10話【激動の1日の終わり】
間隔が空いてしまいました、申し訳ありません。
ノーナさんに見送られ、後ろ髪を引かれる思いで外に出る。
ノーナさんが再び建物の中へと戻っていくところまできっちり見送ってから、ようやく俺は通りへと視線を移した。
休息期に変わってから時間が経っているからか、人の往来は建物の中に入る前よりも明らかに減っていた。
少し視線をやれば、数多く並んでいた露店も、そのほとんどが店を畳んでいる。
外が明るいのに人通りが少ないなんて、変な感じだ。
視線を少し上にずらすと、通りに立ち並ぶ幾つかの背の高い建物が眼に入った。
とは言っても、5階建てを誇る冒険者ギルド本部とは、比べるまでも無いが。
それぞれの建物の軒先には、鎚や薬草を模したマークが彫られた看板が掛かっている。
一見して鍛治屋や薬屋だと見て取れるが、それにしては規模が大きい。
恐らく個人の建物では無く、もっと大きな集まり、そう、ギルドの所有する建物なのだろう。
どうやらこの大聖堂の西側に伸びる大通りは、様々なギルドが建ち並ぶ通りでもあるようだ。
ちなみに、冒険者ギルドのマークは、剣を模した物である。
左を向くと、20歩程歩いた場所が、大きく開けているのが見て取れた。
恐らく、あそこが広場だろう。
歩を進め、広場へと辿り着くと、一気に視界が開ける。
大通りと同様に一面石畳の横長の長方形をした広場は、1000人は集まれるであろう広さを誇っていた。
最も、それだけの大きさを誇る広場も、時間が時間だからか、数える程度の人が行き来する程度である。
そして、開けた視界、その左側には、巨大な建築物が聳え立っていた。
そう、何度か名前だけ出て来ていた、ゼロニア大聖堂である。
とにかく大きい。
子供みたいな感想で申し訳無いが、それが初めて見た時の率直な言葉なのだから仕方ない。
遠くからでも視認出来ていた為、小さくはないとは思っていたが、これ程とは思わなかった。
ひょっとしたら、この国で、いや、下手をすればこの世界で1番大きい建造物では無いだろうか。
5階建ての冒険者ギルドの建物と比べても二回りは大きいそれは、周りの建物とは規模が違った。
おまけに遠目で見て判る程、精緻な造りをしている。
正面から見える、中央部分と両翼の3つの建物どれを取っても、この世界の技術の粋が尽くされている事は明らかだ。
大聖堂の正面、中央部には、巨大な時計盤が設置されており、短針が指す数字が10までしかないこの世界独自の時計は、現在、2時を大きく回った時刻を示していた。
また、時計の上部には、鐘が鎮座している。
恐らく、区切りの時間になると、その鐘の音が一帯に鳴り響くのだろう。
近くでもっと良く見てみたいと言う欲望に駆られるも、俺は当初の目的を思い出し、踵を返した。
俺が向かうべきは、大聖堂とは正反対の方角、南の方角だ、北では無い。何、これからはいつでも見れるんだ。慌てる事は無い。今は宿舎に行くのが先だ。
そう自分に言い聞かせながら、広場から南側へ伸びる大通りへと歩を進める。
大聖堂から南に伸びる大通りは、先程居た西に伸びる大通りとは趣が異なっていた。
通りの両脇に、宿屋や飯処がずらりと並んでいる。
酒場なんかもあって、軒先のテーブルに寄り掛かりながら酒を酌み交わす男達の楽しげな声が、通りに響いていた。
冒険者ギルドを含め、西通りの建物が、休息期に入って営業を終える一方で、こちらの通りは全くそんな気配が無い。
軒を連ねる店の種類が違うと、こう言ったところも違ってくると思うと面白い。
さて、俺は喧騒の中、既に『冒険者ギルド宿舎』と書かれた看板を掲げた建物を発見していた。
と言うか、南通りの感想は、若干現実逃避的なものが含まれている。
何故なら、ギルド長が言っていた通り、宿舎は広場の直ぐ近くにあった。
あったが。
「大丈夫か、ここ……」
そう言葉が出ざるを得ない程、建物の外観が古めかしかったからだ。
石造りの3階建てで、周りの宿よりも一回り以上は大きい。
通りに面している部分だけ見れば、冒険者ギルドよりも大きいかもしれない。
外部の装飾は簡素で、実用性重視の施設である事が見て取れる、とでも言っとかなければやってられない。
はっきり言おう。ボロい。
ところどころ塗装はハゲているし、建物全体も大分老朽化している。
周りを見れば、俺のイメージ通りの外観をした華やかな宿屋が大なり小なり店を構えている中で、この建物だけ年季が入りすぎている。
なんぼか素通りして別の宿屋に入ろうかとも思ったが、俺はここが都市部である事を思い出した。
おまけに、今いる大聖堂から伸びる大通りなんて、一等地も一等地だろう。
そこに居を構えていると言う事は、何処も一流、宿代も非常に高いに違いない。
そこを行くと、このボロい建物改め冒険者ギルド宿舎は、立地こそ良いが、この見た目だ。そこまでぼったくられる事も無いはず。それに、俺の全財産は、謎の声が用立ててくれた金貨5枚だけなんだ。高い宿屋に泊まっている余裕は無い。何、最悪やばかったら別の店を当たれば良い。
そう理論武装を終えた俺は、意を決して建物の内部へと突入した。
中に入った瞬間、それと無く内装を確認する。
中は外観程古くは無く、まずは一安心である。
入り口から見て真正面に受付があったが、誰もいない。
仕方ないので受付に近付き、
「すみませーん、宿泊をしたいんですけどー」
と、少し大きめの声で叫ぶと、奥から亜麻色の髪に少し白髪が入り始めたおばさんが、姿を現した。
おばさんは、外套を目深に被った俺を見て一瞬眉を上げたが、直ぐに俺に向けて、
「表の看板を見たかい?
うちは冒険者ギルドの宿舎だよ」
と、冷やかかに声を投げ掛けた。
どうやら、ギルドカードの提示を求めているようだ。
不審者お断り、って事ね、はいはい。
首に下げていた灰色のギルドカードを引っ張り出しておばさんに見せると、おばさんは小さく鼻を鳴らした。
「何だ、冒険者かい。
そうならそうと早く言いなよ」
おばさんはそう言いながら、古ぼけた紙を1枚提示してきた。
紙にはミミズがのたくったような文字が踊っていたが、不思議と意味が解る。
ここでもしっかりと語学チートが発動しているようだ。
謎の声に感謝である。
「ざっと説明するから良く聞いてな。
1人部屋に素泊まりで、1泊の値段は、銅貨20枚、銅貨50枚、金貨1枚の3種類だ。
飯は1食ごとに銅貨5枚、受付の右側の通路の先に食堂がある、飯代は給仕を受ける時に支払って貰うよ。
行水は、左側の通路の先にある浴場を使いな。
ただし、利用にはその都度備品が必要だからね。
値段は銅貨5枚、使用後の備品は必ずここに返して貰うよ。
後は、個別にお湯を用意する事も出来るけど、別料金で銅貨5枚掛かるから注意するんだよ。
これは使い終わったら部屋の前に出しといてくれれば、後で回収するからね。
あぁ、そうそう、部屋の使用期間は、支払いを済ませてから20刻、つまり丸1日だ、超えた場合は1泊分余計に掛かるから気を付けな。
それと、トイレは共同の場所があるからそこを使う事、部屋には無いから気を付けな。
解ったかい?」
おばさんの説明は、紙に書かれた内容をそのまま読み上げただけのものだったが、俺は黙って頷いておく。
案の定、非常に安かった。
冒険者ギルドの宿舎だから特別安いのか、それとも建物がボロいから安いのかは置いておくとして、素泊まりが銅貨20枚から出来るのは大きい。
1日3食食べて、行水までしても1日あたり銅貨40枚で済む計算だ。
成人男性が1日生活するのに金貨1枚との事なので、その4割しか掛からないのは、手持ちが不安な今の俺には非常に助かる。
とりあえず、行水は俺の見た目の問題が解決するまでは先送りだ。
少しもったいないが、お湯を頼む必要がある。
「1番安い部屋を1泊お願いします。
それと、お湯と入浴の備品もお願いします」
「あいよ、銅貨30枚ね」
そう言って、おばさんが手を差し出してきた。
成る程、料金は先払いか。
ズボンの右ポケットから金貨の入った袋を取り出す。
金貨を1枚渡し、お釣りに大銅貨6枚と銅貨10枚を受け取った。
「名前は?」
「ゼロ・クロサキでお願いします」
おばさんが名簿に俺の名前を書き込んでいる間に、お釣りを袋に入れようとしたが、ふと、何故わざわざ銅貨を混ぜたのかと言う疑問を覚える。
不思議そうな表情を浮かべる俺に、おばさんは、名簿に視線を落としたまま、説明してくれた。
「どうせ金貨しか持っていないんだろう?
ご飯も食うなら、大銅貨じゃ支払い出来ないからね」
うぅむ、このおばさん、愛想は無いが、出来る。
そうして支払いを終えてから、大事な事を聞き忘れていた事に気付いた。
「すみません、ツケって出来ますか?
これからも泊まりたいんですけど、まだ必要な物を買い揃えていないので、手持ちが心配なんです」
ノーナさんの話を聞く限りでは、冒険者を始めるに当たって、結構初期投資が掛かりそうであった。
必要な物を買った後に、お金が無くなっている可能性もある。
その時に泊まる事が出来る場所が有るか無いかは、非常に重要な問題なのだ。
「ツケかい」
と、おばさんは言ってから、言葉を続けた。
「ツケは宿泊費の分のみ有効だよ、備品や食堂の代金はツケが利かないから気をつけな。
後、ツケは必ず期の終わりには払って貰う事になってる。
支払いが遅れると、最悪黒軍に突き出す事になるから気をつける事、良いね?」
「ありがとうございます、ご丁寧にどうも」
十分過ぎる説明に、俺は感謝を伝えておく。
これで少し金銭面に余裕が出来た。
しかし、だからと言って、支払いをしなくても良い訳では無い。
冒険者稼業で、しっかりと稼ぐ必要があると言う事だ。
しかし、おばさんは、ツケの支払いは期の終わりだと言っていたな。具体的にはいつ支払いなんだろうか。そして、1番大事なのは、今日は何日なのか、と言う事だ。
「えーっと、今日って何日ですか?」
「しっかりしなよ、今日は暖期の10日だよ」
「あ、そうですよねー。
ありがとうございます」
お礼を言いながら、おばさんの言葉に胸を撫で下ろした。
と言うのも、語学チートに付随した知識の中に、暦に関するものがあったからだ。
この世界の暦では、1年を4つの期に分けており、それぞれ、暖期、熱期、冷期、寒期と呼ばれ、100日ずつ存在する。
暖期は比較的穏やかな陽気が続き、1番過ごしやすい時期だ。
熱期は気温が上がり、暑い日が続く。
雨が多く降るのもこの時期の特徴だ。
冷期は暑さが緩み、ほんのりと肌寒い日が多い。
そこから更に冷え込むと、寒期である。
寒期は熱期とは打って変わって猛烈に冷え込む。
場所によっては雪も降るらしい。
そして、寒期から徐々に暖かくなり、再び暖期を迎えるのだ。
要は、日本の四季のようなものだと考えれば、解りやすいだろう。
つまり、この世界の暦は、月の代わりに季節ごとに区切りがあり、1日あたりが短い分、日数が多い、と言う特徴がある訳だ。
そんな訳で、今が暖期の10日なので、支払いの期日まで、後90日近くある。
つまり、最大で銅貨1800枚、つまり金貨18枚の支払いをツケに出来ると言う訳だ。
いやー、良い時期に送ってくれたもんだ。
謎の声に感謝しながら、鍵と入浴の備品を受け取り、部屋の場所を教えて貰う。
お湯は、暫くしてから部屋の前に置いといてくれるらしい。
部屋に置く荷物も無いので、俺は先に飯を食べる事を決めた。
鍵と備品を脇に抱え、受付のおばさんにお礼を伝えてから、俺は受付の右手側にある通路を、奥へと進んだ。
食堂までは一本道で、特に迷う事無く到着した。
食堂の出入口に掛けられた時計は、現在、休息期3刻を指している。
大分遅い時間だが、50近い席は半分程埋まっており、時間を考えれば盛況だ。
会話を弾ませ、赤ら顔で木製のジョッキを傾ける男達の姿がそこら中で見受けられる。
窓から入り込む光のせいで、昼間から酒を呑む駄目な大人に見えなくも無い。
ちなみに、当然と言えば当然だが、女性は少ない。
只、全く居ない訳では無い、今も数人程食事をしているのが窺える。
驚いたのは、その人達の顔立ちが全員整っていた事だ。
勿論、この世に舞い降りた天使、ノーナさんには敵わないが、皆、冒険者よりもモデルの方が似合いそうである。
そもそも記憶を辿ると、この国で出会った人は男も女も、俺の基準からすれば全員、と言うと語弊があるが、ほとんどの人が美形であった事を考えると、何と言うか、格差を感じずにはいられない。
言葉にならないやるせなさを感じながらも、突っ立っていては邪魔になると思い、大人しく給仕の列に並ぶ。
この問題はこれで済まそう。
異世界だから、そういうもの。
そう結論を出して思考を停止した俺は、順番を待ちながら、前の人の様子を眺め、大体の手順を把握する事に努めた。
どうやら、列に並んで、自分の順番が来たら、給仕の人の前に置かれた箱にお金を投げ入れてから、飯の配膳されたお盆を受け取れば良いらしい。
配膳の順番が近付くと、料理の良い匂いが鼻をくすぐった。
腹の虫が大きく鳴り、俺はそこで初めて、自分の腹が空いている事に気付いた。
気を張っていた為にそれどころでは無かったが、身体は正直のようだ。
さて、どんな物が出てくるやら。
何だかんだ、こっちの飯を食べるのはこれが初めてだ。
飯は非常に大切な要素である。
飯が不味いだけで、どんなに快適な環境でも生活していくのは難しい。
逆に、食事さえちゃんとしていれば、どんなにきつい環境でもそれなりにやっていけるのだ。
そう言う点では、前の世界は非常に優秀だったと言える。
さて、この世界はどうだろうか。
美味いものが出て来ると良いなぁ。
そう考えながら、目の前の箱に予め用意しておいた銅貨を5枚投げ入れてからお盆を受け取り、空いている手近な席に座った。
ついにこの世界の料理とご対面である。
どんな絶品、もしくは下手物が出て来るのかとワクワクしながら、料理を見た。
しかし、次の瞬間には、俺は首を傾げていた。
何故なら、何処かで見たような献立だったからだ。
そして、その何処かとは、前の世界に他ならない訳で。
献立は、前の世界の言葉を借りるなら、パンにホワイトシチュー、サラダと言ったところか。
勿論、別の名前があるのかも知れないが、現状知る訳も無いので、1番しっくりくる料理名を並べた結果がこれだ。
と言うか、見たまんまである。
いや、別に悪くは無いんだよ? 目茶苦茶不味いって事は無いだろうし、味だって判るし。只、目新さとか、サプライズ的要素があっても良かったなー、とか、思うんだよねー。
そうは言っても、腹が空いているのは事実で、俺はとりあえず「いただきます」と挨拶をしてから、パンに手を伸ばした。
パンは色が黒みがかっていて、表面が固い。
いわゆる黒パンと言う奴だ。
白く柔らかい食パンしか知らなかった俺には、中々のショックである。
何とか端の部分を引きちぎり、口に運ぶ。
「固いな……」
数回噛んでから、思わず言葉が漏れる。
噛み締める程味わいが出てくると言えば聞こえは良いが、現代っ子の俺にこの固さはきつい。
周りはこの固いパンをどうやって食べているのかと気になり、こっそり盗み見る。
豪快にかぶついている人も居たが、幸いにもそれは少数派のようで、シチューに浸しながら食べるのが一般的であるようだ。
確かに、スープを吸ってパンが柔らかくなるし、味も染みる。
実に理に適っている。
そんな訳で、周りの真似をして、ちぎったパンをシチューに良く浸してから口に運んだ。
改めて咀嚼し、飲み込んでから頷いた。
うん、美味い。
これなら断然食べやすい上に、濃い味のシチューの味がパンの甘さでまろやかになっている。
次にサラダを口に運ぶ。
これもいけるな。
一見何も掛かっていないようだったが、口にしてみると、ほんのりと塩気を感じる。
これならいくらでも食べられそうだ。
興が乗って来た俺は、シチューの肉を頬張った。
これも美味い。
何の肉か判らんのが玉に傷だが、噛み応えが良く、咀嚼する度に旨みが口に広がる。
そうして、パンにシチューを付け、サラダを口にして、と繰り返していると、気付けば全て食べ切っていた。
皿に残っていたシチューもパンで拭ったので、一滴も残っていない。
いやー、美味かったー。
俺は余韻に浸りながら息を吐いた。
ご馳走様でした。
手を合わせて食後の挨拶をし、席を立つ。
食器を返却口に下げ、俺は上機嫌で食堂を後にした。
我ながら現金だと思うが、食べる前に感じていた不満は、すっかり無くなっていたのであった。
受付の右脇にある階段に昇り、2階の通路を左に曲がった、突き当たりの角部屋が、俺に宛がわれた部屋だった。
部屋の前には、既にお湯の張られた金盥が置かれていた。
鍵を使って扉を開け、恐る恐る中を確認する。
狭い。
広さは大体4畳程度で、その半分近い部分をベッドが占め、ベッドの側に1ヶ所だけある窓には、分厚いカーテンが引かれている。
それ以外には何も無い、説明されていた通り、トイレも無い。
良く言えばシンプル、悪く言えば殺風景な部屋だ。
だが、文句は言うまい。銅貨20枚ならこんなもんだろ。寧ろベッドがあるだけ優秀だと思うね。
カーテンを何度か開け閉めして、室内の明るさを確認する。
窓から入る光を遮れば、随分と薄暗くなる事が解り、安心する。
明るいままでは、熟睡出来るか不安だったのだ。
問題なく寝れそうな事を確認してから、まだ湯気の立ち上る盥を室内へと引きずるようにして運び込み、扉に鍵を掛けた。
外套をようやく脱ぎ捨て、一息吐く。
そのまま服と靴も脱いでしまい、ベッドの傍に纏めると、備品の1つである布を湯に浸し、良く絞ってから身体を拭き清めた。
さっぱりとして気持ち良い。
だが、やはり布で拭うだけで無く、行水したいし、もっと贅沢を言えば、熱い湯舟に入りたいなとも考えてしまう辺り、異世界に来ても、感覚は日本人のままだと実感した。
そのままベッドに横たわり、枕元に置かれていた薄い布を身体に掛ける。
ベッドはやや固かったが、気になる程では無かった。
身体の力を抜き、暫くの間、開放感に浸る。
俺は低い天井を眺めながら、今日の出来事を思い出していた。
過労死から始まって、異世界転移に、黒髪黒眼の問題、ノーナさんとの出会いに、ギルド長とのやり取りと、こうして並べて見ると激動の1日だったな。
これから、上手くやっていけるだろうか。
最初は理想の世界だと手放しで喜んだが、実際は問題だらけだ。
未だ確認出来ていないチートはどうなっているのか。
そのチートをくれた謎の声の正体は、一体何なのか。
目的はあるのか。
そもそも、何故、俺だったのか。
考えても、解らない事ばかりだった。
そうやって取り留めも無い事を考えている内に、俺はいつの間にか微睡みの中に落ちていた。
こうして、前途多難な俺の異世界生活は、幕を開けたのだった。
以前程書く時間が取れませんが、少しずつでも続きを書き進めるようにします。
ご意見ご感想お待ちしています。




