第98話 鬼神の猛威
たった2撃、その2撃だけで魔王は大ダメージを負っていた。
叩き落とされた時に受けた左腕は折れ、更に叩き込まれた拳によって粉砕骨折していた。
「ブラックホール!」
近付くのは危険と判断した魔王は遠距離戦に切り換え得意の闇魔法で攻めることにしたのだが…
「GOAAAA!!!」
鬼神目掛けて飛んでいた闇の魔法は鬼神の口から放たれた叫び声だけで粉砕した。
そして、その音の衝撃は魔王にまで届き…
「ぐぅわぁぁぁあああ!!」
扇状に広がる音の波は避けることもできず魔王の全身の細胞を振動させ破壊する!
一同があれほど苦戦した魔王でもまるで子供のように扱われたのだ。
魔王は目、鼻、耳…至るところから血を流しながら鬼神を睨みつける。
だが鬼神はそれがどうしたと言わんばかりの態度で魔王に向かって歩みを進める。
まるで何をしてきても全て正面から叩き潰すと宣言しているかのような優雅な歩みは逆に魔王の選択肢を狭める。
闇魔法とは基本的に虚を付く魔法だからだ。
その時、空を見上げながら手を天に掲げ倒れたままのゴンザレス太郎の口元が歪んだ。
誰も気付かないその小さな行動。
そして、次の瞬間!
巻き上がる粉塵とこの世界そのものを揺らすほどの振動が発生し魔王は吹き飛ばされる!
一同は一体何が起こったのか分からなかった。
目の前の鬼神が居た場所に超巨大な氷の塊が生えていたのを現実として受け止められなかったからである。
ゴンザレス太郎がボソッと呟く…
「メテオアイスインパクト」




