アメリカの苦悩
別作も終わりましたので、しばらくは本作に集中します。
趣味に走りますがお許しを。
アメリカ側は窮地に落ちてた。
特に海軍は健軍以来の窮地と呼んで良い。
歴史上でも最悪の敗北を喫したのだ。
あのアドミラル・トーゴーが行ったニホンカイカイセンでもココまでの敗北では無かった。
あの時は生き残りも居たのだから。
しかし今回の敗北は我がグアム基地の面前で行われたのに、完膚なきまでの・・。
大敗北。
まさに完敗。
キンメルは戦死したが、それで良かったと思う。
名誉の戦死扱いで終われたのだから。
生きてたら間違いなく更迭されていただろう。
後任にニミッツが就いたが、彼も弱りきってる。
指揮する兵士も艦隊も無いのだ。
私だってどうしようもなくなる。
現在、大西洋艦隊を太平洋に回し、当面を凌ぐ事にしたが、兵士も足りなくて困ってた。
だが今回の敗北を国民が知るや、海軍の地位はどん底に落ちてた。
海軍軍人の留守家庭は嫌われ者として町内会から外され、軍人も外出する際は私服で
出かけないと卵を投げつけられる始末だ。
彼等が悪い訳でも無いのに・・。
このままでは海軍が終わる。
その危機感から大統領も各地の工廠を叱咤し、建艦を急ピッチで進めてる。
駆逐艦や軽空母は既に配備可能となってたが・・。
「人がいねぇぇぇぇ。」
この一言である。
兵器や船、戦闘機や爆撃機は使える人間が居て初めて兵器として役立つのである。
それなのに、先の海戦でアメリカ海軍の将兵は半減以下となってしまってた。
特に戦闘艦、航空機パイロットは払底してると断言しても良いレベル。
陸軍からパイロットを融通して貰おうとしたら、パイロット側が拒否。
海軍に移籍したら妻から離婚されるとか、勘当するとか言われ、全員拒否されたのだ。
これは・・。
最悪だ。
海軍の危機もココまで来ると救いようが無い。
どの様にしたら良いのだろう・・。
士官学校の学生を繰り上げ卒業させようとしたが、彼等の半数は自主退学してしまってたのだ。
前回の敗北で海軍に絶望したとかで・・。
残りの生徒はすべて札付きの連中ばかり。
正直、もう後が全然無い。
弱ったルーズベルトは国民に謝罪し、海軍が悪いのでは無い。
自分が無謀な戦いを仕掛けさせたのがそもそもの原因。
大戦が終了したら自分は辞任する。
どうか海軍に協力してくれ・・、とアメリカ全土に放送したのだ。
さすがにココまで言われたら、協力するべきとの雰囲気も出て、陸軍パイロットは
海軍に転出。
退学した士官学校の生徒も復学。
ゴロツキは兵士として志願。
何とか形だけは海軍の形を取り戻した・・かに見えた。
だが、海軍の運用は数ある軍隊でも一番難しい運用。
船を走らせるのも技術が必須。
大砲をブッ放すのも陸で撃つのとは訳が違うのだ。
再起動を始めたアメリカ海軍の前途は多難なのだ・・。
その頃のG・・。
「長官、スパイの報告に拠るとアメリカ海軍の地位はどん底らしいですよ。」
「オレがアメリカ海軍の兵士だったら、脱走したいと絶対に思うからな。
まさかココまで負けてしまうとは・・。」
「兵士こそが撃つべき敵の最大兵器なのですよ。
兵士が居なかったら、船は動かぬ、飛行機は飛ばぬ、鉄砲は撃てぬ、メシは作れぬと
最悪の悪循環です。
今、アメリカはその負のスパイラルにハマリ込んで抜けられなくなっています。」
「ヤツ等が根を上げるまでは、手を緩めるでは無いぞ。」
「モチロンです。ですが、長官。
長官も身辺には注意してて下さい。前世の長官は前線を視察してて撃墜されたのです。
アレが我が国でも最大の海軍甲事件として後世まで問題となってました。
特に重要な用件は使い捨ての一回限りの暗号でお願いします。」
「分っておる。オレも日本の武器の一つだからな。」
「その通りです。生きて最後まで奉公してくださいよ。」
「Gもだぞ。お前の情報があったから今があるのだ。」
「分ってます。お互いに前線には絶対に出ないで、内務で戦いましょう。」
「ウム。」
Gと高野は今後の方針を話し合い、前線を指揮している同僚の柴田や淵田に連絡をしてた。
忘れてましたが、柴田は海軍戦闘隊総司令部勤務。
淵田は爆撃隊総司令部勤務です。
さすがに重爆は専門の司令部が必須となってたので、淵田は重爆部隊を指揮してもらってます。
日米の苦悩を書きました。
次回からまた戦闘に入ります。