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The ORPHAN 異伝 『千年の夢幻』  作者: 現王園レイ
◆TRADITION 4◆ 紫紺の玉座
60/82

60   その星の天と地で

「制圧軍本隊のケイ中将より、電文が入っております」

 副官の声で、マルツァーは目が覚めた。

「今出る」ごそごそと、仮眠を取っていた寝椅子の上でうごめく。

「いえ…中将のお計らいで、録画でありますので、返信は不要とのことであります」

 ふーん、とまだ眠たい頭を抱えて、上半身を起こした。返信の不要な連絡なら増して不要なのだがな。寝ぼけついでにいらぬ悪態をついてみる。

「まあ……律儀な女だし…」

 二次元スクリーンに映る女性将官を眺めつつ、上着を羽織ると二つほどドアをくぐってブリッジに上がった。

「あと五時間後か…」

 惑星破壊(ディストラクション)のリアクター到着と、即時展開までのカウントダウンである。

 ラントゥール星住民の収容は打ち切り、上空の艦隊も撤退終了し、一応は予定通りに進んでいることに、自尊心を満足させた。

「到着した後が大変そうだ。――――そういや、おい。ラントゥールからの怪しい発信電波はどうした?」

 急に思い出して、近くにいた士官に問いかける。

「は…司令官殿が無視せよとおっしゃいましたので、命令どおりでありますが……」

「まだ発信されてるか?」

「暫く前に途絶えております。試しに受信を?」

「………いや、いい。これ以上の面倒は止めておこう……地上部隊の撤収は」

「既に終わってます。あとはパワー・エージェントの回収だけです」

「“狩り”が続いてるか…中央情報局から文句は来ていやしないだろうな」

「元々管轄外でありますから、当方として二十五時間前に、協力打ち切りを通告しました」

「結構」

 エージェントの徹底した取り扱いには、密かに舌を巻く。

「…攻撃衛星の回収は?」

「損壊したものはしておりません。惑星破壊(ディストラクション)には邪魔でしょうか」

 そんな事を聞くなよ。とでも言うように口を尖らせて、手を横に振った。

「俺は担当者じゃない。ケイ中将殿でなくてはわからんだろ。――――? 呼んだか?」

 先ほど彼を昼寝から起した副官が、マルツァーのキャプテンシートをノックするので振り返った。

「その、ケイ中将は、何とおっしゃってましたか?」

「なに?」

「後で指示を貰うようにと言われております」

「そっ……そんな話は聞いてないぞ。そんなに重要だったか?」

 慌ててキィを叩いた。

 

 

 かなりきつめに舌打ちしたい気分だった。

 せっかく捕捉しかけた獲物を、見失ったからである。

「なんてことだ!」

 “裏切り者狩り”をするため、彼の前に現れた敵の攻撃をかわしつつ、アルダたちが消えた方向をスキャンする。

「こんな手間取るとはっ!」

 いたしかたがない。シャ・メインよりランクは低いが、それでも三人集まってのパワー・エージェントである。

 くわえてヒブラ使徒(アポストロス)もどうにかしなくてはならないから、その分エネルギーは分散されるのだ。

 物陰に隠れてやり過ごしながら、ヒブラの行方を追う。

(奴らより先に、ノボアのパターンが追跡できなくなった……ヒブラの要塞に入ったと言うことか?たぶん、生体の個体登録で管理しているとすれば――殺した使徒(アポストロス)かノボアのパターンに擬態してみるか……)

 その価値はありそうだ。

 そして、それが先決である。

 シャ・メインは反撃を止めると、使徒(アポストロス)が消えたポイントを探しだす。およそのデータは彼の能力を最大限に生かして取っていたから、最大限に引き上げられた分析能力は、瞬時に判断を下した。

 あとは小うるさい連中を、せめて足止めできれば……。

 焦っているのは、シャ・メインだけではない。

「メイラン!集中力が落ちている!」

 ややキレ気味にギトリは叫ぶ。

「こんな長期戦向きではないのを、忘れたか!」アテンカは庇ってか、代わりに返答した。

「あっ?」

 メイランが、素っ頓狂な声を上げる。

「なにごと!」

「シャ・メインが」

 人の体が宙に飛び出すのを、三人は目撃する。

「そんな芸当まで!」

 嫉妬が入り乱れ、三人の均衡が崩れた。

 その隙を突いて、上から経験のないエネルギーが降り注ぐ。判断は遅れた。

「暫く這い蹲(はいつくば)ってろ」一時的な神経麻痺で、力を失い地に崩れそうな三人を尻目に、使徒(アポストロス)の消えたポイントへ身を翻す。

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