01 子ども用、ハッピーエンド
あることろに、すべての人に、わらいをとどける、わらいの伝道師をめざす、てんとう虫がいました。
てんとう虫は、あめの日も、ゆきの日も、まいにち、まいにち、わらいのけいこにはげみます。
「なんでやねん!」
きょうは、つっこみのけいこです。
右手といっしょに、右足まで出してしまって、また、しっぱいです。
しかたがありません。てんとう虫には、手と足は、ぜんぶで6本ありました。
それでも、てんとう虫は、くじけません。
いつかは、りっぱな『わらいの伝道師』になるんだと、きょうも、心にちかっていました。
そんな、てんとう虫のすがたを見た、福の神さまは、てんとう虫に、わらいの道具をさずけました。
しょっかくにつけられる、ボンボンです。
てんとう虫は、大よろこびして、ボンボンをつけます。
そして、「なんでやねん!」をマスターした、てんとう虫は、まちにでようと、なかまのてんとう虫に、そうだんします。
なかまのてんとう虫は、まだ、はやいと止めました。
しかし、ボンボンをつけて、うちょうてんになっていた、てんとう虫は、なかまの言うことをききません。
そして、ついに、てんとう虫は、まちに出ることを、けついしました。
◆◇◆◇◆◇
てんとう虫が、まちをあるいていると、公園で、ふたりの男の子が、けんかをしていました。
「たーくんが、わるいんだろー」
「ちがうよ! こうくんだよ。えいっ!」
てんとう虫には、けんかのりゆうは、わかりません。
こうくんが、手をだして、たーくんは、ころんでしまいました。
てんとう虫は、たいへんだと思い、すぐにふたりのところへいき、
「ふとんがふっとんだ! って、言った、てんとう虫が、ふっとんだ!」
てんとう虫は、じぶんから、ふっとんで、ころびます。
ふたりの男の子は、あまりのバカバカしさに、やがて顔をみあわせて、わらいはじめました。
てんとう虫は、ほっとしました。
これを見ていた、福の神さまは、けんかをしていたふたりに、ささやかな喜びをプレゼントします。
ひとりは、夕飯が、大好物のハンバーグになり、もうひとりは、おとうさんが、ケーキを買ってきてくれました。
ふたりとも、大よろこびで、その夜は、ぐっすりと、ねむりました。
さて、てんとう虫は、また、まちを、あるきはじめます。
こんどは、おとなの男の人と女の人が、言いあらそいをしているのを見つけました。
はなしを聞いていると、アニメのヒーローについての、言いあらそいです。
そこで、てんとう虫は、ボンボンをふりまわしながら、一発ギャグを、ふたりに見せます。
「うちゅう人からの~~、ちてい人! さらに~~、タイヤ人!」
「そ、そうだね。どっちでもいいか。アハハ」
「そうね。どっちでもいいわね。フフフ」
ふたりは、言いあらそいを忘れて、えがおになりました。
てんとう虫は、ほっとしました。いちぶ、言いまちがえたようですが、ふたりには、気がつかれませんでした。
これを見ていた、福の神さまは、言いあらそいをしていたふたりに、ささやかな喜びをプレゼントします。
男の人には、宝くじで、1万円が当たり、女の人には、バーゲンセールで、掘出物が、手に入りました。
ふたりとも、小さなしあわせを、たがいに話しあいながら、わらいがあふれる、デートを楽しみました。
つぎに、てんとう虫が、見つけたのは、おかあさんに、おこられている男の子でした。
おかあさんは、鬼のようなかおで、男の子を、しかりつけています。
てんとう虫が、はなしを聞いていると、どうやら、おかあさんに、ないしょで、ゲームに、おかあさんのおかねを、つかってしまったようです。
てんとう虫は、こまりました。わらいへのきっかけが、見つかりません。
ほんとうに困った、てんとう虫は、いちかばちかで、こうどうします。
「悪い子はいねがー! やさしいおかあさんにないしょで、おかねをぬすんだ、悪い子はいねがー!」
そう言いながら、てんとう虫は、男の子をつかまえて、首をふって、ボンボンで、男の子を、ポカポカとたたきます。
「こわい、こわい。おかあさん。たすけて! たすけて!」
男の子は、なきだしました。
鬼のようなかおで、しかっていたおかあさんも、おどろいて、さけびます。
「やめてください。やめてください」
それでも、てんとう虫は、男の子をはなさずに、ポカポカとたたきます。
「もう、しねがー! もう、しねがー!」
「わーーーん。ご、ごめんなさい、もう、しない。もう、しないから。たすけて。おかあさん」
「もう、もう、やめてください。この子も、はんせいしていますから」
おかあさんも、なきながら、さけびます。
そこで、てんとう虫が、つかまえていた男の子をはなすと、男の子は、おかあさんにかけより、おかあさんは、しっかりと、男の子を、だきしめました。
男の子は、おかあさんのむねに、かおをうずめて、なきながら、あやまっています。おかあさんは、男の子を、やさしくだきしめて、頭をなでました。
ないているふたりを見て、てんとう虫は、下を向きました。
わらいを、とどけられなかったことが、くやしかったのです。
すべてをみていた福の神が、てんとう虫に、言います。
「あなたは、まちがっていません。これをごらんなさい」
そこには、さっきのおかさんと男の子のおうちがみえ、まどからは、ふたりのわらい声が、もれてきました。
てんとう虫は、ほっとしました。
そして、いろいろな笑いのかたちが、あることをしり、もっと、もっと、しゅぎょうをしなければと、はんせいするのでした。
それから、てんとう虫は、いったん、なかまの元にもどり、たくさんのしゅぎょうをつみ重ね、また、まちにでて、たくさんの人に、わらいをとどけました。
こうして、てんとう虫は、ついに、福の神にみとめられ、わらいの伝道師になったのでした。
めでたし。めでたし。