KIll Jap
いよいよアメリカが勘違いな戯言を世界に放ち始めます。
ジャップがグアムを攻略すると諜報部からの通信が入った。
何でも大量に撃沈された戦艦の仇を取るべく作戦だそうだ。
面白い。
空母は喪ったが、戦艦はすべて無傷。
空母は戦闘機のみ護衛空母で出し、敵の「アラン」から戦艦を守護させよう。
(アメリカでのコードネームで烈風をアランと総称する事になりました。)
「ハルゼー、遂にジャップが本隊を出撃させたらしい。
次はグアムだぞ。」
「トラック島は我が軍が占領しましたからね。
恐らくグアムを奪ってトラックを取り返す気でしょう。」
「だがF4U で大丈夫か?
まだ採用されたばかりの戦闘機だろう。」
「アランに対抗するにはパワーが必須です。
グラマン社のケツを叩いていますが、
XF6Fがラインアウト出来るまで、まだ時間が必要らしいです。」
「悠長な事は言っていられないぞ。早くF6Fが採用されないと、我が軍のボーイが
すべてアランに消されてしまうぞ。
試作機でも構わないから、部隊に寄越せと恫喝しろ。
戦争は始まっているんだ。」
「アイアイサー。」
史実でもF4Uは艦載機として活躍出来るまで相当の時間が要りましたが、
この世界でも同様です。
F4Fでは烈風に対抗出来ないと悟った米軍側は試作途中の
F4Uをすべて機動部隊に持ち込んだのです。
それがさらなる悲劇の元になるとは知らずに・・。
「ジャン、このF4Uって戦闘機、パワーはあるんだが艦載機には不向きじゃネーよな。」
「ボビー、オレもそう思うぜ。
F4Fはパワーは無かったが、見張りは楽だし着陸も着艦も楽だった。
だが、このコルセアだっけ?
この戦闘機はパワーがある分、発艦が難しい。前が良く見えないから着艦も難しい。
プロが揃ってたら戦力となるだろうが。」
「俺達みたいなターキーではな・・。」
「アランに遭う前に水漬けになってるだろうよ。」
力なく笑いあう彼等だったが、次の訓練でボビー少尉はコルセアのトルクに振り回され、
発艦に失敗。
海に墜落し機が爆破。
まさに水漬く屍と消えたのである。
「キンメル長官、大変です。」
「どうした、ハルゼー。」
「採用したF4Uですが、事故が続発して既に三十人も殉職しております。」
「ナニ??まだ一ヶ月も経っていないのだぞ。採用して。」
「パワーを使い切れないターキーばかりなのが難らしいです。
着艦の事故も続発しています。」
「だがどうするのだ?F4Fではアランに対抗出来ないのだろ?」
「どうでしょう。F4Uをグアムに配備させ、陸上で運用させたらと
思います。」
「我がガンシップはどうやって守らせる気だ?」
「F4Fだけで守備させるべきと考えております。
撃墜は考えず、守る事だけに徹しさせればターキーボーイズでも戦えると思います。」
「フム・・。F4Uが使えない現状では仕方ないか・・。
航空機会社には艦載機の事故の詳細を伝え、新鋭機の欠点を修正する様にさせろ。」
「アイアイサー。」
続発する事故に耐えかねて、すべての艦載機はF4Fに戻された。
だが喪ったパイロットは帰って来ない。
一番のベテランパイロットでも戦場を経験したパイロットは皆無なのだ。
すべて先のマリアナ沖の海戦で戦死するか、負傷で退役を余儀なくされてたのだ。
「ハルゼー、我が軍のボーイズは本当に下手ばかりになったな。」
「情けない話ですが、事実です。
あっ、まただ・・。」
彼等の目前で着艦体制に入ってたF4Fが艦尾に激突。
火炎と共に若者が火達磨となってしまったのだ。
「ジャップを火達磨にする前に我が軍のボーイズにマザーが火達磨にされそうだな。」
「冗談と言えないのが本音です。」
事故は続発してたが、迫り来る日本軍の脅威には待ったはかけられない。
訓練も程々にして、アメリカ機動部隊はパールハーバーを出撃した。
コルセアは輸送船に船積みされ、グアムとトラック島に配備される事になった。
「小沢長官、内地からの暗号無電です。」
「ウム、読め・・。」
「サクラサク。」
「分った。遂に連中も出たのだな。」
「その通りです。」
「ヨシ、全部隊第一警戒態勢に入れ。潜水艦と哨戒機は見つけ次第始末させろ。
全艦艇は装薬を実弾にし、何時でも撃てる体制にしろ。」
「了解です。」
(サクラサクは使い捨ての一度限りの暗号です。
敵が真珠湾からグアムに向かったと言う意味にしておきます。)
日米双方の主力部隊が激突するのは、もう間もなくである・・。
コルセアは艦載機として採用されるまで多くの事故を実際に起こしています。
特にパワーを使いこなせないルーキーばかりの現状では、離陸も難しいと思います。
千馬力ならともかく二千馬力は急激なトルクがかかると、機首が振り回されるらしいです。
次回はいよいよ戦艦同士の激突です。