第6話
それは、カラスだった。
とは言え、羽を広げたカラスの大きさは、普段よく見かけるカラスのゆうに3倍はあったから、絶対にカラスだって言い切る自信はあんまりないけど・・・。
漆黒の羽根に、不気味に光る赤い双眸。
あたしたちの方へ急降下してくる。
ギョアアアァァァ!!!
カラスは恐ろしい叫び声をあげながら、あたしたちの頭上をかすめると再び上空に舞い上がった。
な、に・・・・?
巨大カラスは明らかに、あたしを狙っていた。
諏訪がかまえた弓を警戒するように、空中をすごいスピードで旋回し、隙をみつけあたしに飛びかかろうとしている。
あまりの恐さに、諏訪の着物の背中をぎゅっと握る。
背中を、汗がつたうのを感じた。
恐怖に震えるあたしをいきなり振り返って、諏訪はにやりと笑った。
「あー、びびって損した。おまえ連れで初めて襲われるからもっとすげーのが来るかと思ってたし!」
弓をおろして敵から目を離す諏訪・・・・。
おいっ!!!!!なに油断してんの!?バカかあんたは!?
あたしは真っ青になった。
案の定、隙ありと思ったらしきカラスは叫び声をあげながら、再び急降下してくる・・・・・!!!
(やら、れる・・!)
あたしは体をすくめ、その場にしゃがみこんだ。
「雑魚のくせに、ちょろちょろとうっとおしいんだよっっっ!!!」
諏訪はそう叫びながら反転すると、目にもとまらぬ速さで弓を引いた。
グワァぁぁぁ・・・・!!
諏訪の放った矢は、カラスの眉間(カラスに眉毛はないかもしれないけど・・)のあたりを貫いて、断末魔の叫びをあげながらカラスは地上にドサリと落ちた。
「ひっっっ・・・!」
カラスから流れ出る黒々とした血に、思わず体が震える。
「もう、大丈夫だ。」
諏訪はそう言うと、安心させるように、あたしの体をぎゅっと強く抱きとめた。
真っ青なあたしの顔を覗き込むと、目じりにたまった涙をやさしくぬぐう。
諏訪の黒い瞳が、ゆらゆらと切なげに揺れた。
「やっと、この手に・・・・・」
諏訪が、そうやって何か言いかけた時、先ほど見えた神社から、ひとりの青年が出てきた。
「怜真、こんなところで何をやってるのかな?もう、君の仕事は終わったんだろう?」
青年にそう言われ、諏訪ははっとしたようにあたしから体を離した。
「に、兄ちゃん・・・・」
諏訪に、にいちゃん、と呼ばれたそのひとは、諏訪とよく似た整った顔立ちの美青年だった。
違うところといえば、細い銀色のフレームのメガネと、大人っぽい口元、青年らしい太い首、落ち着いた優しげな物腰、といったところ。
「ういちゃん、だね?はじめまして。怜真の兄の、諏訪恭介です。」




