赤い門の立つ町
むかしむかし、山に囲まれたところに、赤い門の立つ町がありました。
その門には二つの文字が刻まれていました。
「東大」「京大」
町の大人たちは言いました。
「ここをくぐれた者は、未来を選べる」
「くぐれなかった者は……流される」
町に、ユウタという少年がいました。
ユウタは遊ぶのが大好きで、勉強が大きらいでした。
「東大? 京大? 無理無理」
「どうせ普通に生きられるでしょ」
そう言って、ゲームと遊びに明け暮れ、机には埃が積もっていました。
ある夜、ユウタの夢に、赤い合格証を持った影が現れます。
影は言いました。
「お前の未来を、見せてやろう」
気づくとユウタは、大人になっていました。
そこは暗く、窓のない職場。
同じ服、同じような暗い顔の人々が、同じ作業をしています。
「なぜ、ここに?」
問いかけたのは、疲れ切ったもう一人のユウタでした。
影は言います。
「選べなかったからだ。学歴がないと、扉は最初から閉まっている」
突然、壁に文字が浮かび上がります。
『応募資格:東京大学または京都大学卒業』
この文字が、にやりと笑った気がしました。
「努力しなかった分、一生、他人の決めたレールを歩くんだ」
時計が鳴ります。
針はすでに戻らない位置を指していました。
ユウタは叫びました。
「勉強する! 今度こそ!」
その瞬間――目が覚めます。
朝でした。
机の上には、赤い門の夢を思わせる参考書。
窓の外には、まだ遠くに見えるあの門。
母の声がします。
「今なら、まだ間に合うよ」
ユウタは鉛筆を握りました。
遊びたい気持ちを押し込みながら。
なぜなら、夢の最後に、影がこう囁いたからです。
「東大か京大に行けなかった未来は、想像以上に、暗くて長い」
赤い門は、今日も静かに待っています。
くぐるか、閉ざされるか。




