奇襲
アメリカが起死回生の奇襲攻撃を行います。
アスリート飛行場が奇襲を受けたのは夜も明け切らぬ明け方の事だった。
レーダーは作動してたのだが、管制官が居眠りをしてたのだ。
おかげでアスリート飛行場は火の海となり、多くの戦死者を出してしまった。
幸いにもパイロットだけは難を逃れたが・・。
彼等は万一の際に絶対に助かる様に、宿舎は飛行場から離れた地下のコンクリートに
囲まれた宿舎に寝泊りしてたのだ。
航空機は喪われたが、パイロットが助かっただけでもヨシとするべき。
だが、この攻撃で微妙なバランスが一時崩れてしまった。
「Gよ、アスリート基地が奇襲を受けたそうだぞ。」
「予想はしてましたが、思ったよりは早かったですね。」
「・・・冷静だな。どうしてだ?」
「敵さんも命がけなんですよ。前世でも長官の提案で行ったパールハーバー奇襲で
受けた損害に対する報復攻撃として、B25を空母に搭載、東京その他を空襲しています。
アメリカは舐めたら大怪我をさせられる手ごわい国なのですよ。」
「ならどうして敵地を取らない?」
「取っても維持出来ません。それに陸軍に増長されるのは好ましくありません。」
「お前の陸嫌いも相当なモノだな。」
「前世の陸軍が本当の役立たずの極潰しでしたから。」
まあ今の陸助ではロクな事は出来まい。
予算も人も信頼も無いのだからな。
海軍も万能では無いが、占領政策は取っていないので、大丈夫だろう。
サイパンの奇襲は痛かったが、空母を派遣し、基地の復興が出きるまでは、
空母艦隊を貼り付けておこう。
コレで大丈夫だと思う。
アメリカ陸軍は空母が派遣されるや、連日の如く爆撃機や戦闘機を派遣したが、
下手糞パイロットの比率が70%を超えてる現状では、洋上を動く艦艇の
撃沈などと言う芸当は不可能なのだ。
ましてや鬼の坂井、太平洋のリヒトフォーヘン笹井、烈風虎轍、空の武蔵と言う
剛剣みたいなパイロットが揃ってる空母部隊には一歩も近寄れずに居た。
被害ばかりが上昇してたが、それでも戦果が皆無と言う事は無かった。
そう・・。
一番機の管制を離れてしまった三番機を食われる事態が起きてるのだ。
特に二番機から一番機になったばかりの編隊の三番機がカモにされてる。
敵のパイロットも生き残りが増えて来たのかも知れない。
「マッカーサー長官、被害は相変わらず多いのですが、戦果もボチボチとですが、
上昇して来ました。レップウを三機も撃墜しています。」
「昔ならたかが三機と言ってたかも知れぬが、ルーキーばかりの我が軍のパイロットが
戦果を上げれる事自体が素晴らしい。
特にレップウには煮え湯を飲まされているからな。
その戦果を上げたパイロットを連れて来い。
彼等をねぎらってやる。」
「・・・長官、その戦果を上げた彼等ですが、着陸時に車輪を折り、
機が炎上。重症を負っております。
戦果はガンカメラで確認しました。コレです。」
見ると確かにレップウに射撃を放ち翼をへし折ってる映像が残されてた。
その代償が我が身の重症になるとは・・。
「・・・分った。彼の容態が落ち着いたら本土に帰還させ、
退院後は本土の教官に回せ。
例え一機でも撃墜出来た彼は我が軍の英雄だ。
丁重に治癒し、本土に送還させろ。」
「アイアイサーです。」
今まで戦果皆無だったアランことレップウを撃墜した彼は、どんな宝石よりも貴重な存在だった。
何としても助け、経験を後輩に伝えて欲しい。
二週間程経過すると、彼は輸送に耐えれる程度までは回復出来た。
本土に移送し、本土の病院で集中治癒をする事になる。
あぁ、彼の名は・・「リチャード・アイラ・ボング少尉」だ。
輸送指揮官には丁寧かつ慎重な操縦で彼を送る様に言明してある。
早く元気になってくれよ。ボング少尉、いや中尉か・・。
彼は功績に拠り進級してたのだ。
アスリートの悲劇から約一ヶ月。
機動部隊が張り付いてたおかげで、飛行場施設は前以上に充実。
母艦部隊のパイロットもそのままアスリートに赴任し、アスリートは
世界最強の戦闘機部隊となってた。
数日、ルーキーの三番機が食われる被害が出てたので、しばらく三番機には
ベテランのみを充て、ルーキーは空中戦圏外から見学のみとしてた。
周囲はベテランで固めてあるので、敵も近寄れず空中戦指揮官はルーキーのお守りから
開放されたので、思う存分活躍出来てた。
食われるルーキーも皆無なので、撃墜報告のみの日がしばらく続いてた。
そんなある日・・。
「加藤隊長、大変です。」
「どうした・・。」
「遂に敵の新鋭機が出現しました。」
「P51か?それともP47か?」
「P47サンダーボルト・・と思います。丸太みたいな巨体にハイパワーエンジンを
搭載。とにかく頑丈らしいです。」
「予想出来た事よ。装甲板はどの程度だ?」
「恐らく20ミリは跳ね返すかと・・。」
「フム・・。では改マウザー砲にそろそろ更新するか。
アレは口径こそ20ミリだが貫徹力は25ミリに近い威力を持つ。
坂井、整備兵に命じすべての烈風の機銃を改マ砲に更新する様に命じろ。」
「了解しました。」
遂にP47が出てきたか・・。
この調子だと歴史よりも早くF6FとかP51も出現するだろう。
まあ予想はしてるから慌てる事は無いがな。
早く敵のパイロットを枯渇させないと・・。
何時までもアメに構ってるヒマは我が帝國には無いのだ。
ロ助も居るしな・・。
加藤は考えをまとめると無電室に向かい内地に使い捨て暗号の送信を命じた。
内容は・・。
「ブタ、ダッソウ。」
P47出現時に備えて作られてた暗号である。
アスリートが奇襲を受け、一時壊滅しました。
敵も必死です。
ボングは重症を負いましたが助かります。
負傷の度合いは杉田がラバウルで撃墜された時と同程度です。