02 子ども用、バッドエンド
あることろに、すべての人に、わらいをとどける、わらいの伝道師をめざす、てんとう虫がいました。
てんとう虫は、あめの日も、ゆきの日も、まいにち、まいにち、わらいのけいこにはげみます。
「なんでやねん!」
きょうは、つっこみのけいこです。
右手といっしょに、右足まで出してしまって、また、しっぱいです。
しかたがありません。てんとう虫には、手と足は、ぜんぶで6本ありました。
それでも、てんとう虫は、くじけません。
いつかは、りっぱな『わらいの伝道師』になるんだと、きょうも、心にちかっていました。
そんな、てんとう虫のすがたを見た、福の神さまは、てんとう虫に、わらいの道具をさずけました。
しょっかくにつけられる、ボンボンです。
てんとう虫は、大よろこびして、ボンボンをつけます。
そして、「なんでやねん!」をマスターした、てんとう虫は、まちにでようと、なかまのてんとう虫に、そうだんします。
なかまのてんとう虫は、まだ、はやいと止めました。
しかし、ボンボンをつけて、うちょうてんになっていた、てんとう虫は、なかまの言うことをききません。
そして、ついに、てんとう虫は、まちに出ることを、けついしました。
◆◇◆◇◆◇
てんとう虫が、まちをあるいていると、公園で、ふたりの男の子が、けんかをしていました。
「たーくんが、わるいんだろー」
「ちがうよ! こうくんだよ。えいっ!」
てんとう虫には、けんかのりゆうは、わかりません。
こうくんが、手をだして、たーくんは、ころんでしまいました。
てんとう虫は、たいへんだと思い、すぐにふたりのところへいき、
「ふとんがふっとんだ! って、言った、てんとう虫が、ふっとんだ!」
てんとう虫は、じぶんから、ふっとんで、ころびます。
ふたりの男の子は、あまりのバカバカしさに、やがて顔をみあわせて、わらいはじめました。
てんとう虫は、ほっとしました。
これを見ていた、福の神さまは、けんかをしていたふたりに、ささやかな喜びをプレゼントします。
ひとりは、夕飯が、大好物のハンバーグになり、もうひとりは、おとうさんが、ケーキを買ってきてくれました。
ふたりとも、大よろこびで、その夜は、ぐっすりと、ねむりました。
さて、てんとう虫は、また、まちを、あるきはじめます。
こんどは、おとなの男の人と女の人が、言いあらそいをしているのを見つけました。
はなしを聞いていると、アニメのヒーローについての、言いあらそいです。
そこで、てんとう虫は、ボンボンをふりまわしながら、一発ギャグを、ふたりに見せます。
「うちゅう人からの~~、ちてい人! さらに~~、タイヤ人!」
「そ、そうだね。どっちでもいいか。アハハ」
「そうね。どっちでもいいわね。フフフ」
ふたりは、言いあらそいを忘れて、えがおになりました。
てんとう虫は、ほっとしました。いちぶ、言いまちがえたようですが、ふたりには、気がつかれませんでした。
これを見ていた、福の神さまは、言いあらそいをしていたふたりに、ささやかな喜びをプレゼントします。
男の人には、宝くじで、1万円が当たり、女の人には、バーゲンセールで、掘出物が、手に入りました。
ふたりとも、小さなしあわせを、たがいに話しあいながら、わらいがあふれる、デートを楽しみました。
つぎに、てんとう虫が、見つけたのは、おかあさんに、おこられている男の子でした。
おかあさんは、鬼のようなかおで、男の子を、しかりつけています。
てんとう虫が、はなしを聞いていると、どうやら、おかあさんに、ないしょで、ゲームに、おかあさんのおかねを、つかってしまったようです。
てんとう虫は、こまりました。わらいへのきっかけが、見つかりません。
ほんとうに困った、てんとう虫は、いちかばちかで、こうどうします。
「悪い子はいねがー! やさしいおかあさんにないしょで、おかねをぬすんだ、悪い子はいねがー!」
そう言いながら、てんとう虫は、男の子をつかまえて、首をふって、ボンボンで、男の子を、ポカポカとたたきます。
「こわい、こわい。おかあさん。たすけて! たすけて!」
男の子は、なきだしました。
鬼のようなかおで、しかっていたおかあさんも、おどろいて、さけびます。
「やめてください。やめてください」
それでも、てんとう虫は、男の子をはなさずに、ポカポカとたたきます。
「もう、しねがー! もう、しねがー!」
「わーーーん。ご、ごめんなさい、もう、しない。もう、しないから。たすけて。おかあさん」
「もう、もう、やめてください。この子も、はんせいしていますから」
おかあさんも、なきながら、さけびます。
そこで、てんとう虫が、つかまえていた男の子をはなすと、男の子は、おかあさんにかけより、おかあさんは、しっかりと、男の子を、だきしめました。
男の子は、おかあさんのむねに、かおをうずめて、なきながら、あやまっています。おかあさんは、男の子を、やさしくだきしめて、頭をなでました。
ないているふたりを見て、てんとう虫は、下を向きました。
わらいを、とどけられなかったことが、くやしかったのです。
すべてをみていた福の神が、てんとう虫に、言います。
「あなたは、まちがっていません。これをごらんなさい」
そこには、さっきのおかさんと男の子のおうちがみえ、まどからは、ふたりのわらい声が、もれてきました。
てんとう虫は、ほっとしました。そして、じぶんは、まちがっていなかったと、うぬぼれてしまいました。
そのあと、なかまからの手紙がきました。ないようは、てんとう虫に、いったんもどって、もっと、いっしょにわらいの道をきわめようという、おさそいでした。
しかし、てんとう虫は、じぶんは、もうあとすこしで『わらいの伝道師』になれるとしんじていて、なかまの言うことなどききません。
自信満々です。
これを見ていた福の神さまは、いつもきにしていた頑張り屋のてんとう虫に、あいそをつかしてしまいました。
それからも、てんとう虫は、なかまのもとにはもどらずに、まちを歩きまわり、あらそいごとをしている人を見つけては、わらいを届け、えがおにしていました。
しかし、えがおを取りもどした人に、福の神からのささやかなプレゼントはとどきませんでした。
それでも、てんとう虫は、じぶんのわらいにまんぞくして、あたらしいわらいのネタをかんがえることも、おぼえることもしませんでした。
それだけでなく、たいだな生活をおくるようになっていました。
そんなとき、てんとう虫がまちをあるいていると、男の子と女の子が、けんかをしているのを見つけます。
「ぼくがさきだよ」
「なに、言ってんの! おねえさんのあたしがさきにきまってるじゃん」
男の子と、女の子は、姉弟のようで、きょうのおふろのじゅんばんをあらそっていました。
そこで、てんとう虫は、いつものように自信満々で、でていって、わらいでけんかを止めてやろうと張り切ります。
「これをかいけつすれば、もうそろそろ、わらいいの伝道師になれるかもしれないな」
てんとう虫は、薄らわらいをうかべて、姉弟のまえにでていきます。
そして、こうさけんだのです。
「にゅうよくするなら、ニューヨーク!」
「プッ」
「・・・・・」
てんとう虫は、ついに、すべってしまいました。大いにすべってしまいました。
男の子は、すこしわらってくれましたが、女の子は、まったく、わらいません。
それどころか、女の子には、「オヤジギャグ! さむい、さむい」と、言われてしまったのです。
そのようすを見て、てんとう虫は、大あわてです。
ひっしにばんかいしようと、ボンボンをふりましたが、もう間にあいません。
ボンボンを、ふりまわすだけで、なにもでてこなかったのです。
てんとう虫の頭のなかは、まっしろになっていました。
すると、どうでしょう。
『ビューーーーーーーー』と、どこからかきょうれつな寒風がふきあれ、てんとう虫は、あたりいったいが氷の世界、南極までいっきにとばされてしまいました。
「あのとき、なかまのさそいをうけて、もっとわらいをきわめていればよかった」
てんとう虫は、きょうれつな寒風にとばされているときに、こうかいしていました。
しかし、もうもどることはできません。
南極まではこばれた、てんとう虫は、あまりのさむさで、立ったまま気をうしなってしまいます。
そして、そのままからだじゅうが氷はじめ、さいごには氷の像になってしまいました。
───まだ、まだ、しゅぎょうがたりなかった。
てんとう虫は、さいごに、そう思ったのでした。
ただ、けんかをしたペンギンたちは、ボンボンをふりまわす、てんとう虫の氷像を、おもいだしては、いつもわらいながら、けんかをやめるということです。
12/6 1:40 イベント用に文字数が足りないことが判明し、バッドエンド原稿の分岐後の部分を大幅に追加、改稿させていただきました。読者の皆さまには、ご迷惑をおかけいたしまして、誠に申し訳ございません。