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The ORPHAN 異伝 『千年の夢幻』  作者: 現王園レイ
◆TRADITION 4◆ 紫紺の玉座
67/82

67   帝政の記憶、ルイーザの追想

 その前後に内政的な落ち着きを得ると、ギャラクシアンとは異なる一派が帝政より分離し、ラントゥール星へ向かった。

 それはルイーザが、ユーデリウスと忌まわしくも衝撃的な再会を果たした星。

 グランスとの別れ、数々の予見を行った屋敷、ユーデリウスが兇弾に倒れた所。

 ルイーザの亡骸も納められた。………何故なら、グランスの魂もそこに眠っていたから―――。

 建造者(プランナー)が辛苦に祈るルイーザの魂を慰め、(きた)るべき者のためラントゥールを訪れ地下へと潜った。身は朽ちても、帝政の根幹を支える人柱になったのである。

 後々に墓標として星間自治連合の首都となるナッソーを建設し、黄金の瞳(ヒブラ)は今日まで闇に身を潜め、ただただ待ちわびた。

 ――同じ頃、ギャラクシアンが密かに設立したとされる『遺伝子(DNA)監視委員会』は、ユーデリウスの血脈を追って活動を開始。

 世に必要な人材も送り出す役目もあったが、その最たるものがユーデリウスと同じ血を引く人間を、ユーデリウス・プログラミング発動にあてがう事にあった。

 “血”にこだわる理由…それは、ユーデリウスの霊統が最も純粋に、強力に顕現しやすい(よりしろ)であるから得られた結論でもある。

 彼ら『遺伝子(DNA)監視委員会』が到達した存在――――帝政共同体第七十六代目皇帝、カロルシア=クラオン・ユーデロイト。

 若くして帝位を継承し〈緋い大帝(グランド・カーブ)〉と呼ばれた、帝政最後の皇帝。

 大権を掌握した後、泥沼になっていた連合との戦争に親征を行い、さ中に〈大消失(グレート・ミッシング)〉を引き起こしたと言われる。

 

『……数々の人々に愛され、力を借りてユーデリウスの元へと羽ばたいて往きました』

「――ルイーザ。母の美しさを教えてください。どのように愛され、どのように愛し、どれだけ豊かな人生を謳歌したか……太祖ユーデリウスが、どんな方でどのような生い立ちだったか……」

 時代を見つめ続けてきたルイーザの想い出は、像から放出されるエネルギーの帯に、映像のように映し出されてアルダや導主(ラウ)たちにも見ることができた。

 誰も知らない事実が生々しく再現される様は、詰め込んで収めきれないほどの、溢れる叫びにも聞こえる。

『クラオン帝は、太祖の血に連なる者として時期が来たために、辛い目に合われたデグレシアを母として生まれました。健やかにお育ちになられ、強い絆に結ばれた方々と出会われます。

 彼女が皇帝となるべく、人々を導くべく帝王学をグランス・タスカーの人となりから自然と学ばれました。……恐らくは最愛の魂でありました。最も魂が近く、共鳴を得ていたでしょう。

 レイゼンは比類なき忠臣として彼女に仕えておられます。己の使命を悟り、皇帝とグランスとの結びつきを守護する者ゆえ、お二方に命を捧げ、命を賭して使命を果たされます。

 少女イルゼは旅の途中拾われた迷い子……皇帝のお傍におかれ幼く純粋な少女の心は、大きな援けとなったはずです。

 テーベ……この者は人にあって人にあらず…運命の惑星デルフォイにおいて得られた神託――皇帝の権限に匹敵する帝政全土のシステム支配を許され、能く皇帝を補いました。

 それからクロイカント――――。『遺伝子(DNA)監視委員会』に廃棄された実験体とされていますが、『D.O.(ディーオ)』の幹部として際限ない能力を発揮するよう、仕組んだのも『遺伝子(DNA)監視委員会』なのです。彼は突出した才能を持ちえながら、クラオン帝を愛でられました。皇帝も、皇帝ではなくただの女性であったならば、至福の愛を享受できたことでしょう。

 彼がどれほど喜びに満たされたか、わたくしには申し上げられません。しかし、女神と称賛されるところは、皇帝としての“力”の裏返しでもあるため、本来の意志が甦ると共に彼の元を去らねばなりませんでした』

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