82 【最終話】 星は瞬く
L.M.暦二一八五年。
惑星ラントゥールは、シャ・メインの遺言もあってか、惑星破壊作戦は中止され、長く人々を苦しめてきた戒厳も解かれた。
調査に訪れた専門家の話では、この星は生命を育む力ならば、あと一千年の寿命があると言う話だった。
開発投資はしないものの、議会に返り咲いたスヴェンの尽力もあって、ささやかな復興が為されようとしている。
ヒブラとは最も近しい人物の一人であった彼は、あの時何が起こったのかを語ろうとはしない。
もっとも、隔離された場所に閉じ込められてたから、真相など知る由もないのだが。
不思議といえば、大深度地下に発見された地下都市のような遺構には、人一人、もの一つ見当たらなかったことである。今後とも何が存在していたかは議論の止むところを得ないだろう。
また、シャ・メインの遺体を直接引き取り、メッセージを受けたランミールトは、“ノボアの家族”にノボアの名誉ある戦死を告げた。
それから程なくして、彼は職を辞した。
「寂しいですわ。もうボスにコーヒーを入れられなくなるんですもの」
ハンナは本当に寂しそうに、腰に手を当てて部屋を片付ける上司を見つめる。
「お部屋もきれいになっちゃったし――」
「まあ、そう言わずに。次のボスも面倒を見てやってくれ」
「ええ、ええ。でも次のボスが、あなたみたいに良い人なら助かるのですけど」
思わぬ批評に、ランミールトは苦笑した。
「こんな上司でも、良かったのかね」
「あらイヤだ。私は幸せでしたのよ。運命のボスだと思ってましたから」
――運命――――
ランミールトは一瞬、片付けの手を止めたが、すぐにまた動かした。
「………次のボスも、きっと廻り合わせた運命になるだろう。さあさ、時間は過ぎていくんだから、過去になる私の事は忘れるんだ」
……何処から始まったのだろう――――
いつ、終わるのだろう――――
……治める国も民も無き、孤高の支配者よ、
大いなるものの愛児よ、
汝が名は「汝、在る者」
創造の誕生を幻に見せ、
風無き空間に時と、
異形を見出し、
星より彼方に故郷を求めて。
唯、許された御名。
それは「汝と言う者」。
始めと終わりは
いずこにありや――――?
『Fortune』 信じるべからず
『Future』 望むべからず
『Forever』 求むべからず
ただ生きたい者は、其れを得よ………――
【千年の夢幻 完】
『シリーズの第一弾』
ようやく終わりました。
お付き合いいただいて有難うございます。
「外伝・空白の言葉」より、二千年後と推測され、
「III Galactic ILLUSION」より、一千年後と推測される、
物語。
この物語はシリーズの序文と位置づけてスタートしたのですが、本当は位置づけなんて曖昧な本稿、本編の宇宙篇の「一次資料」としての性格が濃いかと思います。
つまり宇宙篇の、「やけに長い粗筋」になるのかもしれないです。
そのせいもありまして、各キャラクターの個性はかなり薄め、歴史を語る客観性を重視した文章に仕上げてみました。
加減が分からなくて、途中に粗筋や設定資料を入れなかったのも、読み視点では益々捉えどころの無い物語にしてしまったかなと反省。