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The ORPHAN 異伝 『千年の夢幻』  作者: 現王園レイ
◆TRADITION 5◆ “あなたと云う人”(ユーアン)
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74   宿命の再会

「第二の我が使徒(アポストロス)が来る」

 皇帝ユーアンは、アルダたちを見やって言った。

 互いに視線を合わせたアルダには、誰なのか分かっている。

「皇帝たちの試練を越えて、彼は盟約を果たしに」

「――陛下(サイアー)。お聞かせ下さい。いま何故シャ・メインが盟約を果たすのだと?」

 ルイーザ像は、ひっきりなしに動力炉の音を響かせていた。

 コンソール台を下りて、青白い(ハロー)を纏ったようなユーアンは、優雅に笑顔で答えた。

「彼もユーデリウス・プログラミングの因子。彼自身が望み、私が招いた」

「ヒブラではありませんでした」

「ヒブラではない。帝政から零れ迷った魂………道標を探して出逢ったアルダの向こうに、全てを包含するこの星を視たのだ」

「もしや……ダハトで会った、あの人が…シャ・メイン」

 思い当たって、ようやく納得がいった感がある。

「私は彼の望みを叶える代わりに、彼の命を借りることとした。――アルダ」

「はい」

「彼の魂は、憤りと哀しみの内にある」

 それ以上は言わない。

 しかし、それ以上を理解した。

 憤りと哀しみの産物は、虚無であるからだ。

『システム・ルイーザ消滅まで、あと五十四分………』

 無機質な音声は、彼の耳にも届く。

 ――――広大な空間。走り流れる光の筋。

 

 美しいとも形容すべきこのフィールドは、変化を遂げようとするエネルギーに溢れていた。

 誰がどれだけかかって造ったかは疑問の対象ではない。圧倒されるばかりに、一瞬佇んだのは正直な反応である。

「………」すぐに、自分は己が使命的任務を思い出した。

 力の入らない足を奮い立たせて、巨大な像のある真正面を見据えた。

 人影が何人か動くのが視界にある。

「……このペンダントが、母の形見――」

陛下(サイアー)……一千年の時間を、クラオン帝は…」

 途切れ途切れに、会話が聞こえた。

 聞き覚えのある、少年の声。

 

 見つけたぞ。

 

 殺気が目掛けて走る。

 気がつかないはずはない。

「――!陛下(サイアー)導主(ラウ)!お下がり下さい。彼が来ました。ここは私が!マイヤーも」

 ところが、ユーアンは導主(ラウ)を自分の腕の後ろへ下がらせた。

「待っていたのだから……」

 シャ・メイン――

 答えが欲しいか――

「探したよ。ノボア。生きてたな」

 憎悪に包まれて、手負いの追跡者は放った。

「ようやく会えた」

 

 

 

 

 ハイパー・ウェイブで現場の生中継をしているから、ダハトの星間共同主権(ザ・ガバメント)首脳たちは見ているはずだった。

 これだけの大任であるにも関わらず、何の感情も生み出さないのは、自分の心がそれだけ不毛なのだと思おうとした。

「――現在、リアクターの展開を終了、位置補正中であります。エネルギー充填から斉射まで………」

 うわの空、とまではいかないが、報告の声は遠くに聞こえる。

「艦外シールド、スタンバイ。科学船は後方で待機します」

 惑星の破片飛散を考慮して、ラントゥール星圏外にまで離脱し、それに伴って駐留軍も撤退させた。

 モニターに見えるのは、戦いに疲れた星と、網目状に覆うリアクター群。

 少し前に、ケイ中将は技術担当者に尋ねている。

(何処までの段階で、発射は止められるのか?)

 よくもこんなときに聞くものだと、下手をすれば査問会行きになりそうな質問を自ら恥じ入ったが、当の技術担当者は真面目に答えてくれた。

(光線が交差する前まででしたら可能です)

 よもや執行停止はしないだろうが……。

「お疲れでしたら、代行いたします――?」

 気を遣って、副官の一人が声をかけてきた。

「いや、それには及ばんよ。正念場を迎えて目を逸らすわけにも行くまい」

 微笑で返すと、副官は軽く頭を下げて一歩下がった。

「ああ……マルツァー司令官の話では、パワー・エージェントの収容がまだだと聞いたが、どうなったのだ?」

「未確認ですが、ラントゥールに数名残っていると窺っています。もう我々の手には負えませんし…情報局の高速艇でも脱出は不可能と」

 元から居住していた住民にも、ラントゥールと命を共にすると決めた者や、政府軍の収容から漏れた者もいる。投降しなかった解放戦線のメンバーなど―――。

「投降者の中にスヴェン議員と、ケラハー司令は確認を?」

「いえ。両者共にラントゥールに居られるようです」

「………そうか…。スヴェン議員も、星と散るお覚悟か…」

 出立前に、リヒマンはスヴェンについて何も言わなかった。

 政敵ながら、心根を知る同士だったか――?

 作戦室に、にわかに緊張が広がった。

「エネルギー充填に入りました!」

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