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#07 風来妖討伐譚:破

俺たちは例の村に到着した。

こじんまりとした雰囲気、のどかで平和そうな村だ。

とても事件が起こった場所とは思えない。

村の住人の顔に焦りや恐怖は見えず、

平然としている。


「ミコトさん、やけに平和ですね。

妖怪が潜んでるかもしれないのに。」


「妙です。村長を訪ねたらすぐに調査を始めましょう。」


ミコトさんの表情が変わった。

さっきまでの笑顔から一転し、

緊張感があらわになっている。


「マタタビ、今の時点で何か感じるか?」


「特に何も。」


「そっか…」


気味が悪い。

俺たち妖伐隊に依頼してきたって言うから、

もっと深刻な事件なのかと思ってた。

でもなんだこれ、

平和そのものじゃないか…


(オロチ、どう思う?)


(さてな。だが、面白そうじゃないか。)


オロチは楽観的に言った。

もしかしたら、オロチにも劣らないくらいの

やばい妖怪が関係してるのかも…


そんなことを考える中、俺たちは村長の家に到着した。村長は俺たちを快く受け入れてくれた。


「妖伐隊の皆様、この度はお越しいただきありがとうございます。ぜひ、事件を起こした妖怪を退治していただきたいのです。」


「任せてください。それが私たちのお仕事ですから。」


ミコトさんは笑顔で応対した。


「感謝します。上がってください、私から提供できる情報は惜しみなく提供しますので。」


俺たちは村長に言われた通りに村長宅に上がることになった。そして村長はゆっくりと語り始めた。


「今回の行方不明事件の被害者は判明している限りでは三名です。老若男女問わずに被害が出ております。

次誰が狙われるのか見当もつかない状態です。

それに、この村の住人間での揉め事は今までに聞いたことがありませんから、恨みを持った住人の犯行とも考えられないのです。」


「なるほど、だから犯人は妖怪である可能性が高い、というわけですね?」


「その通りです。」


「一応聞いておきたいんですが、本当に証拠は何もないんですかね?流石に何かしらは痕跡が残ると思うんですけど。」


「それがまったく。住人に尋ねてみても、誰一人目撃者はおらず、特に怪しい前触れはなかったようです。

おそらく、皆が寝静まった深夜に起こった事件ではないかと考えています。」


「いくら真夜中だって、人一人連れ去るってなったら誰かしら気づくもんじゃないですかね?

痕跡が残らないというのも不可能な気が…」


「そうとも言えませんよ。それができる覇邪を持っている可能性がありますからね。対妖怪であれば、あらゆる可能性を視野に入れて考えるべきです。」


「なるほど…」


まあ俺たちにできることといったら、少しずつ調査を進めていくことだけか。


「村長さん、私たちはさっそく調査に入ります。

新たに情報を手に入れたら共有お願いします。」


「ええ、私も独自に調査を進めていきます。

よろしくお願いします。」


俺たちが村長の家を後にして調査を始めようとした時、村長は俺たちを引き留めて言った。


「皆様、どうかお気をつけください。

犯人の狙いは村の住人に限りません。

あなた方が被害に遭うこともありえますので。」


「注意喚起ありがとうございます。

それでは、行ってきます。」


ミコトさんが笑顔で挨拶をして、俺たちは調査に向かう。


「マタタビ、大丈夫か?」


「うん、大丈夫。私も考えてみたけど、何も思いつかないや。でも、妖怪探しでは役に立ってみせるから!」


マタタビは胸を張って宣言した。


「それではマタタビさん、妖怪の気配を探してみてください。見つかれば万事解決ですよ。」


「はい!」


マタタビが妖怪の気配を感じとろうとすら間、

俺とミコトさんは聞き込みをしていく。

聞き込みの結果、被害者家族の住まいを教えてもらうことができた。俺たちはその家に向かう。


「マタタビ、被害者の一人はこの家に住んでたらしい。何か感じるか?」


「何にも感じないや。何かしら妖力の形跡が残るはずなんだけどなぁ。」


マタタビは肩を落とした。


「大丈夫ですよ。調査は始まったばかりです。

まだまだこれからですから!」


「はい!がんばります!」


俺たちが家の前で話していると、

家の中から一人の女性が出てきた。


「あの、うちに何か御用ですか…?」


「すいません!私たちは今、この村で起きている行方不明事件について調査していまして、もしよければ被害にあった方について教えていただけませんか?」


ミコトさんが上目遣いで交渉をする。


「そうでしたか、犯人を見つけて

くださるのなら喜んで…」


その女性はかなり痩せており、虚ろな目をしている。

目の下にはくまができていて、やつれた顔をしている。


「被害に遭ったのは、私の息子です…

つい先月二十歳になったばかりで、

働きながらも家のお手伝いをしてくれていました。

とても優しい子だったので、誰かの恨みを買うなんてことはないかと。」


「なるほど。やっぱり妖怪の仕業ですかね?」


「その可能性は高いです。住人の雰囲気を見ても、

互いに疑心暗鬼になっている素振りは見えません。

それほど信頼関係が厚いのでしょう。」


「私はそうは思いません…!」


その女性は声を荒げて言った。


「ひえっ…」


マタタビは驚いて俺にしがみついてくる。


「何かあったんですか?」


「実は私たち、この村の出身ではなくて、

3年ほど前に越してきたんです。

この村は、住人同士の結束が厚いです。

ですがそれは、土着の者に限ってです。

私たちの家庭に対してはあまりいい印象を持っておらず、厄介者を見るかのような視線を送ってきていました。だから私は、息子を攫ったのは私たちを疎ましく思う村の誰かだと考えてます…」


この手の村にありがちな内輪での結束の強さか。

この女性の言い分では、村の住人との関係はあまり良いものではなかったと。ならなぜ村長は何も言わなかったんだろう。


「協力感謝します。私たちが必ず、この事件を解決してみせますから!」


「お願いします。どうか、どうか息子を、

連れ戻してください。」


深々と頭を下げる女性に挨拶をして、俺たちは調査を再開する。


「マタタビさん、本当に妖怪の気配は感じませんでしたか?」


「はい、話を聞いてる間も探ってましたが…」


「ミコトさん、犯人は妖怪じゃないんですかね?」


「まだわかりませんね。もしかしたら大妖怪級の

化け物がいるやもしれませんし…」


俺たちは他の被害者遺族のもとを訪れ、話を聞いた。

だが、さっきの女性一家とは違って、この村出身の

人も被害に遭っているらしく、女性の言っていたことは大した証拠にはならなそうだった。そしてそれらの場所でも、妖怪の気配は感じ取れなかった。


「ミコトさん、完全に手詰まりですね…」


「ごめんなさい、役に立てなくて…」 


「二人とも気を落とさないでください。

一旦宿で休みましょう。

夜になったら状況が変わるやもしれませんしね。」


俺たちは調査を中止し、今夜泊まる宿へ向かう。

その道中に村の井戸を見つけた。

その井戸は何か普通じゃない。

祠?のようなものが近くにあった。


「ミコトさん、あれなんですか?」


マタタビが何気なく尋ねた。


「わかりません、見てみましょう。」


その祠を詳しくみてみると、石を削って描いたと思われる絵があった。その絵のそばに書いてある文字を見てみると…


「命の女神"イザナミ"に捧げん?

なんですかねこれ。」


「イザナミ、ゼルファリア大陸に伝わる

六大女神の一人ですね。この小さな村に、何か縁があるのでしょうか。」


六大女神とは、かつて大陸の人々と共に暮らし、

国の繁栄を築いてくれた6人の神様の呼称だ。

女神たちは古くから人類とともに生きてきたが、

200年前に突如として姿を消した。

その時から今に至るまで、女神たちは一度たりとも

現れず、彼女たちへの信仰心は薄れてしまった。 


「これ、事件に関係ありますかね。」


「ないとは言い切れませんが、女神イザナミと事件を関連づけるものがありませんからね。その線は薄いと思います。さぁ、早く宿に行きましょう。少しでも休んでおいて、夜の調査に備えましょう。」


「私お腹ぺこぺこ!夜ご飯食べよ〜!」


「わかったわかった、走んなよ。」


俺たちが宿に向けて歩き始めた時、村長が焦った様子で駆けつけてきた。


「皆さん!妖怪が出ました!退治をお願いします!」


出てきたな、犯人!


「村長さん、場所は!?」


「あっちです!」


「わかりました、すぐに向かいます!

ナオトさん、マタタビさん、ついてきてください!」


「「はい!」」


俺たち3人は妖怪が出たとされる場所へ向かう。

そこには村長の言う通り、青い体で舌の長い人型の妖怪がいた。


「見つけた!」


「なんだぁ?俺とやるってのかぁ?」


その妖怪は憎たらしい顔で言ってきた。


「二人とも下がってください。私が殺ります。」


俺たちが返事をした時にはすでにミコトさんは近くにいなくて、その妖怪の目前にまで接近していた。

そして背中に抱えていた大槌を力一杯振りかぶって…


「"鳴神砕(なるかみさい)"!」


ミコトさんの雷を纏った一撃が直撃し、辺りには鈍い音が響き渡って妖怪は吹き飛ばされた。


「がっはぁぁぁ!」


(すげぇ。これが副隊長の実力か…!)


俺たちは倒れた妖怪に近寄り、話を聞く。


「この村で起きてる行方不明事件、犯人はお前だな?」


「はぁ?知らねぇよ…!俺は今来たばっかだぞ!

これから村の住人を食ってやろうと思ってた矢先に…」


「何を根拠に信じろと?」


「俺の無実を証明できるものは、何もねえけど…」


「本当のことを言ってください。

正直に言えば命だけは助けてあげますよ。」


「待ってくれ!本当に知らないんだ!

俺はまだ何もしてねえんだよ!頼む!見逃してくれ!」


「ミコトさん、本当に知らないみたいですよ?」


「ですね。でも、この村を襲おうとしたことは事実です。生きて返すわけにはいきません。」


「おい!俺は正直に言ったぞ!見逃してくれ!頼…」


ミコトさんは妖怪の悲痛な叫びを最後まで

聞くことなく頭を潰した。妖怪は倒したものの、

事件解決はできていない。 

俺たちの任務はまだ続く、まだ終わらない…











読んでいただきありがとうございました!

今回は本格的に事件解決に乗り出しました。

次回は事件の真相が明らかになります。


面白いと思っていただけたら、ブクマ・評価・感想をお願いします!毎週水曜日と土曜日の20時頃に更新予定です!


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