表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
The ORPHAN 異伝 『千年の夢幻』  作者: 現王園レイ
◆TRADITION 4◆ 紫紺の玉座
49/82

49   皇帝の称号

 なんということだろう。運命はここまで必然的に偶然を起こすものか…?

導主(ラウ)! この方――この方をどうされたのです?」

「どう?これはまた、どうしたことか。この少年は自ら〈回廊〉内に入ってきたのだ。疲労激しく傷を追っていたので、治療し眠っている。お前がここに呼んだのではないのか。されば少年には、アルダのマーカーが残されていればこそ」

「いいえ。いいえ!確かに、この少年にはノボアと言う名があり、解放戦線に所属しているところを見知っております。故あってマーカーは残しましたが、まさか、ご自分でここに――」

 あっけにとられて、アルダは少年の顔を見つめた。

 導主(ラウ)は、そのアルダの横顔を見る。

道士(メンター)ヘンクがダイブをして、彼の内を診ている。少しは私にも話はできような?」

「………」

 半ば震えそうな手で、泥や砂がきれいに拭き取られ擦過傷の残る頬を撫でた。

「―――政府エージェントにマインド・コントロールを施され、何故か同じ部隊に潜入していたエージェントに保護されておりました。その様子があまりに異常でしたので、もしやと思いダイブしてできる限りの解除コードを刻み込んだのですが……エージェントの反撃に会い、見失っておりました」

「ふむ…しかしそれだけでは理由にならんな……聞いてよいものか?疑問はいくらでもある。少年が〈回廊〉に入った理由や…――」

「………明かすべきでございましょうか――全てはルイーザが導き給いし定めを、ここまで来て、ここまであまりにも抗えぬ潮流に、多くが呑み込まれておりますのに……」

 異様な雰囲気に気がついてか、独房の外で哨戒する使徒(アポストロス)がチラと、中を見た。

「よほどの訳がありような。しかし一人でその重きを背負うのであれば、我々とて手助けできん。どうしてそこまで自分を追い詰める?無理にとは言わんが、いくらかはこの導主(ラウ)にも荷を軽くできる手はあるのだぞ」

「我侭を咎められても仕方ございません…」

 なおかつ躊躇ためらいがある。

 マイヤーには、彼女の苦しさが理解できた。事情は、誰よりも知っている。

 だからこそ、自分の判断が吉と出るのか、凶と出るのか迷いも生じ、そして何より―――伝説は伝説でしかないのかと言う、不確かさ。

「アルダ。道士(メンター)マッシモたちが言うような事も、もっともだけど……自分は、信じてきたんだろ? ヒブラに産まれた者は、それだけを糧にここまで来たんだ。それを無駄にはできないよな」

 マイヤーの言葉は、重い。 

 少年の額を撫でながら、アルダは顔も上げずに頷いた。

「――――運命でございます。導主(ラウ)。全ては私たち、ルイーザも、太祖ユーデリウスも運命でございましょう。どうぞ力をお貸し下さい」

 その場は静寂に包まれた。

「この方は、去る十年ほど前に〈玄室〉に現れまして、私に『我を見失うな』と厳命なされました。そのために私が生まれたのだと。太祖ユーデリウスの代理である母クラオン帝より、哀しきルイーザの魂を救い解放することを託されておられ………それゆえ遥か古い時代に皇帝たちが、ルイーザの代理であるギャラクシアンより皇帝の称号と承認を得たように……その名を直接ルイーザから賜れておいででした。

 この方は、ルイーザに呼ばれ、ヒブラのために出向いてこられた、その名を―――ユーアン・ウティス――」

 かつてその名は、広大にして強大な力を持ち、深淵なる太祖の教義を知らしめた。

 民は、その魂と共に在った。

「……グレス・ユーデロイト」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ