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The ORPHAN 異伝 『千年の夢幻』  作者: 現王園レイ
◆TRADITION 4◆ 紫紺の玉座
56/82

56   黄金の瞳が降り立つところ

「………暫くは大丈夫でしょう……ここが、〈玄室〉への入り口にございます。ルイーザのまします部屋へは、徒歩にて参ります」

 呼吸を整えてカートを降りると、道士(メンター)使徒(アポストロス)の二人が〈玄室〉のコントロール・ルームへ走っていった。

 銃撃された使徒(アポストロス)は、出血が無いので修復剤と保護剤で、簡単に処置する。

 それぞれ彼らを待つこともなく、導主(ラウ)とアルダ、マイヤーとユーアンたちは、目的地へと足を進めた。

 ヒブラたちが住まうこの巨大な空間は、何処へ行っても湾曲した天井とドーム型で、そして暗褐色や赤褐色に彩られた、単一的な構成でできている。

 厳重なセキュリティが施されているらしく、目指すところに行くまでは、ゆっくりと流れる逃げようの無い、長いスライド・ウェイを行かねばならなかった。

 行く道に、導主(ラウ)は歴史の紐を解く。

「……ここは、一千年の昔、現在の星間共同主権(ザ・ガバメント)が発足する前身、星間自治連合であったときに、その中心に栄え華やかな装いに輝いていた、ラントゥール星の首都ナッソーの大深度地下に建設されております。当時の連合や帝政の民はおろか、我々の真上に住む者どもも、この真実は知りませんでした――――」

 黄金の瞳(ヒブラ)ルイーザの面影を抱くヒブラ信教団の本尊は、帝政と勢力争う連合の足元に息づいていたのである。

 起源はL.M.(ラストミレニアム)四〇〇年の辺りに発する。

 いまだ帝政に拮抗しうる力を得ず、連合としての形を成す以前のこと、ルイーザの嘆きを聴く者たちが何処からとも無くラントゥール星に移住して、街を興し、やがて地に潜ったという。

 然るべき後に、ラントゥールは連合の中心に繁栄する。

「…ルイーザの声を聴いたというのは、誰なのです?」と、ユーアン。

黄金の瞳(ヒブラ)様が生前には、その直属の諮問機関であったギャラクシアン・グループに啓蒙された方々、と聞いております……お恥ずかしい話ですが、我々はあらゆる知識を所有しながら、我々の祖先(ルーツ)を詳しく知らないのです。ルイーザの魂が彷徨うように、我々も彷徨い、伝えられたものだけを信じてやってまいりました。独り残され、哀しみのうちにひしがれるルイーザを、ただひたすらお世話するためだけに在るのでございましょう―――しかし、そのために多大な犠牲が払われてしまったのは………」

 ――識る者は云うであろう――――。

 “初めから何も無く、在るとすれば既に終われるもの。即ち、無”。

 さて、一行はスライド・ウェイの端に着き、広い空間の中へと導かれた。

 上を見れば、どこの光景なのか、星や星雲のホログラフが浮いている。

「ここは歴史の間でございます。――ご覧下さい。ここには帝政の歴代皇帝が住まう部屋なれば、彼らも陛下(サイアー)を歓待することでしょう」

 円形の部屋には、壁に沿って何かが乗るであろう、彫刻めいた土台がいくつも並べられていた。

 導主(ラウ)が手を振り、土台から光が差したかと思うと、次々と人の形を結んでいく。

 そのどれもが荘厳で風格ある装いを纏い、胸を張って鋭い視線を一点に向けていた。

「……これは…?」

「彼らはみな、ユーデリウスの意志を継いだ者達……」

 誘われるように、ユーアンは踏み出した。一般的な歴史は習っている。アカデミズム史学は詳細も真実も伝えてくれはしないが、その頃に輝いていた人物が、生前の姿で収められている。

 ユーアンは、それぞれの顔を一巡しながら、かねてより心にある人物を探した。

 その空気を読んで、導主(ラウ)は一方向を指し示す。

「第七十六代目皇帝カロルシア・クラオンは、あちらに」

 導主を振り返って一瞬戸惑いを見せるも、指された方へ向かう。

 果たしてあるかな、『緋い大帝(グランド・カーブ)』の異名をとるその姿――――。

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