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神風の遺産  作者: みすたぁM
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人成らざる者

設定集のアルファウイルスの部分の12時間以内を6時間以内、24時間後を12時間に変更しました。

Side衣笠

俺は今教室でスマホのニュース画面とにらめっこをしている。あの後、生徒たちは教師から話を聞いた後教室待機となった。

本来なら休校となり各自帰宅となるんだが、それが出来ない。


菜野市各地で暴動が発生したからだ。


窓から見える町の景色には所々黒煙が上がり、パトカーや救急車などのサイレンが絶えず鳴っている。すでに校内には続々と避難民が集まってきて教師がその対応に追われている。


とりあえず情報がなければいざという時にどうにもならないからスマホを弄っているんだがあまり効果はなさそうだ。まだインターネットは無事だが信憑性が低い情報が多すぎる。だから


「あーもういいや!」


ヤケクソになってニュース画面をとじて気分転換に某動画サイトを開いた。


しばらく画面をスクロールしていると一つの動画が目に入る。タイトルは外国語だからわからないが投稿日時はつい最近だ。気になってタッチして再生ボタンを押す。


再生時間はたったの数分。写し出されているのはどこかの暴動の様子らしき場面で周囲に怒声が響き渡っている。初めてはただの暴動の様子かと思った。


しかし、次の瞬間俺は目を疑った。






誰かの悲鳴が響き撮影者がカメラを向ける。







そこに写っていたのは「人間の腹を貪っている人間」だった。








いや、「人間のような何か」の方が正しいのかもしれない。







俺は怖くなって動画を停止してスマホをポケットに押し込んだ。


合成やよくできたCGという考えが頭に浮かんだがすぐに否定する。見る限りそんな感じはしなかった。念のため確認しようとしてポケットに手を入れるが本能が警鐘を鳴らしすぐに手を引っ込める。





「……………………………………どうなるんだ、いったい…………………?」


俺の言葉を聞き取る人物はいなく、得体のしれない恐怖を一人感じていた。






















Side片桐

「………よし、誰もいないな。」


俺は教室を抜け出して地下工廠入り口の前まで来ている。入り口は学校の中庭にある校訓が刻まれた大きな岩の下敷きになっていてRPGのダンジョンのように階段が真っ黒な地下への道を示している。

幽霊や魑魅魍魎の類が出てきても不思議じゃないくらいの不気味さだがそんなもんに怖気づいていられない。


この機会を逃せばもう中に入る事は出来ないと思って無断で教室を抜け出してここまで来たんだ。怒られるんならせめて見てからにしてもらいたい。つまり好奇心を我慢できなかったのだ。もちろん後悔していない。



この工廠は地下数100mまでおよび中は蟻の巣のように迷路状になっていて第7層まである。


第1層は主に小銃、拳銃とそれの弾薬の製産。


第2層は機銃系統の製造


第3層は迫撃砲や小口径砲の製造


第4層は大口径砲を


第5層は戦車を含めた車両系統を


第6層は試作兵器とロケット系統を


最期の第7層は物資の倉庫とシェルター


そしてすぐそばにある古い倉庫に擬装された運搬用の大型エレベーターだ。


「さて、それじゃあ行ってみよ~!」


俺はひとりで昭和の国民的コント番組のリーダーのような声を出して懐中電灯片手に中へと入ろうとした時




「ひぐっ、うえぇぇぇん………お兄ちゃ~ん、どこ~!?」




声が聞こえる方を見ると小学校2~3年生くらいの少女が泣きながら歩いていた。


無視するという冷酷な考えが浮かんだがすぐにそれを捨て去り少女の目の前でしゃがみ目線を合わせて声をかけた。


「ねぇ君、大丈夫?自分の名前言える?」


念のため言っておくが俺は幼女に興味はない。どっちかっつうと出るとこ出てるスタイルの女性が好みだ。


「………………みらい。雪波(ゆきなみ) みらい。」


「じゃあみらいちゃん、お父さんとお母さんは?」


俺は怖がらせないように笑顔で質問する。が、あまり効果はなく未だ顔を涙と鼻水でグシャグシャにしている。


「パパがね、ういるすっていうビョーキにかかったの。そのあとお医者さんに診てもらおうとしたんだけどすっごい人でね、その後パパが動かなくなったの。ママが泣きながらみらいに''パパはず〜っと遠くに行っちゃったの''って嘘ついたの。だってパパはそこで寝てるのにどこかに行くわけないもん!」


親を亡くしたのか、この子は………。


まだ7~8歳くらいの子供だ、「死」という概念が理解できないんだ。


「そのあと眠っちゃって、目が覚めたら








パパが「ママを食べてたの。」











俺は意味がわからなかった。


パパがママを食べる?


「食べ………た?」


「本当だもん!!そのあとしょーぼーしのお兄ちゃんが来てみらいをここまで連れてきてくれたの。」


ひとまず疑問は置いてこの子をどうにかしよう。


俺はその消防士がどこにいるのか聞こうとして顔を上げると視界の隅にあるものが映った。


それは見る限りスーツ姿の男性でなにやら挙動不審だ。


避難民か?


そう思った俺はみらいにこの場を動かないように言って男性に声をかけた。


「あの~、どうかしましたか?」


男性がゆっくりと振り向いた。


そして俺はその顔を生涯忘れることはできないだろう。















なんと言ったって






















顔の皮膚が半分腐れ落ちてる男性がまるで「ゾンビ」のように飛びかかってきたのだから











「!!??」


俺は目を疑い茫然としたが無意識に体が動き間一髪で避けた。






が、男性は止まらずその先のみらいを目指して突っ込んでいく。





「マズイ!!」


俺は近くに落ちてた工事用?の鉄パイプをつかんで渾身の力で殴りかかった。



鉄パイプは腰に命中したが、彼は「まったく怯まず」にただ視線を俺に向けただけだった。


「おいおい冗談だろ………。」


倒す事には失敗したが気をそらす事は成功した。俺は鉄パイプを構えなおして相手をじっと見る。


幸い動きは遅い、体育の成績は下から数えた方が早い俺でも間合いを取れば…………



コンッ



やつの背中に石がぶつけられ、背後を振り向いた。


「あの馬鹿!」


そこにはゾンビ?に石を投げつけるみらいがいたが、その程度でどうにかなるものではない。ゾンビがみらいに向かって歩き出した。


「来ないで!!あっち行け!!」


みらいは必死に石を投げつけるがゾンビは確実に距離を縮める。もう一刻の猶予もない。


「クソ!鉄パイプじゃあどうにもなんねぇ。なにか………!?おっ?」


ふと入り口付近に大きめの木箱がある。そしてよく見ると木箱はかなり古そうだ。


「もしかすると………!」


俺は木箱に向かって一目散に走って鉄パイプで蓋をこじ開ける。


「ビンゴ!」


中に入っていたのは、一丁のボルトアクション式ライフル。しかしこれはただのライフルではない。槍のように長い本体、そして機関部には菊の御紋がしっかりと刻印されている。


旧日本陸軍の主力歩兵銃、三八式歩兵銃だ。しかもご丁寧に弾まである。


俺はそれを手に取り安全装置を解除してボルトをオープン、そこから弾丸を装填して構える。


もうゾンビとみらいの距離はかなり縮まっている。ボルトを後退させ弾丸を薬室に送り込み、そして引き金に手をかける。


狙いは頭。一撃で仕留める!













「………………………すまない。」


俺は引き金を引き、銃口から6.5mm弾が長い年月が経っているにもかかわらず正常に飛び出しゾンビの後頭部に命中し、血と脳の中身を出しながら倒れ動かなくなった。


「みらいちゃん、大丈夫?!」


俺は茫然としてるみらいに駆け寄るとみらいが大声で泣きながら抱きついて来た。





しっかりと抱きつき涙と鼻水で俺の制服が汚れていく。





そんなみらいを俺は優しく抱きしめ





「大丈夫、ほら大丈夫だ………………。」





と呟くように語りかけた。





今はこれくらいしか、俺はできなかった。



















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