65 遠き血、遠き魂
――惑星グーヤーで、貴女に呼ばれてから――。
ルイーザを真正面に見据えて、なにも考えるところ無く、自然と足が前に進み出た。
アルダの眼には、ユーアンが権威ある皇帝の着衣を纏い、まるで玉座へと歩んでいるように映る。
「還っていらっしゃいました……。哀れな黄金の瞳の元に…」彼女のかすれた声に、一同が頷いた。
かつてあった帝政共同体の皇帝たちは、あのようにして皇位継承を知らしめたことだろう。そしてユーデリウスの意志を受けたのだと、高らかに宣言したのだ。
だが、この孤高の皇帝は、何を治すというのだろう。
なおも歩を止めることなく、皇帝は向かう。迷いは感じられない。その先に、ルイーザの近くにあるコンソール・デッキが彼を待つ。
階段を上がって今一度、哀しい女神と対面をした。
言葉はない。
それなのに――彼女と交わしているような感覚――。
(再会は、果たされましたね…黄金の瞳ルイーザ…)
“……かつて、〈緋い大帝〉と呼ばれる者が在りました。わたくしは太祖ユーデリウスの、かねてからの願いでその者を守護し、導きました。彼女は終わりの名に血を残すでしょう……母の手を離れ、眠りにつく幼児は呼ばれるのです………”
――「ユーデロイト」は、ユーデリウスの意志を継ぐもの、皇位継承者の証
――「グレス」は、母からの唯贈り物、永久なる至高の息吹
――「ユーアン」は、あなたと言う人…汝在る者
――「ウティス」は、何者でもない者
(存じております。私は、私であって私ではない者……『在る者にしてたれにも非ず』――名はいただいております……しかし黄金の瞳の承認を得ねば、私は太祖が開かれた鍵門に拒まれてしまいましょう――)
“ああ!鍵門!――わたくしは………わたくしの名を呼ばれたのは……懐かしい…その響き……”
(ユーアンは、参りました)
“…ユーアン……その名は…遥か遠き時間の彼方から定められていた、高貴な名―――ギャラクシアンにすら託されず、ユーデリウス御自身により語られるものです………わたくしの呪縛を解くために……わたくしの祈りの内に、夢を観る者よ―――お待ち申し上げました…”
(――貴女の力及ぶなれば、見せて欲しいのです。輝かしき御世を。太祖の魂を。我が母の優しさを)
この宇宙で随一の、希代の巫女は微笑んでユーアンを見つめた。
“良いですとも。ユーデリウスが血を受けた、寂しき孤児よ……”
そこから先は、ルイーザの声を聴いたか、定かではない。
そっと、コンソールの上に指を滑らせた。
名を――
名を云うがよい――
誰の名を?
血の名を――
初めの名には初めの名……
〈ユーデリウス〉
先なる刻印は、
〈レヴィンス〉
後なる刻印は、
〈カロルシア〉
終わりの名には終わりの名……
〈ユーアン〉
還るのです――
遠く貴き血の流れよ、遠く分かたれた魂よ――