開戦
お陸奥とお長門の撃沈に拠り、日米間戦争の開戦です。
ええ、日米だけですよ。ハイ。
Gです。
いよいよ開戦となりました。
お陸奥とお長門の撃沈事件は世界に公開しました。
沈没地点もね。
乗員はすべて現時点で鬼籍に入ってる元海軍兵士並びに士官ばかりです。
彼等には少しだけ長生きして貰い、戦死扱いとしました。
遺族は大喜びです。ハイ。
アメには「卑劣な攻撃を受け我が国の大戦艦が二隻も喪失してしまった。
これは重大な事件だ。ウヤムヤには出来ぬ。
損害を支払ってくれないなら、開戦も辞せず。」
そう通達したら、向こうさんはとっとと開戦の書類にサインをしやがったのです。
まあ大国は悪さをしても認める事はしませんね。
もっとも世界の目は厳しいです。
同盟国のイギリスやドイツは我が国に同情的です。
さて、開戦と決まったら・・・。
戦うのみです。
幸いにもイギリス、ドイツとの友好条約でインドからも資源が潤沢に入ります。
邪魔なのは・・・。
フィリピンの在比米軍ですね。
邪魔なモノは潰すとしますか・・。
「諸君、いよいよ開戦だ。敵はアメリカ一国のみ。
強大な敵ではあるが、簡単に負ける事は無いだろう。
さて、我々の邪魔となるのは、在比米軍だ。
特に空軍と海軍は邪魔だ。
アレを潰さぬ限り我が帝國の輸送船団の危機は去らない。
何としても潰せ。」
高野長官の訓示に拠り、在比米軍基地の攻撃が決定。
早速膨大な重爆と戦闘機軍団が比島に押し寄せて来た。
「何だ?我が国のB17でも飛んで来たか?」
「マッカーサー長官、大変です。アレは我が軍の重爆ではありません。
翼に醜いミートボールが書いてあります。アレは敵です。
ただちに避退してください。」
「我が軍のカーチスが撃ち倒すだろう。それを眺めるのも楽しみよ。」
「長官、危険です。逃げてください。」
やがて轟々と轟く爆音と共に大空に空中戦の花が咲き始めた。
漢達の命を掛けた死の花が・・。
「ジョン、ジャップのボロ戦闘機が攻めて来やがったぜ。
俺たちのカーチスなら一撃で撃墜だ。」
「トニー、油断はするなよ。
ヤツ等はゼロも作った国だ。負けはしないとは思うが、命は一つ。
被弾したら迷わず脱出しろよ。」
「ああ、任せろ・・。」
やがて彼等の面前に見た事の無い重爆と戦闘機が押し寄せて来た。
「クッ、スゲー数だ。押し止めるのは難しいぞ。
今すぐ基地に救援を依頼しろ。我々だけではムリだと・・・。
おい、ジョン。どうした?返事しろ・・。」
その時には高空から急降下奇襲攻撃をかけられジョン中尉のP40は火達磨となって落下してたのだ。
「クソッ、ジョンが殺られた。あれ程油断するなと言ったのに。
グッ、スゲー機動をしやがる。
は、速い。それに・・。何だ??
あの翼から出てる太い棒は・・・、まさか、キャノン??」
トニーがそこまで考えた時、烈風の両翼から四門の20ミリ機銃が吼え、
トニーの乗るP40は爆散して果てた。
マッカーサーは基地総司令部の窓から自軍の戦闘機が狩られるのを呆れた顔して見てた。
「な、何だ??
アレは・・。」
「総司令、我が軍の戦闘機は壊滅です。
間もなく爆撃が始まります。早く地下壕に逃げてください。」
「わ、分った・・。」
爆撃体制に入った一式重爆の胴体から多くの爆弾が落下を始めたのは、それからすぐだった。
一式重爆は本来、一式陸攻として開発される予定だった双発爆撃機を四発とし、被弾能力を
向上させ、反撃能力は後のB17以上とした海軍の攻撃機である。
まだ与圧はしていないが、二年以内には与圧を装備予定である。
ひゅーーーーと風を切る爆弾の落下音が鳴り響き、やがてクラークフィールドは地獄と化した。
飛行してた友軍戦闘機はすべて撃墜され、残された反撃能力は対空砲のみ。
高度六千メートル以上の高空を飛ぶ爆撃機に対空砲が当たる訳も無く、
日本軍は悠々と反復攻撃を繰り返した。
やがて爆弾が尽きると、日本軍は去り・・。
残されたのは多くの残骸と瓦礫のみ・・。
「閣下。我々は負けたのです。
ここは捨てて後退するべきです。」
「負けた・・のか。
私は・・・。」
「負けました。これでは復旧も不可能です。
残された兵士と共に攻撃を受けていない基地に移動し、
反撃体制を整える方が相手に対抗出来る最良の手段です。」
呆けたマッカーサーを副官は諌め、彼を叱咤し生き残ったパイロットや兵士ほ引き連れ、
マニラを去るのだった。
その頃の台南基地。
「いやー、今日の攻撃は楽だったな。
演習でもこうはいかないぞ。」
「坂井隊長、敵の反撃はやはり一撃離脱ばかりですね。
もっとも交わすのは楽ですが。」
「油断はするなよ。
笹井。
西澤を見習え。
戦闘は見張りで決まる。
そして・・おい、菅野。
お前は猪みたいに敵に向かうが、アレでは味方が危険に陥る。
絶対にお前は編隊から離れるな。お前はオレの小隊のカモ番機に命じる。
西澤の尻をキチンと守れ。
もし西澤がカスリ傷でも負ったら・・。
お前を命令違反で整備兵に降格する。
分ったな。」
怒られた菅野直二飛曹は雷の直撃を受けたみたいに直立不動の姿勢を取り、
冷や汗を流してた。
まさか隊長に編隊を離れたのを気づかれてたとは・・。
「菅野、お前はオレが全編隊を見れないとでも思ってたのか?
舐めるな。
自分の率いる全編隊位掌握出来なくて、隊長が務まる訳が無かろう。
そしてこれは全隊員に教えておく。
隊長、そして編隊指揮官クラスとなれば、無線を用いなくとも配下の部下の心くらいは
簡単に把握出来る。それこそ指の動きまでな。
弱は自惚れぬな。
敵が弱いのでは無い。
単に現時点で我々が強いだけの事だ。
明日は敵が強いかも知れぬ。
常に敵は我々よりも強いと意識しておけ。
舐めたら・・。
次は地獄で敵と遭う事になるぞ。
分ったな?」
「「「「了解しました。」」」」
全隊員が坂井少佐に返答すると、坂井は敬礼し、会議室を後にした。
残された部下達は隊長の訓示を脳内で反芻し反省を繰り返してた。
特に菅野、笹井の両名は、ガックリとしてたのだ。
彼等は本日、一機の敵をそれぞれ撃墜出来て大喜びしてたのだが・・。
「菅野、隊長は怖いな。
オレは敵機よりも隊長の目が怖いよ。」
「笹井先輩、隊長は叩き上げの大先輩ですからね。
我々弱の心理などお見通しなんでしょう。
それにしても・・。
下手すると自分は整備兵ですか・・。
弱った・・。」
「心配するな。貴様も栄えある我が日本帝國戦闘隊の一員だ。
簡単には降格はせぬ・・と思う。
戦闘も大切だが、まずは列機としての勤めを果たす事だぞ。」
「・・・分りました。笹井先輩。
頑張ります。」
「坂井少佐、菅野に厳し過ぎるのではありませんか?」
「西澤、ヤツは才能はある。
腕も数年経てばオレ以上の腕になるだろう。
だが慢心して撃墜されたら・・。
それで終わりなんだ。
見込みがあるから叩くのだよ。甘えさせてたら次の出撃でヤツは帰って来れなくなる。
まずは死なせぬための術を仕込むのだ。西澤、ヤツは任せるぞ。
俺たちの次の世代の指揮官だからな。」
「分りました。隊長。」
初陣となった比島空襲でクラークフィールドは壊滅した。
そして度重なる空襲で在比米軍勢力は続々と削減され、撤退を余儀なくされていた。
布哇真珠湾の海軍総司令部は比島からのSOSを受け、救援部隊を差し向けて来た。
帝國が願ってた展開が間もなく比島からサイパン島にかけて起きる。
勝つのはアメリカか、日本か・・。
まずは開戦当初の空襲シーンです。
次回は史上初の空母決戦となります。
B17程度に一式重爆の能力は改正しました。
さすがにB29まではムリですね。