#08 風来妖討伐譚:急
俺たちは宿の部屋を借りて休息を取っていた。
結局、今日は大した手がかりは見つけられなかった。
「ミコトさん、この後はどうしますか?」
ミコトさんは少し考える素振りを見せて答える。
「夜ご飯を食べたら仮眠をとりましょう。
深夜にパトロールをしたいので、少しでも体を休めます。」
「了解です。」
(今夜のパトロールで、何か解決の糸口を見つけられたらいいんだけどな…)
俺たちは食事を摂り、各々の部屋で
寝る準備をしていた。
「ナオト、私のこと置いていかないでよ?」
マタタビは不安そうに言った。
「大丈夫、わかってるよ。
マタタビがいないと妖怪を探せないからな。」
俺がそう言うとマタタビは嬉しそうに言った。
「えへへ!今度は絶対に見つけてみせるからね!」
「おう、頼むぞ。」
そして俺たちは眠りにつく。
ーーーーーーーーーー
深夜になって私は目を覚ました。
その瞬間、私は自身の異変に気づいた。
手足が縛られていて動かせない。
それに目と口も塞がれていて何も見えず、
声も出せない。
そして何者かによって私は担がれていた。
「んん!むぅ!」
(ダメだ、ナオトさんに助けを求めようにも、
声が出せない…
まずい、まずいまずいまずいまずい…
このままじゃ私は…)
「目を覚ましたぞ、大人しくさせろ。」
(この声、村長さん…?)
私が犯人に気づいた時にはもう遅かった。
村長さんの仲間と思われる人たちが私を痛めつける。
殴る、蹴る、私はされるがままになぶられる。
「ぐふぅ!むぅ!んんん!」
村長さんも含めて3人程度だろうか。
私は犯人を目前にしても何も
できずに傷つけられるだけ。
ナオトさんは気づいてるだろうか。
「ふぅ、ふぅ、ふぅ…」
「よし、これで抵抗はできないだろう。
あの男が来る前にさっさと行くぞ。」
そして私は肩に担がれて連れていかれてしまう。
(ナオトさん、誰か、助けて…)
ーーーーーーーーーー
俺は眠りについた後、いつもの精神世界で
オロチと話していた。
「なあオロチ、今回の事件、
どうしたらいいのかな。」
「案ずるな。余の見立て通りなら、
今夜中に犯人は大きく動く。」
「大きく動く?」
「ああ、お前か雷光院ミコトのどちらかが襲われる。」
オロチは自信満々に言った。
「何を根拠に…」
「お前も気づいているだろうが、この事件の犯人は
妖怪じゃない。この村の住人の誰かだ。
犯人にとっては、事件解決を目指すお前たちが
邪魔だろうからな。早めに消しておきたいだろう。」
「なるほど、言われてみるとそんな気がしてきたな。」
じゃあ今夜、犯人を捕まえられるかも!
俺がそう思っていた時、オロチが言った。
「噂をすればなんとやらだ。
たった今襲われているぞ、雷光院ミコトがな。」
「なっ!早く助けに行かないと!」
「落ち着け、ここで必ず犯人を捕まえる。
勝利を確信し油断した瞬間こそ狙い時だ。
小娘を餌にして誘き出し、犯人の目的を特定する。
目が覚めたらしばらく待て、
余が合図を出してやる。」
俺はオロチの言う通り、目が覚めてもすぐには
動かず、しばらくは寝たふりをする。
そして契機を待つ。
確かにオロチの言う通り、隣の部屋から気配がする。
(冷静になれ。お前の力ならば問題なく
捕らえられるはずだ。)
俺はオロチの言葉で頭が冷えた。
そして隣の部屋の物音が消え、犯人と思しき奴らは
部屋を出た。
(よし、行くぞ。気配を消して後をつけろ。)
俺は言われたように隠れながら後をつけていく。
犯人は村長と、二人の大柄な男だった。
(村長が犯人だったのか…)
(面白くなってきた、こうでなくてはな。)
(緊急事態だぞ、楽しむなよ。不謹慎だろ。)
オロチとの問答を重ねながら村長たちを尾行する。
3人は俺たちが昼間に見た井戸の前で止まった。
(オロチ…!もういいだろ?これ以上ないチャンスだろ!)
(ああ、ぶちかませ。)
俺は刀を引き抜いて風妖術を纏い、3人に告げる。
「ミコトさんを離せ!さもないと痛い目に遭うぞ!」
「むぅ!むぅ!んう!」
3人は俺を睨みつけてきた。
俺は怯まずに刀を向ける。
「バレてしまっては仕方がない。
お前たち、いくら相手が刀を持ってるとて、
二人がかりなら倒せるだろう。」
そして二人の男は俺に襲いかかってくる。
俺は冷静に、技の用意をする。
相手が複数人の時に有効な技は…
「"風凪流三閃 嵐翔斬"!」
「ごはぁっ!」 「ぐわっ!」
俺の斬撃で二人の男は倒れた。
当然だろう。俺の師匠は三番隊の隊長と、
最強の大妖怪だ。
俺が負ける道理などない。
「お、お前たち…!くそ!」
「もうわかってるだろ?
逃げられないってよ。」
「ちっ!」
村長が走って逃げようとしたので、俺は風妖術で幕を作って逃げ道を塞ぐ。
「言っただろ、もう逃げられないぞ。」
「はぁ、ここまでか…」
村長は両手を挙げて降伏を示してきた。
俺はミコトさんの高速を解いて、その縄ですぐに
村長を拘束する。
「ナオトさん、助かりました。
ありがとうございます…!」
ミコトさんは震えながら俺の手を握ってきた。
無理もない。いくら副隊長と言ったって、
ミコトさんだってただの女性だ。
「守れなくてすいません。
でも、これで事件解決ですよ。」
「はい!ナオトさんお手柄ですね!」
ミコトさんを助け出せたことだし、
事件の真相を聞くことにしよう。
「村長、この事件のこと、教えてもらうぞ。
行方不明になった人たちはどうなったんだ。」
「死んだよ。その辺を掘り起こしてみろ、
死体が出てくるはずだ。」
「そんな、酷い…!」
「なんでこんなことしたんだ…」
「…お前たちは、この国が滅ぶと言ったらどうする?」
村長はそんなことを言い出した。
嵐が滅ぶだと?
何を言ってんだ?
「そんなことはさせません。
私たちが必ず、嵐を守ります。」
「これは外的要因によるものではない。
女神イザナミの加護を失って200年、
この国のあちこちで妖怪の被害が多発している。
六大女神が俗世を去ったことで、
大陸全土の妖怪どもの動きが活発になったんだ。」
「だから俺たち妖伐隊がいるんだろ?」
「だが実際どうだ!嵐は依然恐怖に怯える日々だ。
大妖怪"天狗"のせいでな!」
「それとこれとは別でしょう?」
「いいや違う!私がしていたことは、
嵐を救うための儀式だ!
イザナミに生贄を捧げ、再び嵐に加護をもたらして
くれるようになれば、嵐の未来は安泰になる!」
「村長、アンタは悲しいな…」
この人も妖怪のせいで人生を狂わされたと言える。
女神信仰がなければ恐怖で生きていけないのだろう。
俺にできることは、これしかない。
妖怪に怯える日々を少しでも改善し、
手柄を立ててオロチに宝玉を届けるためには…
「俺が天狗を退治してやる。
だからこんなこともうやめろ。
不安も恐怖も感じなくていい、
女神がいなくても幸せに生きていけるような嵐を、
俺が作ってやるよ!」
「君が天狗を倒す、だと…?
天狗は、数百年にわたって嵐を荒らしてきた
大妖怪だ。君にできるのか…!」
「わからない。俺は最近妖術を
身につけたばっかりだし、
こんなことを言うのは烏滸がましいかもしれない。
でも、見て見ぬ振りはしたくない!」
大妖怪天狗、もし退治できれば、
俺のように悲しい思いをする人を救える。
こんな凄惨な事件も未然に防げるだろう。
「…わかった、君を信じてみよう。
君のその、まっすぐな瞳をな…」
そうして、俺の初めての任務は幕を閉じた。
村長と二人の男を拘束して村の役所に拘留し、
俺とミコトさんは宿に戻る。
「ナオトさん、本当にありがとうございます。
私、もうダメかと思いました。」
「全部オロチのおかげです。
オロチがいなければ、俺も気づかなかったと思います。」
実際そうだ。俺はオロチの言う通りにしただけだ。
「それでも、です。助けてくれたのは
ナオトさんですから。ありがとうございます。
オロチさんにもお礼を伝えてもらえると嬉しいです。」
「はい、伝えておきますね。」
「あ、あの、私もそっちの部屋で寝てもいいですか?
ちょっと、怖くて…」
「そうですね、無理もないです。
さっ、早く戻って寝ましょう。
もう疲れましたよ。」
「ですね。」
そして俺たちは眠りにつく。
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朝になって目を覚ますと、マタタビに軽く怒られた。
「もう!置いてかないって言ったじゃん!」
「ごめんごめん、緊急事態だったからさ。」
「むぅぅ、私も役に立ちたかった…」
「大丈夫ですよマタタビさん、活躍の機会はまだまだありますから。」
起きて早々、俺たちは村の住人たちに
事件の全貌を告げた。
驚くもの、安堵するもの、無関心なもの、
反応は人それぞれだった。
そんな中、一人の女性が俺たちのもとへやってきた。
あのときのやつれた女性だ。
「ごめんなさい。必ず連れ戻すって約束したのに。」
「いいんです。息子はちゃんと見つかりましたから。
モヤモヤした気持ちは覚めました。
ありがとうございます。」
「そんな、頭を上げてください。
俺たちは大したことしてませんから。」
「謙遜なさらないでください。
あなたたちがいなければ、
息子の死体すら見つからなかったかもしれませんから。」
女性は依然、元気がないままだったが、
目に僅かな光が見えた。
おそらく、これから立ち直って息子さんの分も
強く生きていくのだろう。
俺たちは別れの挨拶をしてその村を後にした。
そして三番隊の拠点への帰路につくのだった。
終
読んでいただきありがとうございました!
今回は行方不明事件が解決しました!
次回は新キャラ登場です!
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