表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
The ORPHAN 異伝 『千年の夢幻』  作者: 現王園レイ
◆TRADITION 3◆ 其は汝(な)が名なり
37/82

37   狩り

 一方、アルダのサーチをしていたシャ・メインは、ぬかりなくギトリたちの追跡を感知していた。

 ただ、ノボアやアルダなどを監視するために、彼のエネルギーは閉じ込めておくわけにはいかない。

「漏れたパターンを…?珍しく感度がいいのがいる。誰だ…」

 夜も更けた闇にシャ・メインは立った。

 ノボアへの再接近をやめ、別方向へ移動し始めたアルダに向かっていたのだが、このままでは鉢合わせも否めない。

「まとめて相手するには俺一人と均衡が取れんな。しかしクリアランス級の力を存分に発揮できるのはいいことだ」

 顔に布を巻き、手袋のベルトを引き締める。

 エア・フライトの操縦桿を握り締め、くわえていた液状の基本食パウチを振り捨てた。様子を窺っていた夜行性動物が音を立てて逃げる。

 部隊を引き連れていたときに、だいぶ迂回していたから解放戦線の本部には程遠い。アルダが向かっているだろう先までは数百キロあるあるだろう。

 一晩飛ばせばどうにか追いつく。

 廃墟と言うジャングルを縫うように飛び始めた。

(エージェント狩りはこいつらだけではないだろう)

 考え事をしていて、『月』(ムーン)明かりの下に急に視界が開けた。

 一千年の間に破壊され朽ちた都市郊外を走る”高速道路“だ。路面を支えていた柱が点となってかつての線を描いている。

 迷いもなくシャ・メインはそのラインに沿うように進んだ。

 モーター音が響く夜の静寂に、耳の後ろがチリチリと髪の毛が焦げるような感触が走る。事が起こる前兆なのだが、構わず進んだ。

 無表情に掴んでいたハンドルを離し、右手を水平に横へ動かす。

 ――と、その右手から数十メートル先で火柱が立った。それとともに爆発音が轟き、何かがシャ・メインめがけて飛んでくる。

 爆風に乗って来たかのような動きもものともせず、彼は片腕を振り上げて跳ね除けた。反動でエア・フライトの進路がブレたが、上げた腕の肘を後ろからひねり戻して体勢を整える。

「逃げるかシャ・メインっ!」

 初めてそれは声を上げた。

「………」

 なおも無視して彼方を目指す。

 声の主はチッと舌打ちをすると、再びアタックをしかけた。

 シャ・メインのエア・フライトよりは向こうに分がある。

 シャ・メインの前に回り込み、刃物(ブレード)を振り下ろした。

「なぜ命令に従わないっ!」

「下がれ!」ギラと瞳を光らせて、シャ・メインは反撃した。

 ブレードを危うく交わし、相手を蹴飛ばす。そこに集中した意識を持っていき増幅した自分のエネルギーを打ち込むと、エア・フライトのエンジンが片方落ちた。

 さらに相手の腹へもう一発、と狙いを定めるところへ砲弾が彼の脇を掠めた。唇の端を噛んで砲弾の出どこらしい方向へ、出力しそこなっていたパワーを飛ばす。爆発したのは一箇所だけではない。

「この程度!」

「クリアランス級だからといって自惚れるな!」

星間共同主権(ザ・ガバメント)が鈍いからさ!」

 ”裏切り狩り“のエージェントだった。シャ・メインとは面識がない。

 後ろから首に腕を掛けて頭を抱えこまれた。

「――お前は黙って本星に戻って、安穏としてるがいい!」

 腕を後ろに回し、シャ・メインはエージェントの頭を掴むと前へ引き剥がした体に衝撃を与えた。

「俺はヒブラを倒す!」

「…!」

 死と驚愕をない交ぜにした表情で、弧を描き落ちていくエージェントに眼もくれず、彼はエア・フライトの姿勢を制御すると走り出す。その先に、シャ・メインは目標を捉えたのを知覚していた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ