表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
The ORPHAN 異伝 『千年の夢幻』  作者: 現王園レイ
◆TRADITION 4◆ 紫紺の玉座
47/82

47   それは、生存か延命か

 マルツァーは、その電文を聞いて、妙な顔をした。

 ヒブラを含む解放戦線からの、いかなる通信をも傍受、と言うか相互通信は禁止されており、まして政府軍以外の回線は封鎖していたはずであったからだ。

「通常、解放戦線が使用する回線ではないようです」

「どこからか?」

「ラントゥールの地上ですが、現在は放棄された都市部からの通信です」

「それが自ら『ヒブラ』と名乗っただと?」

「何度も確認はいたしておりますが……」

「降伏の意思あり、と言われてもだな…」

 突拍子も無いことで、マルツァーは判断に困ってしまった。

 が、ほうっておくわけにも行かないので、通信オペレーターには以下のように指示した。

「無視してよし」

 これを学者だとか、ランミールトのような情報局の深部にいる人間だったら、抗議の声を上げていただろう。またはこの現場にいたら、もっと違う指示を出していたに違いない。

 惑星破壊(ディストラクション)を直後に控え、これ以上面倒を起こしたくないのと、命令に忠実であるべき職務であったことが幸か不幸か、『ヒブラ』の名の価値も詮索せずに切り捨てたのである。

「この回線もだめだと?」

道士(メンター)マッシモ。最初から間違っているのです。こんなヒブラにあるまじき行為、許されるものではありません」

 マッシモ一味に銃を突きつけられ、ヒブラのオペレーターはどうにか抵抗した。

「ヒブラのことを思ってこそ、やっているのだ!お前だって閉塞した世界から逃れたいであろう!どけ!」

 ヒステリックに叫ぶと、オペレーターを押しのけ、自分で計器をいじり始める。

「どうなんだ? わざと通信できないように妨害しているのか?」

道士(メンター)マッシモ!いまさら無駄だと言ってるのです!これ以上はヒブラに災いをもたらします!」

 体を張って、マッシモを後ろから掴みかかった。

「お前!道士(メンター)から離れろ!」

 使徒(アポストロス)の一人がオペレーターを、銃床で殴りかかる。

 途端にその場は、乱闘騒ぎになってしまった。

「お止めなさい!」

 鋭い女の声が、背後から響く。

「何をしてるのです!道士(メンター)たちとあろうものが、この場で見苦しい真似を!」

 女は、アルダだった。

 いったい何をしてきたのか、着衣はあちこち擦り切れて、血がにじみ出ている。見れば隣にいるマイヤーも疲れを隠しきれない様子で立っていた。

「………! アルダ!」

「エージェントからようやく逃れてくれば、この有様。どうしたというのです?」

 数人が自分の回りを取り囲むのに、不信の感情も露わにマッシモを睨み付けた。

「私はヒブラのためを思ってやっている。理由はそれだけだ。お前にも邪魔されないよう、導主(ラウ)と一緒に閉じ込めておく」

 手で合図すると、アルダとマイヤーは、導主(ラウ)たちのいるところへと連行される。

 かつてないヒブラの異様な空気に、彼女はおよそを理解した。

「自分たちだけ助かろうとしているの?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ