表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
The ORPHAN 異伝 『千年の夢幻』  作者: 現王園レイ
◆TRADITION 4◆ 紫紺の玉座
48/82

48   主従、相見え

「違うぞ! 道士(メンター)もおっしゃっただろう。ヒブラを助けるためだ。ひいてはこの星や、ラントゥールの住民たちも助かることになる」

「政府はヒブラが真の敵であると認識しているからこそ、惑星破壊(ディストラクション)が執行されると言うのに!なんて愚かしいことを!」

「そうだ! 手遅れなんだぞ!」

 説得は無意味かと思いつつ、二人は同志たるべき使徒(アポストロス)に話しかけた。

「手遅れではない。我々は、ヒブラが間違った方向に行っていると、判断したから道士(メンター)マッシモに賛同し、行動を起こしている」

「でも、それではヒブラはルイーザの意志でなく、個人の身勝手さで舵取られることになってしまう」

「ヒブラの、人としての営みは永い間、ルイーザゆえに制限されすぎたのだ。息を潜め、足跡も残さぬようにし、影すら見せぬよう生きてきた。外の新鮮な自由の空気を知らずにな。それゆえ道士(メンター)は、時代から取り残されるのを危惧し、ひそかにヒブラの解放を望んでおられた」

導主(ラウ)を否定するの?」

「ヒブラを取りまとめ、秘儀を伝えるなどと、期待もできないユーデリウス・プログラミングを盲目的に信じてどうなると言うのだ。我々はいまもこうして生きているというのに」

 道士(メンター)マッシモの言い分も理解できるし、彼らも彼らなりにヒブラのことを考えての言動である。導主(ラウ)たちはヒブラの教義に基づき、マッシモたちは人としての生き方に基づいた考えなのだ。

 恐らくは、惑星破壊(ディストラクション)までされようとしている状況に、くすぶっていたものがヒステリックに爆発したのだろう。

(気がつかなかったことを悔やむべきかも……旧い因習に囚われて、個人の幸せを取り違えたと言うのか)

 反分子と呼ぶものではない。

 あって当然の在り方。

 そのことに気がつくと、アルダには急に自分の信念や言動が、人を殺してしまっているのではないかという、不安に駆られる。

 ここにきて、それが問われたのだ――

「この部屋に入っていろ」

 スタンガンで小突かれながら、マイヤーとアルダはドアをくぐった。

「アルダ!マイヤーも…」

導主(ラウ)!お怪我はございませんか」

 マイヤーが駆け寄り、アルダは自責の念にとらわれながら後に続く。

「申し訳ありません…導主」

「何を謝るか。まだ何も起きてはおらぬ。それより、その風体はなんだ二人とも」

 導主は顔をしかめて、二人の傷の具合を医師に確かめさせる。

「来る途中に、エージェントに出くわして応戦してましたら…ねぇマイヤー?」

「そうです。最初は一人のエージェントだったのですが、そのうちに三人増えて、そいつと戦い始めたのです。政府エージェントにも何故か裏切り者が出てるらしく、その抹殺に出向いた連中かと思われ、その隙をついてかろうじて〈回廊〉に入ることができました」

「そうか。無事でよかった。〈回廊〉に入ってしまえば、安全であるしな……しかし、探していたのだぞ」

「エ…」

「お前の探し人ではないのか?」

 一瞬戸惑うアルダは導主に背を押され、部屋に入るとき見えていた、奥にあるカプセルの前に立たされる。

 カプセルに入るぐらいだから、誰か重傷でも負ったかと思ったのだが……。

「この少年に覚えはあろう」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ