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The ORPHAN 異伝 『千年の夢幻』  作者: 現王園レイ
◆TRADITION 5◆ “あなたと云う人”(ユーアン)
76/82

76   いよいよ、其れは来る

 しかし逃げる様子がない。

 柔らかい動作で手を上げると、掌を前に広げる――――なんと優雅に。

 青白い光がユーアンを包み込んだかと思うと、光弾は電気がショートする音をさせて飛散した。

「くうッ!」

 乱闘の渦から弾かれたアテンカは、体勢を整えるとアルダがいるのに気がついた。

「……ふうん…主義に反するが…一番効果があるかな」

 嘯いて彼女を引っ掴もうとする。

「! 人質にするつもり?」

 逃げようと飛び退った。が、見えない縄が絡まったように、動きが鈍い。

(何てこと!)

 自分のうかつさに舌打ちしても、もう遅い。アテンカに首を抑えられてしまった。

「坊や!こっちを見なよ!」

 ユーアンは冷静な眼で立ち位置を変える。

「どうするのだ?」

「分からないかい?大人しくして、あたし達に殺されてくれれば、この女の命は助かるかもしれないんだよ。どうやら坊やは強そうだから」

 後ろから左腕で首を押さえ、右手が顔面に近づけられた。

「頭が吹っ飛ぶかも知れないねえ」

 アルダの表情が歪む。激しくなった血流が、頭の中にぶつかってガンガンと音を立てるかのようだ。

 黙って聞いていたユーアンだが、ふと、

「――私は、私の支配するありとあらゆるものに対して、権力を行使しよう。例えば……ゆえなき攻撃には、自衛権を発動し防御したる権利………」

「この女は死ぬよッ!」

 死が訪れたのは、逆ギレ的に怒鳴ったアテンカだった。

 一瞬、戸惑ったかと思うと、にわかに険しくなって痙攣をはじめ、体が赤く鉄を熱したように光って膨れ上がった。

「消滅した………!」

 跡形もなく、アテンカは消えている。

「何だと!」

 ギトリも危険を感じて眼を剥く。

 意図はしなかったが、シャ・メインとギトリは揃ってユーアンに攻撃を仕掛けた。

「この…! ガキが!!」

 あらん限りのエネルギーを籠めたパワーが飛ぶ。

「お前は、今殺しておかねばならん! 消えろ! ここから!!」

 余裕に構えるユーアンの瞳が燃えた。

 それは熾烈な輝きを持って、シャ・メインの深い意識の底に届く。

 ―――時間が、凍る。

 

『――システム・ルイーザは完全に消去されました。完全に消去されました。動力炉制御プログラムは現在、コマンドを待機中です。権限者は――』

 ルイーザ像が、高らかに支配者を呼んだ。

 

 

 

 惑星を網目状に覆った破壊兵器の、一つ一つから光線が延びてくる。

 地上は昼であろうと夜であろうと、異様な明るさを含んでいた。

 誰もがその瞬間を見失わないように凝視し、それから、こんなことがもう無いようにと、願った。

「斉射まで三十八秒!」

「ハイパー・ドライブ、発射と同時に作動します!」

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