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妹は、魔法使いらしい。

 澤井奏多、高校2年生17歳。平凡な人生を送ることだけが願いだった。だが残念ながら、それは叶いそうにない。現在、あまりにも有り得ない状況を目の当たりにしているからである。

「あ、メアさんそっち!」

「言われなくとも分かっています。満足に魔法も使えない低級さんは黙っていてください。」

「メアさんひどーい。この人でなし。」

「実際僕は人ではありません。」

“厨二病”を具現化していると言っても過言ではないような格好をした男性と、私の妹___澤井奏音。

「お姉ちゃん、メアさんが全部片付けてくれるからちょっと待っててね!」

そのお姉ちゃんは、状況が何も分かっていないよ。

「余所見をしている場合ではありませんよ、低級さん。ほら。」

「ええっ!?うわぁ!」

男性は愉快そうに笑った。私たちがいる方向に向かって、火に包まれた矢が飛んできている。笑っていないで、助けて欲しいものだ。

「メアさーん助けてよー!」

「今回だけですよ。……インカンテーション・アイシング。」

男性___メアさん?は。

「魔法、使い…?」


 「で、説明してもらってもいい?」

数分後、私は奏音とメアさん(?)を正座させていた。

「なんで僕まで…。」

ブツブツ言っていてなんだか可哀想だが、事情を聞き出すまでは帰せない。

「どういうことなんですか、魔法使いって。お姉ちゃんは認めないからね。」

黙りこくっている奏音とどうにか目を合わせようとしているのに、

どの角度から覗き込んでも目を逸らされる。

「奏音!」

奏音の身体が震えた。微かに、掠れた声が聞こえた。

「なんて?」

「私はお姉ちゃんが魔法使い嫌いなんて知らなかったし!」

嫌いとは言っていない。


 大まかに話を聞いたところ、奏音はメアさん……「ナイトメア」という名の魔法使いと師弟関係を結んでおり、3ヶ月前から有段魔法使いになるべく励んでいるそうだ。

「3ヶ月前って…。」

かなり前だし、その頃といえば___。いや、そんなことはどうでもいい。

「お姉ちゃんは認めませんよー。魔法使いって大変なんだからね。」

「お姉ちゃんが魔法使いの何を知ってるか知らないけど、メアさんは私のことを育てるって言ってくれたからさ!心配しないで見ててよ!」

心配しかない。

「一言も言っていません。」

尚更、心配でしかない。

「ハッキリ言うけど…ナイトメア、この子才能ないんでしょ。」

「そうですね。お世辞にもあるとは…え、呼び捨て?」

しまった。つい癖で。

「気のせいだよ。」

彼は、首を傾げつつも続ける。

「どんなに平凡な魔法使いでも、2ヶ月やれば5級の試験には通ります。ですが彼女は…いまだに模擬試験の点数が3割程で、正直絶望です。ここまで才能がないのも逆に珍しい。興味まであります。僕が奏音さんとの師弟関係を解消して逃げないのはこれが理由です。」

「言い過ぎじゃない?」

言い過ぎかもしれないが、ナイトメアが言うなら事実なんだろう。

「はあ、そうですか。まあ頑張ってください。ほいじゃ。」

こんな話早く終わらせて、一刻も早く家に帰りたい。

「ええ!?そんな急に!?お姉ちゃーんいいの!?」

勝手にしなさい。才能がないのなら、勉強させたところで成長せずにそのまま。つまり放っておいても特にゴタゴタに巻き込まれることはない。ナイトメアも、なんだかんだ面倒見が良さそうだから庇ってくれるだろう。

私の予測は、あまりにも簡単に打ち砕かれた。



「ただいま、カラス。」

自分の部屋に入るなり、そこに居るはずの生物に声をかける。カラスはカラスだが、カラスではない。意味が分からないだろうがそのまま言っているだけだ。返事が返ってこないので、どうやら外出中らしい。話したいことはあったが小煩い奴がいないに越したことはない。

「だーれが小煩いって?」

げ。

「げ、じゃない。口に出てんぞ。」

ついうっかり…でなく、気のせいじゃないだろうか。

「そんなことはどうでもいいけど、話したいことあってさ。」

「こんの小娘め。いつから師の言葉を遮るようになった。」

無視。


 「なーるほどなぁ、ナイトメアがこんなに近くにいるとは。」

紹介が遅れたが、この偉そうな生物は私の(一応)師である。なんの師かと聞くのは野暮ではないか。

「まーあいつは名前の如く光に擬態するから、分かりにきーんだな。」

光に擬態って。じゃあナイトメアの周辺はちょっと明るくなってるとかじゃない?今まで全く気が付かなかったけれど、言われてみれば分からなくもない。

「そうだな。それはある。あー憎々しい。」

「いちいち顔思い出して話止まるのやめて。ちょ、その上乗ったら…ほら言わんこっちゃない。これが6段魔法使いの姿だなんて、魔法使いがみんな泣き始めちゃうよ。」

「痛い、う、うわぁぁぁん。」

泣き始めたのは、魔法使いのみんなではなく棚から落ちたバカ魔法使いだったか。

今更説明するまでもないだろう、彼は私の魔法の師。つまり、私も一応魔法使いなのだ。


 「つーか、奏多の方から魔法の話すんのも珍しいよな。毛嫌いしてんのにさ。」

私は、魔法と魔法使いが嫌いである。何故なら非科学的だから。決して理系というわけではないが、非科学的なものはどうにも好かない。元はと言えば…………。



 その日、私は何の代わり映えのない1日を終えて帰宅中だった。私だって鬼畜ではない、カラスが息絶え絶えになって横たわっているのを見てしまったのなら気になるだろう。どこにでもいる鳥類のカラスである。

「ねぇ…大丈夫?」

カラスが人間の言葉なぞ分かる訳がない。が、なんとなく声をかけたくなり近寄ってみる。それが間違いだった。

「あんた…見えてるのか。」

あ、死んだな。と思うじゃん。



 まーその後なんやかんやあり、私はこいつと師弟契約を結び魔法を学んでいる訳だ。面倒なのでそこら辺はまた後々語るとしよう。と言ってもやる気はない。非科学的なことは嫌いだし、魔法に頼るような人生になってしまっては最悪だから。一応、最低ランクである「5級魔法使い」の称号があるので、私が魔法使いでないという主張は無理があるのだが。

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