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The ORPHAN 異伝 『千年の夢幻』  作者: 現王園レイ
◆EPILOGUE◆ 星の道標(しるべ)
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79  星の道標(しるべ)

 ラントゥールは、いつもの姿で、いつもの場所にいた。

 爆発もなければ、星のカケラ一つも飛んでこない。暫く待ってみて、恐る恐る接近を試みる。

 作戦は失敗――と言うには、どこかが奇妙だった。

 網目のリアクターは、一部だけ円く破れたように消えている。

 そこが、光の柱が現れた処の上空だというのは分かるが――…。

「地上探査艇を下ろしたものか?」

 ケイは困り顔の副官と、マルツァーに聞いてみた。

探査機(シーカー)を先にしましょう」

 モニターの目視と分析波だけでは、以前の状態と変わらない。

 埒も明かないので、賛成してみた。

「この艦を周回軌道に乗せろ。リアクターのフォーメーションは外せるな?」

「はっ。―――中将殿」

「? …どうした」

「成層圏のこの空域で、“人間を収容した”との報告がありますが――」

 いったんはフーン、と興味無さそうに相槌を打ったケイだったが、文章的な引っ掛かりを覚えて聞き返した。

「…宇宙空間でか?」

「“生身”で漂流していたそうです」

 自分は見ていないから、それ以上は言えない、とも顔に書いた士官はケイの反応を待つ。

「――生存確認は」

「“生きておりました”」

「何処に収容している?私が接見しよう」

 良くないとは思いつつ、衝動的に自分は動いてしまった。

 すぐさま僅かな側近を連れ、旗艦から移動する。

「―――わざわざご足労を……」

「挨拶はいい。艦長、その人間に会えるか」

「集中治療室におります。絶対安静をドクターに言われておりますが…」

「意識がなくても構わん。職権を行使する。いいな?」

 艦内の廊下を慌しい足音が走った。

 騒ぎを聞きつけて、士官や兵士が野次馬に集まる。

「作戦本部からケイ中将がお越しだ。彼に接見する」

 艦長は救護室に入るなり、大声で目的を告げた。

 その場に居合わせた軍医と看護兵は敬礼したが、奥から出てきたドクターは明らかに、自分の任務に忠実な表情をしている。

「困りますな。ひどく衰弱していて怪我だらけだ。治療は一段落してるが…予断を許さない状態だから、接見して死亡したら殺人罪ですぞ」

「ドクター。どんな状態にあっても、閣下は見るだけでも良いと言うのだ」

 ケイは軍帽を脱いで側近に渡すと、艦長の後を続けた。

「――では、ドクターと集中治療室に入ろうか。意識はあるのか?」

「強引なッ」

 押し入るかのようにドアを開けたので、ドクターは先を制して誘導するしかなった。

 クリーンルームを潜り抜け、生体の反応を測定する器具が並んだ向こう側で、薬液の入った比重の重い液体の特殊なプールの中に、彼は横たわっていた。

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