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F/A フリーダム/アドベンチャー  作者: 流都
第二話  DIVING TO THE ADVENTURE
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1st ACTION 海の守護者(クエスト)

「いやあ、やられたやられた。まさかあんな風に来られるたぁ思わなかった、流石はハンター、冒険者と言ったところか」


 豪快な笑い声とともに響く話し声が部屋から外まで届き、ロックとリカルはその声の主と向かい合わせで座っている。

 海の村の村長らしく海の男といった雰囲気が出ていて、白髪の多い頭髪は後ろでまとめ、身体には年に似つかわない鎧の様な筋肉が服のそでから見えていた。

 先程は不意を突かれたためリカルに捕まってしまったが、彼自身は歴戦を潜り抜け、今なお現役の戦士というイメージを持たせていた。


「とっつぁんも悪乗りしすぎだよ、村人全員下げてオレ達の事試そうとするなんて」


 チャンジャのイタズラには慣れているロックも、流石に今回は口をとがらせて抗議をしてくる。

 チャンジャはガハハとまた豪快に笑うと、ロック達にお茶を勧めながら話を続ける。


「お前が冒険者として村を出たって話を聞いたからにゃあ、後継人の一人としては試してやらないとな。しかし」


 そこで一度言葉を切るとチャンジャは、出されたお茶を一息で飲み干し、自分でお代わりを淹れているリカルに目を向ける。


「仲間と一緒に来ると聞いてはいたが、まさかこんな可愛い女の子だとはな。で、何だ、その子はお前の嫁さんか」

「ぶっ、何言ってるんですか。彼女とはそんな関係じゃないですよ」


 飲んでいたお茶を軽く吹き出してから、ロックはチャンジャの言葉を否定するが、彼はただ笑って言葉を続けた。


「何言ってんだ、どうせいずれはそうなるんだろ。今からそう紹介しといてもいいじゃねえか。なあ嬢ちゃん」

「もう、村長さまったらお上手なんですから。こいつとはまだ、ただの恋人関係ですぅ」

「恋人も違う!てかなんだそのぶりっこな口調は」

「しかしとにかくめでたいことだ。河を渡って行ったお前の両親にも、いい報告が出来るってもんだろ」


 そう言われたロックは、二人を一瞥しながらキセルを取り出すと、レモングラスのハーブと乾燥させたオレンジの皮を混ぜた物を詰めて吸いだした。

 これはスモークハーブと呼ばれる民間医療法で、使い方さえ合っていれば子供も使っている、ごくポピュラーな方法である。

 ハーブを吸いながら、ロックはチャンジャに言われた事の意味を噛みしめていた。

 河という言葉には、物事を隔てるという意味の属性リーバという存在の意味も含まれている。

 そして先程言われた河を渡るとは、永遠の離別と言う意味が込められている。

 彼はロックの亡くなった両親に、ロックがそういう年頃になったという事が報告できる事がめでたいと言ってきたのだった。

 もちろんそれに気がつかないロックでもないので、彼の言葉に反論せずにだんまりを決め込んだ。

 ハーブを取り出したのはそれと気づかれないようにするための格好である。

 一方話を振って来たチャンジャはと言うと、話の波長が合うのかリカルと二人で話に花を咲かせていた。

 初対面のはずなのだが、どんな相手とでも一定以上の会話が出来る所が、ハンターとしてのリカルのすごさである。

 そのまま二人の会話をしばらく聞いていたが、チャンジャの話題は相変わらず自分と彼女の事に関することが多かった。


(しっかし、とっつぁんにしろレインさんにしろ、どうしてオッサンって連中は子供を冷やかしたりくっつけたがったりするんだろうなぁ)


 村の子供たちの親代りをしてきたロックであったが、彼自身このような親心が分かるまでには至っておらず、しきりに自分の事を話題にするチャンジャを見ては首をひねっていた。

 そうこうしているうちに、話は旅の目的であるプレートの事に移って行った。


「ふーん、つまりうちに伝わっているお宝をもらいたいって、そういうことかい嬢ちゃん」

「はいそうです。私の旅の目的を果たすためには、どうしてもそれが必要な物。出来ればゆずっていただきたいのですが……」

「あんなもんでよけりゃかまわねぇぞ。元々何に使うか分からんもんだったからな」


 思ったよりもあっさりと譲り受けれることになって拍子抜けしたが、それでも快く了解を得ることが出来たので、リカルとロックは笑顔でお互いの顔を見合わせ、ロックに至ってはリカルの手を掴んで喜んだ。


「ただ、やるのはいいんだけどなぁ」

「ん、ニャんだよとっつぁん、何か問題でもあるのか」


 チャンジャの言葉に反応したロックは、掴んでいたリカルの手を離して彼の方に身体を向け直した。

 一方リカルの方は、これ以上の空振りを掴まされたことが再三あったため、彼の言い淀んだ態度については特に身構えた反応は示さなかった。


「いやな、今それが手元にあればすぐくれてやってもいんだけど」

「やっぱりそうなりますか。まぁそれならそれで私たちが取ってまいりますけど。それでプレートは今どこにありますか?」

「ん、ああ、わしら守護者の一族に伝わる宝の中でも最も大事とされるものは、試練の洞窟と呼ばれる遺跡の中に収めてある。そのプレートは一番奥、守護者としての証をたてる部屋の中にあるんだが」


 そう話しながら空になったそれぞれのコップにお茶を淹れていき、チャンジャは話の区切りの良いところで自分のコップの中身を少し飲む。

 そうして一息ついたところで彼がまた話始めるが、話を聞いていた二人は早く続きを聞きたがっていた。

 特にロックは早くその先が聞きたくて仕方ないのか体を思いきり前に乗り出しており、それをリカルが押さえる形になっていた。

 チャンジャは二人の事を見て、いいコンビだなと楽しそうに眺めていた。


「その遺跡の扉は年に一度、決まった日にしか開かん。で、扉が開く日がこの間来てしまった。次に扉が開くのは来年だ」

「来年って、そんなに気長に待てないわよ!?」


 チャンジャの言葉にすぐリカルがくらい付き、ロックもそれに同意するように大きく頷く。チャンジャはもう一度コップの中身に口をつけてから、二人を制するように片手を挙げた。


「まあ話は最後まで聞きな。唯一例外として、守護者としての試しを受ける者はその扉を開ける事が出来る。ちょうど試しをさせようとしてるやつがいるからお前さん達、そのプレートが欲しいんだったらそいつについていけばいい」

「……だったら初めからそう言ってよ全く、もったいぶりやがって」


 そう言葉を吐き捨てるとふくれっ面になって座り直すリカル。

 その変わり身の早さにロックとチャンジャは顔を見合わせてから、それぞれ同時に呆れたというジェスチャーを取った。


「まあ、とりあえずプレートが取り出せるならいいか。それでとっつぁん、誰についていけば遺跡の中に入れるの」

「お前も知っている奴。孫のコーラルだ」

「え、コーラルさんってあのコーラルさん?あの人が遺跡に入るの?こういうと何だけど想像できないや」

「一応あいつもこの家のもんだからな、今仕事で出ている航海から帰ってきたら遺跡に行かせるつもりだぁ。お前らそん時についていけばいい」


 そこまで話すとチャンジャは席を立って表に出て行った。

 話を聞いたロックの表情は驚きで変わっていたがそれだけではなく、ほんの少しうんざりとした部分も含まれていることを、横で見ていたリカルは見逃さなかった


「ねぇロック、今出てきたコーラルってどんな人」


 チャンジャを見送りながら小声で何かを呟いているロックにリカルは質問をすると、彼は小さく唸って即答を控えた。

 明らかにこの人物の話題を避けたがっていることは分かったが、次の遺跡では一緒に行動することになるので、リカルとしてはどういう人物なのか知っておきたかった。

 ロックにしても黙っているわけにもいかない理由があったので、しぶしぶながらも口を開いた。


「チャンジャさんの孫の一人。優しい人柄で結構美形、だから人気は高いんだけど、何というかナヨナヨした人でいまいち頼りがいが無いんだよな」

「つまり見たまんまのヘタレ野郎って事?」

「ぶっちゃけそういう人。頭はよくて意外に芯も持っているから頼れる人ではあるけど、内向的で一度考えにハマると内にこもっちゃうんだ」

「あー成程、無駄にネガティブな人ってわけね。アタシそういう人苦手だわ」

「やっぱりな。絶対リカルとはウマが合わないって思ったから、出来れば会わせたくないんだよな。頼むからいきなり殴り飛ばしたりしないでよ」

「はぁ!?なによそれ。いくらアタシだって初対面の人に掴みかかるような事しないわよ」


 彼女と初めて出会った時、知り合いの運び屋につかまっていたお礼参りとしてその人を殴り飛ばした所を見ていたロックは、リカルがいきなり手を出さない様に釘をさしておく。

 それに対して彼女は自分が馬鹿にされたと捉え、声を荒げてロックに答えるとコップの中に入っている残りのお茶を一息に飲み干しながら機嫌の悪さを表すように大きくシッポを振り、そのままロックの背中を強く叩きだした。

 その勢いが強いため、ロックは自分の言ったことをリカルに謝る。

 彼が謝ってくれた事で少しは気分が晴れたが、それでもリカルは先程より弱くだがロックの背中をシッポで叩き続けながら知らん顔を決め込んでいた。


「おうお前ら、ちょうど孫が帰って来たわ。おいらこれから出迎えに行くけど一緒に来るか」


 少し居心地の悪くなった部屋の中に、いいタイミングでチャンジャが顔を出してきたので、ロックは行きますと反射的に返事をすると、コップの中身を一気に飲んでから席を立ち急いで外に出て行き、横でそのやり取りを見ていたリカルも、自分を一体何だと思っているんだとぐちをこぼしながらその後をついて外に出て行った。

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