表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
The ORPHAN 異伝 『千年の夢幻』  作者: 現王園レイ
◆TRADITION 5◆ “あなたと云う人”(ユーアン)
71/82

71   任務と使命

 額に青筋を立てた形相で、シャ・メインの力は発揮された。

 三人が立っていた地面が、大型の重機でえぐられたようにして空中に浮かんだのである。

「クリアランス級には及ばないと言うことか!」

 アテンカが怒鳴った。

「最後の力だろうが! 奴は消耗している!」

 ギトリは腹立だしげに唾を吐く。

「でも、これだけ長期戦では明らかに私たちも不利なのよ!」

 メイランには焦りを通り越した、敗北感が漂う。

 そうするうちにも、浮かんでいる地面の端からボロボロと崩れ落ちていく様が見て取れる。球状に覆っているシャ・メイン渾身のパワーが、徐々に狭まってきているのだ。

「どうするんだよ!このままでは潰される!」

 三人、寄り集まって抵抗するも、シャ・メインが先を制し勢いづいてるのには、叶わないところである。

 圧潰の恐怖に慄きながら、ふとギトリは何かしらの変化を皮膚的触感で得た。

「………?」

 すばやく辺りを見回すが、これといったものはない。

 何か、起きている。

 空。

 地上。

(………違うッ。下だ?)

  彼らが立っている地面の下、目覚めた大蛇がのたうつような大地の鳴動(エネルギー)を、足元に感じた。

 途端に、身を寄せて立つ三人の視界が、斜めになった。

「シャ・メインのパワーが!」

 今にもとどめを刺しそうだったエージェントの気配が、忽然と無くなったのである。

 無論、巨大な土の塊はシャ・メインの作る力場で支えられていたため、自然、ラントゥールの重力に引きずり込まれた。

「飛べるか!」

 叫びながらメイランを抱え、ギトリが何とか飛び降りる。

探索(サーチ)しろっ! ギトリ!」

 着地と同時に土塊が地響きを轟かせ、四方に飛散した。撥ねる土を避けて物陰に身を沈める。

「――何てパワーだ……あいつを仕留められるのか…?」

 半ば驚嘆しながらシャ・メインが消えた方向を探すと、奇妙に不自然な穴がぽっかりと口を開いてるのが見えた。一見して明らかに人工的な穴。

「おい!奴が入りたがっていた洞窟じゃないか?」

 指差して、アテンカを呼ぶ。

「そうだろう。あたしたちと戦いながらも、離れようとしなかったくらい大事な穴だ。どうする?」

「ヒブラのと関係があるかもしれん。惑星破壊(ディストラクション)まで時間が無いが……高速艇を呼び出せ。脱出準備もしておく。――メイラン?」

 体力の衰えたメイランを、地上に残して脱出準備に充てようと同意を求めた。

「薬物注射したら追いつくわ」

「お前の任務は、ここからは俺たちの脱出待機だ。いいな?」

 返答する間も無く、ギトリとアテンカは洞窟の中へ消えた。

「………あたしは…エージェント失格なの………!」

 疲労困憊に頭を抱えながら、上空を見上げてエージェント収容艇とコンタクトを取り始めた。

 時間は既に夜であり、星の光に混じってリアクターの不気味な網目が、夜空を覆っていくのが彼女にも見て取れた。

「あたしは…帰らなくては――」

 そう呟いたのは、自己保存欲求からではない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ