78 始めと終わりの輪廻(わ)を繋ぐ者
「……還るのか…」
“全てからの解放…自由……我々はそれに従う者…”
「〈大消失〉は、そうだと言うのか」
“その通り”
「どこへ……?」
“人は、宇宙の果てを超えるとも云う……”
「制限を受けやすく造られた魂もか……?」
“……―――”
刻は告げられた。
『最終権限に寄って、ユーデリウスの名は削除されました――警告します。動力炉のリミッターが解除されます。警告します。エネルギーの暴走は制御できません………―――――』
『リミッター解除』
鍵門を開放せよ。
『鍵門開放』
重力が無くなるような感覚がする。
「何処へ行くんだ………」
シャ・メインは、再び尋ねた。
“我々は……を…超えて――”
そこまでだったと思う。
しかし、シャ・メインは知った。
(これで……良かったのだと――アルダ)
彼の意識がアルダに言う。
彼女は、傍にいた。
(……お眠りなさい――)
破壊される身でありながら、奇跡が起きたかのように美しく白銀に輝く星は、その一角から巨大な光の柱を顕した。
「何事だ!」
「何が見えている?」
「異常事態です! リアクターのエネルギーが、あの方向に、きゅ、吸収されてます!」
「吸収とは違う? 何がだ!」
「リモート・コントロールを外せ!」
「出来ません! 制御不能に陥ってます!」
「ええい! モニターを切替えんか!」
艦隊の混乱をよそに、静寂の中をただ光の柱だけが存在を誇示していた。
「………かッ…確認をしろっ!」
「何をでありますか?」
「知るか! とにかくナンだあれは!」
命令されたオペレーターは、遂行しなかった。
我は最先なり、最後なり、
始めと終わりの輪廻を繋ぐ者、
しかして廻れるものならば其に非ず。
どうか、二度とあなたから離されませんように――――
どうか、二度とこの暗黒淵に、
孤児となりませんように――――
少年は、刻を超えて母に逢った。
(母さま――――!)
お帰り。母は言った。
(やっぱり、独りはイヤなんだ……ここは寂しい………)
母は微笑した。
もう一度、眠るのよ………
眠って、目を覚ましたら、もう寂しくは無いのですから………
(…ホントに…?もう、いいんだね……それで……)
光が、少年を呑み込んだ。
――ねぇ、あの人も眠りたいって、ボクを呼ぶんだ…――