123

3rd ACTION『約束は果たさないと』

「お、なかなかいい装備じゃない。結構それっぽく見えるわよ」


 着替えて出てきたコーラルの姿を見たリカルの第一声がそれだった。

 ロック達に同行することにしたコーラルはその事をロック達二人に告げると、装備を取りに一旦家に戻り再び二人の前に姿を現した。

 彼の服装は、大型の魚類のうろこを重ね編んで作られたインナースーツの上に、藍色の染料で染め抜いた陣羽織というこの島伝統の戦闘服で、さらにその上から薄紫色のCAコンバットアーマーを装着していた。

 CAとは生身で高速機動戦闘が行えるように開発されたLost以前のメカニカルアーマーで、人間がガーディアンやRUと対等に戦うために用いられている。

 コーラルのアーマーは胸部と腰部を本体とし、それに各種オプションとなるパーツを装着するシンプルな物で、彼は手首と足首、肘と膝にパーツをつけ防御力と機動力を重視したタイプとしてある。


「馬子にも衣装って言うけど、それなりに冒険者っぽいわねー」


 そうリカルが評するコーラルは、シャチ族特有の白と黒のモノクロ肌に闇で染めたかのような透き通る黒髪、それを父親を真似てオールバックにしている。

 スラッとしている体型を先ほどの装備でピッチリとまとめているその姿は、冒険者らしいかどうかは置いといて、かなり彼に合っている姿だった。


「へー、ティンパルタイプのCAか。拡張パーツで性能を変えれるのが特徴だよね、高かったっしょ?」

「ううん、のみの市で買った中古品。だから性能もそれなりなんだよね。パーツも探索用のヘッドイヤーと飛行用のバーニアしかなくって」

「それでもCA扱えるなら一端の冒険者でしょ。アタシも大きな探索の時にはアーマーを使うからね。このアーマーがまた自分で作ったものでね……」


 コーラルのアーマーの話からリカルのアーマーの話に話題が移りそうになった時、チャンジャが二人のシャチ族の男女を連れて三人の所にやって来た。


「講釈してる所で悪いがよ、出発の準備はできたか。出来たならこっちの連中と顔合わせさせときてぇんだがな」

「んー、そちらの人達どういう人達?」

「おう、ミリ―とジャナン。手伝いと言うか、雑用係とでも思ってくれや」


 紹介を受けてシャチ族の女性ミリーと、トド族の男性ジャナンはロック達にそれぞれ軽く会釈を交わした。


「要するにお目付け役ね。まあ自分の孫を預けるんならその位したくなるわね」

「爺さん、わざわざ人を増やさなくてもいいのに。大体そんな事をしたらついてきてくれるロック達に悪いよ」

「え、何か勘違いしてない。オレは別に何も手伝わないぞ」


 リカルとチャンジャの会話に入って、コーラルはそこまでしなくていいと意見を述べたが、自分に手を貸さないというロックの言葉を聞いた時彼は驚いた風にロックを見て、その理由をたずねてみた。


「だって元々コーラル兄さんの受ける試練だろ。よっぽどの時ならともかく、初めからオレは手を貸すつもりはなかったから」

「そりゃ確かに道理よね。でも便乗するんだったら少しぐらい手間賃代りに働いてもいいんじゃない」

「いや、おいらはやるとは言ったがどうにかしろとは言ってねぇから、お前らがやりてぇ様にすりゃいいさ」


 揉めそうに思われた話し合いだったが、チャンジャのその一言でこの件についての話はついた。

 コーラルはまだ少し納得のできない所があったが、ロックの言葉も正しいので言い返す事も出来ず、結局のところはロック達には彼らのしたい様にさせる事にした。


「心配しないの。いざとなったらちゃんと助けに入りますから」

「そうそう、いくら何でもケガさせたら元も子もニャいから、そこら辺は当てにして下さい。さて準備出来たら行きましょうか」


 そう言いながらロックは着ていたジャケットを脱ぐと、裏地を表にして改めて袖を通した。

 彼の黒いジャケットの裏地は炎を連想させるほどの赤色で、普段遺跡の探索に潜る時や戦闘を行うときには隠密性に優れた黒色を使う事が多いが、多人数での探索や明るい場所での行動時は目立つようにこちらの赤色を使う。

 着替えを済ませたロックは、これから危険な所に行くにも関わらずに無邪気な顔で笑うと、そこにいる人達に向かって音頭を取った。


「おーし、それじゃ遺跡に向かってしゅっぱーつ。ところで遺跡はここから遠いのですか」

「いいえ、すぐ底ですわ」


 ロックの質問に答えたミリ―は、そう言うと今立っている島の地面を指さした。


「遺跡はこの島の内部だ。そもそもこの島は遺跡の上に人が住めるように改造を行った人造島なんだ」


 彼女の言葉に合わせてジャナンも口を開く。

 それを聞いた時、頭をある疑問がよぎったリカルはすかさず彼らに質問をした。


「この島の下に遺跡があるなら、そこまでどう行くの?まさか潜っていくわけじゃないよね!?」

「ああ、確かに潜ってもいけますけど……」

「あちゃぁ、やっぱり。海を潜っていくなんてアタシできないわよ」

「オレだって出来ねぇよ。どうすっかなー」

「あの、ロック?別にそんなことしなくても……」


 いきなりの話でどうしたらよいか話をしているロックとリカルは、何かを言おうとしているコーラルをそっちのけで二人で相談を始め、もはや同行者の事などすっかり忘れていた。


「あ、そうだ、宇宙服。この間直した宇宙服使えば深海まで潜っていけるんじゃない」

「宇宙服?これの事か」


 そう言うとロックは腰の左側に付けている小さな長方形型の機械を手でポンとはたいた。

 リカルも軽く頷くと、自分の右の腰に付けている機械のスイッチを入れる。

 始動した機械は小さく唸りだし、それと同時に二人の姿がわずかにだがぼやけだした。

 これもLost以前の先史文明から伝わって来たもので、空気の微粒子を身体中にまとわせる事で酸素の無い場所での活動を行う事が出来る機械で、普通の機密服と違って全く重さを持たないためとても扱いやすく重宝されている宇宙服である。

 粒子の宇宙服を纏った二人は、そのまま海辺に走っていくと、海に向かって飛び込んで行った。

 ザブンと大きな音とともに水柱が二つ上がり、その後ろからコーラルたちが二人の飛び込んで行った水面を見つめていた。


「全く、私たちを置いて先に行くなんて何考えているのかしら?」

「待てと言ったのにガン無視しやがって、若、いかがいたします?」


 ジャナンに問われて、何とも言えないといった顔で水面を見ていたコーラルは、付き人の二人の顔をみて口を開いた。


「彼らと合流しないとどうにもならないし、私たちも入り口に向かおう。とりあえず約束は果たさないと」


 そう言うとコーラルは島の内側に向かって歩き出し、付き人達もそれについて歩いて行った。




 二人が飛び込んだ海の中は、上から二つの太陽の光が差し込み、澄んだ水の深い青色が広がっており、様々な海洋生物が群れを作って泳いでいる。

 少し海底にまで視線を向けると、底の方には先史文明やLost初期に存在していた文明の町がそのまま、海抜の上昇に合わせて海に沈んでいるのが見えた。

 その幻想的な景色に思わずロックは見とれていたが、頭に装備しているインカムからリカルの声が聞こえた事で我に返った。

 かなり深く潜った所で宇宙服の事を思い出して確認をしてみるが機械は正常に作動しており、息苦しさや被膜内部への浸水などのトラブルも発生していなかった。

 リカルの方を確認すると、彼女の方も大丈夫だとジェスチャーで合図を送って来たので、二人はさらに深く潜っていった。

 潜り続けてしばらく行くと、島の土台となる部分にぽっかりと穴のあいている所が見えた。

 そこから入ってしばらく行くと水面が見えてきた。

 先に水面から顔を出したリカルは、外の空間に酸素がある事を確認するとすかさず海から出てきて宇宙服の機能を切る。

 すぐ後に上がって来たロックに手を貸すと、ロックも彼女と同じように宇宙服を外した。

 次の瞬間複数の人の気配を感じた二人はすかさず気配のした方向に身体を向けた。そこにはコーラル達三人が遺跡の扉の前に立って、ロック達の方を見ていた。


「あれ、コーラル兄さんいつの間に、どうやって来たの」

「ろくに話を聞かないで先に行くからだよ。この島は人工島だから、上の方から降りてくる事が出来るんだよ」


 そう言いながらコーラルは一方を指差し、その方向を見ると上の方に伸びている階段が二人の目に入った。

 それを見た二人は声にならないといった感じで、お互いの事をジト目でにらみ合い、コーラルが二人をなだめるのに更に時間を費やすことになった。

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