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The ORPHAN 異伝 『千年の夢幻』  作者: 現王園レイ
◆TRADITION 3◆ 其は汝(な)が名なり
34/82

34   我が名はユーアン

『僕は―――』

『私は―――』

 二重の音声が彼女に向かって発せられた。

『私は、いまルイーザより名を得た――』

 空気が、急に冷えたように硬直してくる。

「ルイーザが…名を与えた……」

『名は―――ユーアンである』

『ユーアン・ウティス=グレス』

 二人は峻厳な口調で語りながら、彫像とコンタクトを取るように振り返る。

 それからまたアルダを見やって、言を継ぐ。

『―――太祖ユーデリウスは、クラオン帝により自らの民を手元に揚げられたが、ルイーザは己れの哀しみの呪縛に閉ざされ、解放を待ち望んでいる。

 私はユーデリウスの力を借りた母の代理として、そしてユーデリウスとルイーザの願いを負い、ルイーザの鋼鎖(かなぐさり)を解くために在る――。

 黄金の瞳(ヒブラ)に集いたる者を労おう。我は”ユーデリウスの意を継ぐ者“「ユーデロイト」の称号を得る者』

 何という――!

「貴方がヒブラを導くというのですか?霊帝(ユーデリウス)が望むと?お母上の代理って――」

 その瞬間に一気に湧き上がる思いの中、言葉にできる疑問はこれだけであった。

 そんな少女の思いを知ってか知らずか、ユーアンと名乗る彼はオレンジの瞳からより強い光を放つ。

最終千年期(ラスト・ミレニアム)が終わりを告げる。紫紺の玉座に(いま)す皇帝に、分かたれた御霊があるなれば、呼び合い引き寄せるは自然であろうと云う。

 ヒブラ解放のために、汝(いた)つべしと――――汝、アルダよ。我を見失うな。私はまたこの星に来る。………我が呼んだがために人の手により生まれた者よ、惑わされるな』

我が使徒(アポストロス)――』

 彼女にそう命令すると、ノイズが走ったように姿は掻き消えた。

 余韻の残る現場に、大人たちが駆けつけたのは数分後だった。

「どうしたことだ!〈玄室》に?」

「間違いありません。異常な数値のエネルギーがここに出現していました」

導主(ラウ)にも知らせよ!」

「〈玄室〉内および〈回廊〉にトラブルがないかチェックしろ!ディフェンサー!」

「まったく機能しておりません。と言うより不具合があった痕跡すらありません!正常に稼動中!」

 血相を変えて走り回る連中から、アルダはこっそりと離れた。

 今”ユーアン“から言われた事と、彼の姿を忘れないように。

(ユーデリウスの分かたれた魂に…使徒(アポストロス)の任を命ぜられました――)

 こころ密かに、ルイーザに思った。

 ――浸ってしまった。

「違反かもしれないけれど…マイヤーの力を借りれたら…」

 一度は飛び出してきたものの、ヒブラの元に戻らねばならない。

 唯一の理解者であろうマイヤーに連絡をすべく、彼の派遣先部隊へ向かう。

 自殺行為を承知で機体の高度を上げると、モーターの悲鳴も聞く耳持たず、空気を切り裂くほどにスピードを上げた。

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