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The ORPHAN 異伝 『千年の夢幻』  作者: 現王園レイ
◆TRADITION 3◆ 其は汝(な)が名なり
40/82

40   憎しみのシャ・メイン

「どうした?」

「ユーデリウスから始まったのだと思う?」

「……彼がいなければ、こうはならなかったと思いたいが…彼でなくても、誰かがやっていただろう」

 ただ、ユーデリウスと言う名であっただけなのだ。

「そうね……」

 スピードは出ているはずなのに、流れる風景はゆっくりとしていた。

 これから起こる運命のうねりが、時間と空間を歪めているのだろうか。

(なんとしてでも、陛下(サイアー)を迎えねば………!)

 何と願おうと、「事」は起きている以上、対処せねばならない。

 アルダをマーキングしている、エージェントが気にかかる。

 あの男に妨害される前に、彼に接触できればいいが……。

「〈回廊〉に入ったら、私は潜入(ダイブ)してみる。それから接続したままで行こうと思うけど、大丈夫かな?」

「パワー・エージェントのレベル次第だ。奴は強そうだな。ビリビリきてるよ」

「――――違う。何か……膨れ上がったものを感じる…複数的な威力だ」

「!大体のエージェントは撤退したのではないのか?」

「だといいのだけど。もしも“彼”狙いだとしたら、かなり厄介ね。道士(メンター)使徒(アポストロス)は臨戦態勢が取れるか疑わしいし」

「……死んでも阻止する覚悟がないと、だめなようだ」

 マイヤーは、笑った。

 それが何故か、彼女に不思議と安堵感を与える。

(良かった…)

 マイヤーと言う、最大の良識を味方に得たことが。

 だいぶ時間が経った。

 ヒブラ本拠地に到着するまで、もう少しである。

「ここらで乗り捨てるかい?」

「そのほうがいいかしらね」

 エア・フライトのスピードを緩めた時だった。

 急激な風圧を受けたように、アルダが体を支えて悲鳴を上げた。

「アァッ!」

「来たか!」

 エア・フライトのキャノピーを緊急ボタンで吹っ飛ばすと、二人は投げ出されるように外へ出る。

「あの男!」

 目に見えないエネルギーが、アルダに向かって飛んでくる。

 かろうじて身をかわすと、地面が大きくえぐれた。

「シールドを張れ!」

 数メートル先からマイヤーが叫ぶ。

「耐久テストをしたのか!」

 嘲笑するような、あの男の声がした。

 暗闇からキーンと音がして、二、三本の閃光が走る。

 一発が瓦礫に当たって火花が散り、一発がマイヤーのシールドで弾かれた。

「こんなものでッ」

「ヒブラは、こんなものか?」

 エア・フライトにまたがり、レールガンを構えるシャ・メインが現れた。

「――我々は、攻撃するための力ではない!」

 叫び返すと、脇にある鉄屑のような塊をシャ・メインに振り投げた。もちろん、腕力ではない。

「防御に徹すると言うか!立派なものだな」簡単に鉄屑を粉砕する。「自らが、この銀河系宇宙の最大の敵であるのを恥じていないとは!」

 エア・フライトを地上に降ろして、蹴飛ばして倒すと、アルダを睨みつつマイヤーにも攻撃した。

「仮想敵に仕立てたのは星間共同主権(ダハト)だろう!」

 飛びのけながら、マイヤーは物陰に隠れた。

「仮想どころか!帝政の亡霊めが、世迷いごとを!」

 生々しい、怒りの塊が押し寄せる。

(これでは防ぎきれない? クリアランス級は、こんなにも!)

 圧倒的なパワーの格差に、アルダは体勢を立て直そうとした。

「あの少年を放り込んでおいて、星ごと消そうとする輩が!」

「ノボアか…あんな小僧がヒブラにとって、何の価値だと?」

 アルダの眼前でオーロラのように光が散った。シャ・メインの直撃を食らって、エネルギーが四散し、シールドで防いだもののダメージは大きい。

 そこに加えて、複数的な存在が近づくのを感じる。

(これもエージェントか?)

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