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神風の遺産  作者: みすたぁM
11/17

敗残兵

Side片桐


「陸上自衛隊東部方面隊第83普通科連隊所属、六条ろくじょう 梨佐りさ二等陸尉です。」


「同じく第13戦車大隊所属、須藤すどう 一輝かずき陸曹長です。」


「第33特科隊所属、須藤すどう 昭二しょうじ2曹です。」


「東部方面隊衛生科所属、イリナ ユーティライネン3曹です。」


「第416施設中隊所属、須藤すどう 勝三郎かつさぶろう陸士長です。」


三田たちとの合流後、俺たちは取り敢えず平和的な接触は成功してレンタカー会社の事務所内で自己紹介を済ませた。


俺は改めて隊長である六条二尉を見るが、なんというか、その









「コスプレした女子中学生?」


「誰が中学生だ!!」


背が小さいのだ。


俺たち高校組の中で一番背が低いのは熊野の約160cm、対して六条二尉の身長は150cmあるかどうか。


みらいの身長がおよそ140cmと、8歳にしては高身長なので衣笠が幼女と言ったのは間違いではない………はず。


「すげぇ、本物の合法ロリだ……。」


「だからロリって言うなぁ!!これでも今年で28よ!」


「私より年上!?」


織琴先生の年齢は知らないが、どう見ても10代前半にしか見えない二尉をユーティライネン3曹がやんわりと宥めている。


ユーティライネン…………名前から推測するとフィンランド人のはずだがなぜ日本の自衛隊に?


「えぇっと、ユーティライネン3曹でしたっけ?フィンランドの方ですよね。」


「ええ、そうよ。両親はフィンランド人だけど、私自身は生まれも育ちも日本。だから日本語が話せるし、それに日本に帰化してるからこの仕事にも就けるってわけ。理由は教えられないけど。」


「へぇ~、そうなんですか。」


「そういう事。それにしても高校生、ねぇ。」


なんだかユーティライネン3曹の目つきが急に変わった気がする。


敵意とか、疑念の類ではなく……まるで猛禽類のような






「ふふ、私好みの可愛い子がいっぱい。ほんと、食べちゃいたいくらいに………。」


「「「「「!?」」」」」


横山たちが一斉に彼女から距離を取り織琴先生を盾にするように後ろに引っこみ、篠原とみらいが俺の腕に抱き付きまるで威嚇する犬の様に3曹を睨み付けた。


やべぇよ、この人目がマジだよ。


「やめんか3曹!自衛官が国民を怖がらせてどうするんだ。」


「そうですよ、せっかく接触した民間人なんですから。」


「3曹の趣味に口を出すつもりはありませんが、流石に今は自重してください。」


須藤陸曹長がユーティライネン3曹の頭を軽く叩き、2曹と陸士長が両脇から挟み込んで彼女を部屋の隅に連れて行った。


苗字でわかる通り、彼らは所属こそ違うが兄弟だ。


某天才無免許医のように顔に大きな傷跡があるのが長男の一輝陸曹長。


眼鏡を掛けていて丁寧な口調なのが次男の昭二2曹。


高校球児のような坊主頭なのが三男の勝三郎陸士長。


背格好は大差ないが、見分けるのは比較的簡単だ。


それに、この人たちはさっきと違ってまとも







「済みません、部下が色々と失礼を」


「「「悲しそうな目をするロリ隊長……これ、イイッ!!!」」」



前言撤回、こいつら揃いも揃ってロリコンだ。


「こんな自衛隊で大丈夫か?」


「大丈夫だ、隊長がまともだから」


「誰がロリ隊長だぁぁぁぁ!!!」


「六条さん落ち着いて!大声出すと奴らがきますから!」


大丈夫じゃない、大問題だ。


「はいはい、ふざけるのはこの辺にしてそろそろシリアスになりましょうか。」


横山が手を叩きながら一歩進み、全員を静かにさせて視線を集中させた。


「六条さん。いえ、六条二尉。武装してるとは言え、民間人を見つけたのならなぜ本部や基地に連絡しないんですか?仮に無線機が故障していたとしても、俺らを外の車に乗せて基地まで護送するはずですよね。もしかしてそうしたくない。いや、できないんじゃないんですか?」


横山が六条二尉に視線を向け、彼女は少し考え込むと顔を上げた。


「そう、その通り。残念だけど、我々はあなたたちを助けられない。希望を失わせるようなこと言って御免なさい。」


彼女たちが頭を下げ謝るが、対して横山はいつもの様にヘラヘラと笑いながら


「そうですか。別にかまいませんよ。」


と、さも当然の様に答えた横山に自衛官たちが呆気にとられた。


彼女たちにとっては、本来手を差し伸べなければいけない人たちに向かって「助けられません」と言ったのだが、その差し伸べるられる人が「そうですか」と簡単に納得したのだから呆気にとられるのも無理はない。


「あなた方がなんでもできるスーパーマンじゃないんですから、できないことがあって当然ですし俺たちもそれに対して文句は言いません。できる事をやらない人間は馬鹿ですが、出来ないことをやれと言う人間もまた馬鹿ですからね。ですが、助けられない理由は知りたい。俺たちにはそれを知る権利があるはずです。」


横山が六条二尉の目を真剣な表情を崩さずに真っ直ぐ見つめ、彼女が他の隊員に目くばせすると軽く頷き、六条二尉がなぜ俺たちを助けられないかという理由を話した。

















「すると、あなたたちが唯一の生き残りって事ですか?」


「そう、最後の大隊(ラスト・バタリオン)ならぬ最後の分隊(ラスト・スクァード)。それが私たちよ。」


六条二尉は溜息を吐きながら壁に寄り掛かる。


彼女たちが配属されていた隣の市の駐屯地も俺たちと同じ押し寄せてくるゾンビの撃退と、逃げてくる避難民の収容を同時並行して行っていたらしい。


俺達と違って装備が充実していて、曲がりなりにも軍事組織である自衛隊はゾンビの排除には大した被害は出さずに避難民の救助もあと少しで終わるときに事件は起きた。


常日頃から自衛隊を親の仇の様に憎んでいる自称「平和を愛する市民団体」が何を血迷ったのか、国民を虐殺していると大騒ぎした挙句に、隊員たちに掴みかかり車両が通れないように路上に座り込むなどの妨害行為に出たのだ。


しかも駐屯地内の放送室を占拠してデモ紛いのことまでやらかし、その大音量の放送に引き寄せられた大量のゾンビを妨害にあって思うように動けない隊員は防ぎきれずに駐屯地内の侵入を許してしまった。


駐屯地内はパニックに陥り、押し返すのは最早不可能と判断した基地司令は駐屯地を放棄。民間人のみを待機しているヘリや輸送機に乗せて太平洋上に展開している海上自衛隊の艦隊や離島まで避難させ、隊員はそれまでの時間稼ぎ。つまり民間人を逃がす為の生贄にならざるを得なかった。


基地司令や整備員なども加えた決死の防戦により、なんとか全機離陸に成功。およそ数百人の避難民が助かり、防衛部隊と押し寄せたゾンビは双方全滅したと思われたが幸か不幸か、六条二尉は生き残ってしまった。


その後、同じく生き残った須藤陸曹長などと合流。なけなしの装備をたった一両だけ残った高機動車に詰め込んで当てもなく彷徨っていたところ、俺たちが飛ばしていたキルゴアくん1号の音楽を聞きつけて合流しようとしたが高機動車がガス欠を起し、ここのレンタカー会社から適当な車を拝借しようとした所らしい。


「現状、今の我々は根なし草の死に損ないに過ぎません。他の駐屯地に行くのも我々だけでは自殺行為です。情けない話ですが、そちらの高校に身を置かせてはもらえませんか。勿論、無理にとは言いません。食料や寝床の都合もそうですが、我々を快く思わない人もいるでしょうから見捨ててもらっても構いません。あなた方の判断に任せます。」


隊員たちが頭を下げ、一先ず俺たちは学校側に指示を仰ぐためにトランシーバーのスイッチを入れた。



おまけ




片桐「よく生き残れましたね……。」



六条「まぁ、私一応防衛大出身だし。」



須藤一「自分、レンジャー持ちです。」



須藤昭「去年、格闘徽章取得しました。」



須藤勝「昔、空挺団にいました。」



イリナ「おじいちゃんの加護………かしら?」



高校組「やけにハイスペックな分隊だな!?」

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