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The ORPHAN 異伝 『千年の夢幻』  作者: 現王園レイ
◆TRADITION 4◆ 紫紺の玉座
44/82

44   不穏な空気

「何か見えたかね」

「―――はっきりとは見えません。が、我々の知る黄金の瞳(ヒブラ)のような、映像を――」

 この少年は、何を知っているというのだろう。

 信じられないものを見てしまった人間は、目の前の真実を受け入れられない場合に、都合よく情報を歪曲させて思い込ませる。

「たぶん、でも、あの姿は誰でも得られる情報ですし、増してラントゥールにいる解放戦線のメンバーであれば、一度や二度は目撃して……」

 ヒブラの機密情報の管理は、千五百年ほどは確実に「機密」にできたくらいの厳格さである。ますます説明しにくいものにしてしまったのには、気が付かないようだ。

 導主(ラウ)は、しごく簡単な矛盾を指摘する。

「表面的な思い込みは止めたまえ。星間共同主権(ザ・ガバメント)がマインド・コントロールして、ここに潜入させるなど容易いこと。だが、なぜアルダが彼に接触し、なおかつ痕跡になるような事を施し、そして何より不可解なのは、ここに入れたことだ。ヒブラの千年、培ったテクノロジーのセキュリティーは、こんなにも簡単に破られるものだったのか?なぜ、あれは彼を受け入れた?」

 答えなど、出るものではない。

 静かになった室内で、導主(ラウ)は指示を出した。

「念のためこの少年を、使徒(アポストロス)用の独房へ移すのだ。目が覚めたら私を呼ぶように。それとアルダを探しなさい。彼女の話も聞かなくてはならないだろう。惑星破壊(ディストラクション)まで時間が無いのだから、惜しんで時間を有効に使わねばならない」

 現実的な対応である。

 とはいえ、にわかに降って沸いた話、柔軟に受け入れれる者がどれだけいるのだろう。

 所詮は人の集まり、多種多様にそれぞれの意思は重なり合うものである。時には、反目も。

 導主(ラウ)は少年について誰にも話すな、とは言わなかった。緘口制限が無かったので道士(メンター)ヘンクと、同行していた使徒(アポストロス)の目撃談は他言されることとなり、『自由使徒(アポストロス)アルダが関係する、不審な少年』の存在は、瞬く間にヒブラ内にいたものには知れ渡った。

「ヒブラに飛び込んだものがいる」

「汚されてしまうのではないか?」

星間共同主権(ザ・ガバメント)のマインド・コントロールを受けていたそうだが…」

導主(ラウ)が許可をしたそうだ――」

「――アルダの自由を許すから、こんな事態になってしまうのだ」

「なぜそんな不審者を、つまみ出さない?」

 口の端に上る取り留めの無さは、ルイーザに対して頑迷な信仰心を持って止まない、道士(メンター)使徒アポストロスにも及んだ。

 存亡の危機に鈍い拒絶的な彼らの動きは、ヒブラも一枚岩でないことを示唆している。

 あるいは、その存亡の危機を目前にしているからなのか。

「認められないものが、このヒブラに交わろうとしている」

 何を根拠とするプライドか、不純物を排除に取り掛かろうとした。

 徒党を組んで導主(ラウ)のもとに苦情を呈するが、「全ては私情により、ヒブラに害は無い」と、一蹴される。

「分かっていような?…導主(ラウ)は、惑星破壊(ディストラクション)などによる心痛のあまり、判断を誤ったのではない。元々、ヒブラを導く資格が無いのだ。彼のような者がルイーザに選ばれたなどと、今後のヒブラの汚点になる前に……」 

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