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タイムマシン

作者: くるい

 食糧難の時代。ある国の化学者が、それを回避するためにタイムマシンなるものを製作した。電気が作動して高速運動し、空気が振動する力の強さで過去に行けるらしい。しかし、作動の関係上過去にしか飛べないとのこと。

 それを学会にて力説してタイムマシンを世に広めた彼は、それが置かれる自身の研究所へタイムマシンを体験したいという希望者を招待し始めた。


【ここから先は一人で御入り下さい】と書かれた注意書きに従い、彼等は一人ずつタイムマシンが置かれる部屋に入って行った。


 そこで、「この時間軸には戻れませんがよろしいですか」と説明した後、承諾した体験希望者だけを過去に送っていったらしい。



 しばらくして、過去にしか行けないとだけあってタイムマシンの人気がなくなった辺りの頃。他の化学者が未来や過去に自由に飛べるタイムマシンを製作した。

 その科学者は幾数年前に先に発表した化学者に会いに行きたいと言って、アポイントも取らずにその彼に会いに行った化学者。


 彼は、化学者の研究所に入った時に愕然とした。そこには、まるまる太って只の豚と化した彼がそこに居たのだ。


 食糧難の時代であるのにも関わらずに、当の本人はステーキを食べながら化学者に「君も食べるかい」と言う。

 化学者は断り、タイムマシンを見せてくれと頼んだ。しかし、彼はそれを固く拒み、決してそのタイムマシンを見せることはなかった。


 不審に思った化学者は、無理矢理それが置かれる部屋へとずかずか入り、中を確認した。

 するとあろうことか。只の巨大な蒸し焼き器械だったのだ。どうやら、食糧難の時代に疲弊した彼はこの蒸し焼き器械をタイムマシンと偽り、招待した客を蒸し焼きにして食っていたそうな。


 憤慨と落胆の表情を見せた彼はその化学者を酷く叱咤し、ならば本物を見せてやると言って自身が作ったタイムマシンへと招待したら、翌日に彼は化学者のタイムマシンを見ることとなった。


「これが過去にも未来に行ける本物のタイムマシンですか」


 笑いながら部屋に入った化学者は言う。「私のとは大違いですな」と。


「そりゃ違うわ。貴様の蒸し焼き器械とは物が違うんだからよ」


 化学者はいつまでも笑いながら見物していると、「では体験してみてもいいかい」と言う。


 それを承諾した化学者は、彼をタイムマシンの中へと入れた。


 彼は蒸し焼きになった。

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