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 このONE by ONE VRを開発するまでには涙ぐましい開発サイドの物語があるのだが、今回は一部を省略してVRをどう活用して実用化出来るようになったのかを簡略的に伝えていきたい。




 そもそもなぜVRは多大な欠陥を抱えたまま世に出ることになったのか。それに気付いたのが切っ掛けだった。


 VR機器は脳を騙す機能がついている。その機能は発売時は全開で使用されていたが、開発段階では五感を犠牲にしてある程度まで制限することが出来たのだ。

 だが、それはとてつもなく現実感が希薄だった。ただの立体映像に匂いや音が付加されていて触れるという程度で、この程度では客に売り出すことは不可能な程だった。

 それに気がついたVRの開発者達は限定を少しずつ解除し、現実的な世界に最低限必要なリアリティを再現した。

 最低限というラインを探るために、開発者とテスター達はテストの為にVR制限版に潜り続け、VR環境に慣れていった。

 さながら毎日成長する麻を飛び越えて修行したという忍者のように。

 結果的に、彼らは一般人を遙かに越えてVRに適応してしまったのだ。


 自分達が大丈夫なのだから客も大丈夫だろうという自信のもとVRは発売され、非難を浴びた。

 不幸なのは彼らが追加テスターを募集しなかったことだ。情報漏れを警戒してなのかはわからない。だがVRの情報を知りたがっている個人や会社などからハッキングを受け続けていたという噂を考えればその警戒は当然だろう。


 その不幸な話を同じ業界のよしみとして聞いたとき、私たちは閃いてしまった。

「VR適性を鍛えられるのなら、限定版を彼らがやったように少しずつ限定解除して鍛えればいい」と。


 それに気付いてからは早かった。開発チームを立ち上げ、VRを利用したゲームの骨組みを組んでいった。

 限定解除するために様々な動作の熟練が必要になるということに気付いてからは更に加速した。少なくともアクションを含んだゲームにしなければならないという方向性が見えてきたからだ。

 幸いなことにこれほど大コケしたハードに最初ほどの注目の目は集まらなかった。精々が同業者の「あの会社は潰れるな」という目だ。


 そして三年間走り続け、ついに完成をした。

 それぞれの生まれ持ったVR適性を検査し、それに沿ったパターンでVRを展開することによって情報酔いをなくし、

 少しずつ適正を育てていくことで限定解除をし、キャラクターを強化するゲームが。

 テスター達にも存分に遊んでもらい、不具合もなくした。


 そうして様々な困難を乗り越えていった。だが、そうしていっても更に問題が残ってしまった。値段だ。

 この問題はなかなか解決しなかった。VRサーバーの維持の困難さと、従来のサーバーでは到底処理しきれないデータ量の大きさがあったからだ。


 VR機器そのものは安価で手に入る。だからこそ機器よりも安い値段を付けないと客は食いつかない。しかもVRはもう既に悪イメージがついてしまっている。

 尚更安くしていかなければならないが、VRのサーバー維持には他のゲームの売上では賄いきれない程の金額がかかってしまう。それを考えるとそこまで安く収めるのが難しかった。

 企業広告を呼び込んで安くするにしても、客がつくかもわからない、悪評が広がっている商品にわざわざ金を出して広告を打つ企業はない。

 VRの駄目さが広まった弊害が料金設定に響いてしまっていた。


 そうして悩んで悩んで悩み抜いた。

 結果、たどり着いたのは基本無料一部課金制という前時代の遺物とも言える制度だ。




 なぜ、この制度が廃れたかというと、運営のバランス感覚の無さが問題だ。


 多人数が同時にプレイするゲームでは、どのキャラも努力次第でヒーローになれる。

 しかし、課金をすることでインスタントにヒーローになってしまう。他の人間の努力と時間を無視して強さを手に入れられるのだ。


 それは運営のバランス感覚が良い内は良い方に作用する。

 課金者にはほんの少しだけ色を付けて、努力もしなければちゃんとした強さを手に入れられないというようなバランスならいいのだ。課金をする人間もお金を受け取る企業も程々に満足していられる。


 しかし、運営が欲を出してしまうと一気に駄目になってしまう制度でもあった。

 まさしく地獄の沙汰も金次第。努力では絶対に追いつけないような物を売って無課金者を追い詰めることもよくあることだった。更に不正アカウントの削除でさえも課金者には行わないなんてゲームもあったほどだ。

 そして、欲を出してしまった企業が多すぎた。

 次第に客離れを起こし、それで減ってしまった収入を回復させるために更に課金をつり上げ、客を減らす。そんな悪循環を起こし、だんだんと一部課金を導入したゲームはなくなっていった。


 このゲームもそんな末路を迎える可能性はあるが、それでもそうするしかこのゲームを世界に発信する方法はなかったのだ。




 そんな運営の苦労と苦心の結果、ついにこのゲームは日の目を見たのだった。

次からが本編です

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