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プロローグ
その赤子は、生まれ落ちてすぐこの遺跡の上に捨てられた。
千年以上前、ある部族の集落であったこの廃都に・・・。
五月とはいえ、北の地にあるこの遺跡の明け方の気温は五度を下回っている。
しかし、赤子の母親はそんな人気のない土地に無残にも赤子を捨てた。
激しい憎悪とともに。
−こんな子さえ生まれなければ−−
母親自身、まだ中学を卒業してすぐの幼さだった。
妊娠を告げたとたん、相手の男は姿を消した。
それを彼女は赤子のせいだと思った。
母親はためらいもなくその子を捨て、去って行った。
冷たい空気の中で、粗末なタオルにくるまれただけの赤子の泣き声はだんだんと弱くなっていく。
その時だった。
しゅる、しゅるしゅるしゅる・・・
赤子の他には誰もいないはずの遺跡に、何かを引きずるような微かな音が響いた。
朝靄の中、ぼんやりとした暗い影のようなものが、遺跡の上を赤子のいる方向にゆっくりと進んで行く。
赤子の泣き声がぴたりと止んだ。
どろりとした闇が、その憐れな赤子を抱きとめた。




