ちょっとしたオカルト体験
この話はジャンルで言えばオカルトになるのかもしれない。私は夏にソロキャンプに行くのが趣味だ。ソロなのはキャンプに付き合ってくれる※友人が居ないためである。
※他の趣味には付き合ってくれる。
ソロキャンプは行く前が非常に楽しい、そして行って時間を持て余す。これは、そのソロキャンプで体験したちょっとした話だ。
キャンプに行く場所は決まっている。奈良県の南部吉野方面に幾つもある渓流のそば。キャンプ場は利用しない。適当に人気の無い場所を探してそこで遊ぶ。それ以外だと大台ケ原ドライブウェイの頂上にある駐車場等。
渓流で泳ぐのは、たいそう気持ちが良い。海で泳ぐのは苦手だ。しょっぱいし、泳いだ後ベタベタするのが自分には合わない。
大台ケ原に行くときは低倍率でレンズ径の大きい双眼鏡と天体観測用の本、そして光量の弱いライトを持っていく。あえて光量の弱いライトを持っていく理由はそのライトで本を読むためであるのと、強い明かりのライトで本を読むと今度は星が見えなくなってしまうからだ。
youtubeで適当なクラッシク音楽を落としてMP3プレイヤーに入れ、その音楽を聴きながら(普段はクラッシックなんて聴かない)駐車場に敷いた銀マットの上に横になって天の川を見る。人工衛星を見つけるのがなかなか楽しい。
さて、本題に入ろう。こういう体験談だと大抵の場合、某所で済ませるが、個人的には何故場所を伏せるのか理解し難い。
私が行ったのは、奈良県五條市西吉野町黒渕と言う所だ。国道168号線沿いににある丹生川に沿うようにして国道を外れると、川原にまで車で降りられるポイントがある。途中までコンクリートで舗装されているのでスタックするような事も無い。
私はある日、たまたま見つけたそのスポットで(私は適当にドライブして見つけたポイントでキャンプすることがある。下手すれば何時までも良いポイントが見つからずドライブだけで終わる場合もあるが)キャンプすることにした。
昼間は川で泳ぎ、夕方からコンロで肉を焼いて、インスタントカレーと一緒に食べた後は、横になって星を見ていた。その場所は山に囲まれていて真っ暗になるので星が物凄く見える。
しかし、弊害もある。川の両側が山なので真っ暗すぎて怖いのだ。私は幽霊をこれっぽっちも信じていないが、怪談話は大好きであるので色々と想像してしまう。
私は銀マットを車と折りたたみ椅子の間に敷いて、車と折りたたみ椅子を壁のようにして身を守るようなポジションで星を見ていた。四方に蚊取り線香も設置して結界を張る。
そんな風にして星を夜遅くまで見ていた。熱くて寝ることが出来なかったというのもある。
オカルトな話と言うのはそんな時に遭遇した話だ。
自分が寝転がっている場所から距離をおいた山側から藪を割って何かが出てくるような音がした。姿は全く見えない、何せ真っ暗だからだ。ちなみにその時の自分は寝ぼけていたりしていない。ハッキリと覚醒していた。
山の中だから獣が出てきてもおかしくないはない。大台ケ原ドライブウェイなら往復する道中で運がよければ十回近く鹿に遭遇する場合がある。夜中だと余計に遭遇する可能性がある。あいつら、照り返しのライトで目が光って不気味だ。
音が聞こえた後、私はたいそう怯えて車の陰から音がしたほうを凝視していた。車の中に退避しようと言う考えは起きなかった。自分が物音を立てて自分の存在を気付かれるのを私は嫌ったのだ。
その物音は更に続き、どうも川の方に向かっているようだった。そしてそのままじゃばじゃばと水音が起きた。川の上だと水面が僅かな光を反射するせいか、うっすらとそのシルエットを確認できた。なんというか太い。鹿なんかのスラッとしたシルエットじゃない。個人的には大きな牛?と思った。しかし牛なんて居るわけが無い場所だ。居るとすれば猪。だが自分の想像する猪のシルエットと全く違う。何度も言うが牛のシルエットが一番近い。そのシルエットはそのまま川のど真ん中を上流に向かって歩いて行って消えた。
ちなみに下流方向にそいつが歩いて来たならば、間違いなく至近距離で私はそいつと遭遇する事になっただろう。
私はその後、暫くしてから銀マットや折りたたみ椅子を畳んで車に放り込み家に帰った。途中、音楽をガンガンにかけて。
その後もその場所には何度か行って泳いだりしているが、キャンプはもうしないことにしている。