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The ORPHAN 異伝 『千年の夢幻』  作者: 現王園レイ
◆TRADITION 4◆ 紫紺の玉座
42/82

42   ヒブラの胎内へ

 零れたように、伏した顔の傍らに煌めくペンダント。

 ヒブラの紋章は、彼の嘆きに応えたかのようだった。

 ブン…と、機械的な音が低く響くと、紋章の刻まれた壁の上から一筋の光が差し込んで、気を失っている生命体を捉えたのである。

 生きているかのように周辺をぐるりと光点をあて、それから彼の肉体をスキャンするように足から頭へと移動、それから顔の辺りでペンダントを捉えると、その光はそのまま動かなくなった。

 そして直後、紋章は左右に割れた。

 そこは扉になっていた。

 ゆっくりと、力強く開いていく。

 空間があるのだ。砂が音を立てて彼の体もろとも、扉の向こうへ飲み込まれた。

 しかし砂の勢いは中途半端で、完全に体を動かすことができず、膝下が来た方の世界に取り残されてしまう。

 本来ならば閉まるはずの扉も戸惑うのか、閉まりかけたまま動きを止め、緑色の灯りがせわしなく点滅した。

 

 

「あっ?」

 当直のオペレーターが、すっとんきょうな声を上げた。

「どうしたか?」

 後ろに控える道士(メンター)が尋ねる。

「〈回廊〉の扉が通常とは異なる状態で開きっぱなしになってます! 今は使用されてない扉なのですが!」

「なんだと? 扉が閉まらない? メンテナンスに漏れは無いはずだろう。間違いないか!」

「手違いは考えられません!ですが、侵入者らしき生命体の移動が確認できず、ディフェンサーの作動もありません。実際に見てみないと」

「――よし、使徒(アポストロス)は武器も持ってついて来い!他にも巡回中の使徒(アポストロス)がいたら連絡をするんだ。…導主(ラウ)にも知らせるように」

 反応は早かった。

 にわかに騒々しくなるオペレーション・ルームから、カートが猛スピードで飛び出す。

道士(メンター)、故障ではないのですか」

「それはルイーザに対する不敬な言葉に値するぞ? …しかし故障だとしても――」

 カートは天井高く、褐色の金属洞内を走りぬけ、やがて細く曲りくねった〈回廊〉に入った。

「例の扉まで四分ほどです。第一八三ポイントです」

「構え、いいか! 手前百メートルから徒歩で接近する!」

 道士(メンター)の一喝で、銃器をガチャガチャと脇に固めた。

 多少のGを体に負担をかけて、カートは鈍い音を出し止まる。

使徒(アポストロス)はシールドを張れ。一人は外界周辺の様子を探知、一人はディフェンサーのチェックだ。残りは私についてこい」

 装着した双眼鏡で倍率を上げ、問題の扉を見やる。

 僅かに閉じよう努力している扉の間に、砂が入り込んでいた。

「ここはだいぶ使われていないな…向こう側に砂塵が溜まりに溜まっている。……どうか?」

道士(メンター)。外には何も確認できません。安全です」

「ディフェンサーも異常なし。生命反応だけあるようです」

「判った。よし、行くぞ。後方から支援怠るな」

 じりじりと接近を始めた。

 安全確認の上、壁沿いに慎重な歩みを進めるが、何が起こるか分かったものではない。緊張の余り汗が噴出してくる。

 肉眼で砂溜まりが、はっきりと見て取れ、少し足早に駆け寄った。

 相変わらず門扉の上には、緑色のライトが点滅を続けて、膝まづいた使徒(アポストロス)の一人が声高に言う。

「人が埋もれていますっ」

 二、三人の手が一斉に砂を掻き払った。

 半分埋もれ、やつれた少年の体が現れる。

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