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The ORPHAN 異伝 『千年の夢幻』  作者: 現王園レイ
◆TRADITION 4◆ 紫紺の玉座
58/82

58   ミトコンドリア・イヴの子ら

「――似てると?」

「面影は―――さて、他に言いようがございません。が、彼も選ばれた御人のようでございます」苦笑しながら導主(ラウ)は答えた。

 史学に習う情報だけでは、理解は得がたい。ユーアンは知りたい衝動に駆られる。

「ユーデリウス・プログラミングの観点から…と言うけれど……何故それが重要な判断の分け目となるのでしょう」

「母上様は、自らの宿命を果たすために、生涯に二人の人物と出会います。と言うより出会うべきものでした。なぜなら母上様のお力は、女性であるがゆえに内向してしまうので、来るべきユーデリウス・プログラミングのためには外へ向ける必要性から、切替スイッチのような依代(よりしろ)が傍にいなくてはならなかったからです。その一人が少女、一人がIMSのグランス」

 何故、切替スイッチが必要であったか、と言う点にも彼女の特性が現れている。

 その答えは、ユーアン自身の存在。

 あたかも歴史は造られるべきもの、大いなる予定に積み重ねられるもののようだ。全ては太祖ユーデリウスの誕生から、ルイーザの魂の解放まで、紆余曲折しながらも推し進められた遠大な計画である。

「クラオン帝は帝政に集える魂の解放と、ルイーザを救うための二重の使命を負って生まれ、力を為したのです。

 それは、人為的で自然な生命体――クラオン帝の母、つまり陛下(サイアー)のお祖母様が『遺伝子(DNA)監視委員会』により、何らかの肉体的精神的情報操作を施術され身柄を帝政移送の後に――いよいよ待たれた運命の御子であったがゆえに」

 ユーアンは、少し混乱した。矛盾が多すぎる。

「情報操作をしながら、どうして自然な生命であるといえるのです? ――つまり、人工的な生命体では僕は生まれ得ない、と?」

「生まれる御子(おこ)には、確かな親の愛情が必要でございましょう」

 導主(ラウ)は簡潔に答えたが、こうまでして計算ずくめの歴史に、自然発生した愛情もあったものではない。裏は、読むべきである。

「おかしいんだ……母が選ばれた人だとしても、お祖母様が選ばれた母だとしても……血は、混じる。混じり続けるものでしょう……」

 それは古代連綿と絶え間なく。

 それが突然、何の条件もなしに、無作為に選ばれたような人間が、こうも重課を負えるものか?

 導主(ラウ)は、後ろに控えるアルダとマイヤーを振りかえった。

 二人とも、ユーアンの問いには答えられるわけでもなく、導主(ラウ)の言葉を待っている。そんな彼らに微笑み、ヒブラの長老は慎重に、しかし過去より積み重ねてきた推論を、口から滑らせた。

「真相はそこからでございます。――――理由は一つ。ユーデリウス大公家の血を持つ者であればこそ」

「ユーデリウスの血筋だと言うのです?」

 思わず、アルダが割って入ってしまった。

 当然ながら驚愕を持って迎えられ、微かに動揺した空気が流れた。

 陛下(サイアー)の手前、無礼であるを咎めもせずに、導主(ラウ)は穏やかに続ける。

「これは幾世代ものヒブラの道士(メンター)や、私より以前の導主(ラウ)たちが、遥か永い時間を経て得たもの―――。恐らくギャラクシアン・グループ又は『D.O.(ディーオ)』では、当然のこととしていたでしょう」

「しかし、帝政の皇帝は生涯独身制であると……」

「さようでございますな」顎を撫でて、導主(ラウ)は嘆息した。「難解な問題点です」

 どんな人間であれ、そんな矛盾は気がつきそうなものである。

「ギャラクシアンはともあれ、『遺伝子(DNA)監視委員会』 は大公家の血を追って、数々のデータを取り続け後世に残してきました。

 太祖に子孫はいませんが、その姉君の娘がおられた。

 唯絶対的に母から子へ連なる、遺伝子とは異なった生態を持つ情報体は、密かに『D.O.(ディーオ)』によって追跡され、あるところで強制的に彼らの手に収められたのです。それが陛下(サイアー)のお祖母様にあたるデグレシア様にして、母上様のクラオン帝が生まれることとなり、結果その直系である陛下(サイアー)がこうしておられる。

 しかしながら、いま陛下が言われましたように、皇帝は生涯独身制であり、まして血は繋がりえない公選制でもありました。ユーデリウス自身も、血統(ブロッド)による皇位継承に肯定的では有り得ず、霊統(スピリチュアル)的な継承を望まれたとして、ルイーザ様やギャラクシアンの承認を得た者が皇位に就いたのです」

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